WWF ニュースルーム 2006年9月21日
ウェイター、私のスープにフタル酸エステルが!
新たな報告書 『汚染の連鎖:食物を通じて』 概要


情報源:WWF News Room 21 September 2006
Waiter, there’s a phthalate in my soup!
The new report, Chain of Contamination: the Food Link
http://www.panda.org/news_facts/newsroom/index.cfm?uNewsID=80661
オリジナル・レポート:
Executive Summary / Chain of Contamination: The Food Link
http://assets.panda.org/downloads/12_pager_summary.pdf
TNO-Report / Man-Made Chemicals in Food Products
http://assets.panda.org/downloads/tno_report.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年9月22日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/wwf/wwf_2006_chain_contamination.html



 [2006年9月21日グランド、スイス/ブリュッセル、ベルギー] 本日発表されたWWFの報告書によれば、農薬やPCB類、及び難燃剤等の化学物質が乳製品から肉や魚までヨーロッパ中で消費される食物から検出された。

 新たな報告書『汚染の連鎖:食物を通じて(Chain of Contamination: the food link)』は、化学物質の製造から出発して最終的には有害な疾病を引き起こす潜在的なリスクを持ちつつ不本意にも我々の血液中に現れるという地球規模の汚染の連鎖に食物が非常に重要な関連を持っているということを示している。
 同報告書によれば、有害な化学物質の同様なカクテルが野生生物や環境中からも検出されている。

 ”食物連鎖の頂点に立つ人間は、特に食物中の化学物質に暴露される”−とジャン−アケ・グスタフソン教授述べた。同教授は食物中の内分泌かく乱化学物質に焦点を当てたヨーロッパのネットワーク CASCADE のコーディネータであり今回の WWF の報告書を支援している。”これらの化学物質のあるものはホルモンに似ているので、それらは我々の内分泌系を阻害し、不妊とともに肥満、様々ながん、そして糖尿病のような病気のリスク要素となるかもしれない。”

 WWF の同報告書は、EU 加盟 7カ国、イギリス、イタリア、スペイン、ギリシャ、スウェーデン、フィンランド、及びポーランドのスーパーマーケットで購入した異なる食品の 27 サンプルに関し実施された分析の結果を明らかにした。テストされた食品には、乳製品(ミルク、バター、チーズ)、肉(ソーセージ、ベーコン、鶏肉、ハム、サラミ)、魚(サケ、マグロ)、パン、蜂蜜、及びオリーブ油が含まれる。サンプルは、異なる 8種類の人工化学物質のグループ−有機塩素系殺虫剤、PCB類、臭素化難燃剤、過フッ素化合物、フタル酸エステル類、有機スズ、アルキルフェノール、及び人工ムスク(香料)について分析された。

 テストの結果、分析された資料の全ての中から潜在的に有害な人工化学物質を見出した。オリーブ油、チーズ及び肉からフタル酸エステル類、魚とトナカイの肉から禁止されている有機塩素系殺虫剤、魚から人工ムスクと有機スズ、そして肉とチーズから難燃剤、などである。

 WWF は、人々がこれらの食品を摂取することにより必ずしも病気になるわけではないが、WWF は、特に発達中の胎児、幼児、及び子どもの食物中の化学物質への長期的、低レベル暴露の潜在的な影響について非常に懸念している。

 ”健康な食事ですら、そのように多くの汚染物質の日々の摂取をもたらすということが分って衝撃的である”−と WWF デトックス・キャンペーンのディレクター、サンドラ・ジェンは述べた。”この地球規模の汚染の連鎖を断ち切るには EU の政治家らによる健康と環境に対する強い取組が求められる。”

 食物は汚染物質、特に、DDT、PCB類、及び臭素化難燃剤に対する人の暴露の最も重要な経路のひとつである。しかし化学物質はまた、その他の多く経路、例えば、製造中の漏れ、輸送・貯蔵中、直接使用、コンピュータ、テレビ、身体手入れ品のような様々な製品の使用、などを通じて環境中に入り込みむ。

 今年の秋には、欧州議会は、有害な人工化学物質から人と野生生物を守るための EU の新たな化学物質規制 REACH を採決する。しかし WWF によれば、 REACH 制定のためのこれまでの長い過程における産業側のロビーイング活動のために REACH 案はかなり弱体化され、このままでは現在の法規制と同じように効果のないものになる。

 世界の環境保護団体である WWF は EU がもっと強い REACH を採択するよう力説している。ヨーロッパの立法者らは最も危険な化学物質を特定するために REACH が化学物質に関する十分な安全データを提供給することを確実にしなくてはならない。そして、内分泌かく乱物質を含む非常に高い懸念がある化学物質は、代替品が入手可能ならそれに替えるべきである。

備考

  • 有機塩素系殺虫剤は農業用に、PCB類は電機機器に、臭素化難燃剤はプラスチック、布製品、及び電子機器に、過フッ素化合物は焦げ付き防止コーティング及びファースト・フード容器の製造に、フタル酸エステル類はプラスチック可塑剤に、有機スズは海洋防汚剤に、アルキルフェノールは洗剤に、香料としての人工ムスクは洗浄剤及び化粧品に使用されている。

  • 化合物の多くは 0.1 〜 10 ng/gの範囲の濃度で検出されたが、フタル酸エステル類は例外で、一般的には他の化学物質より2桁高い濃度であった。有機塩素系殺虫剤の汚染濃度は低いが検出頻度は高い。PCB類は分析された全てのサンプルから検出された。DDT の代謝物質である ppDDE は 27サンプル中 16サンプルで検出され、魚の濃度が最も高かった。臭素化難燃剤は 27サンプル中 19サンプルで検出され肉類の濃度が最も高かった。フタル酸エステル類は、21サンプル中 16サンプルに検出された。わずかなサンプルからノニルフェノール、人工ムスク、及びかフッ素化合物(PFOS)が検出された。
For more information:
Noemi Cano, WWF DetoX Communications Manager
Tel: +32 2 743 88 06
Email: ncano@wwfepo.org

Olivier van Bogaert, Senior Press Officer
WWF International
Tel: +41 22 364 9554
Email: ovanbogaert@wwfint.org



化学物質問題市民研究会
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