Medical Xpress 2023年7月17日
分析: PFAS の有害性に関する研究の
ほとんどは非公開のままである

グリーン科学政策研究所
情報源:Medical Xpress July 17, 2023
Analysis: Most research on PFAS harms is unpublicized
by Green Science Policy Institute
https://medicalxpress.com/news/2023-07-analysis-pfas-unpublicized.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2023年7月26日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/news/230717_MedicalXpress_
Analysis_Most_research_on_PFAS_harms_is_unpublicized.html


 パーフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル物質(PFAS)は毎日メディアの見出しを賑わせているが、PFAS 暴露と人間の健康被害との関連性を発見した研究のほとんどがプレスリリースなしで発表され、メディアでほとんど取り上げられないことが新しい論文で明らかになった。 本日、ジャーナル『Environment Health』に掲載されたこの分析では、マスコミの注目をまったく受けていない研究は、学術的に引用される数も少ないことが判明した。

 ”この科学のほんの一部しか一般に伝わっていないのは残念だ”と筆頭著者でグリーン科学政策研究所の科学コミュニケーションのディレクターであるレベッカ・フオコは語った。”永遠の化学物質と、早産やがんなどの深刻な害との間に強い関連性があることを発見した新しい研究は、目立たずに飛び交っている。科学ジャーナル中に隠された研究は到達範囲が限られており、したがって影響力も限られている”。

 著者らは、PFAS-Tox Database(訳注:このデータベースは、新たに発生し増大する懸念のある一連の 29 の PFAS に関する利用可能な健康および毒物学関連の文献を特定し、整理することを目的とし、PFAS 暴露に関連する健康上の転帰を調べる 700 以上の 試験管内、動物、およびヒトの研究のインタラクティブで公的に利用可能な系統的証拠マップである。THE PFAS PROJECT LAB)によって収集された、出版年が 2018 年から 2020 年までの PFAS のヒトの健康への影響に関する 273 件の査読済み疫学研究を分析した。 統計的に有意な健康被害との関連を報告した論文のうち、プレスリリースのある論文は、プレスリリースのない論文に比べて20倍多くのメディアの注目を集めた(Altmetric スコアによる評価)(訳注:Altmetrics(オルトメトリクス) とは WEB 上でのソーシャルメディア(SNS やブログ)等の反応から学術論文記事やデータセットなどの影響度を測定しようとする手法/レタープレス)。 しかし、統計的に有意な結果が得られた論文のうち、プレスリリースを発行した論文は 8% 未満であった。

 プレスリリースのない論文には、PFAS 暴露と早産、卵巣がん、乳がん、骨粗鬆症、妊娠糖尿病のリスクとの重大な関連性を報告する研究が含まれていた。 これらの研究は、メディア報道やソーシャルメディアへの投稿を全く、あるいはほとんど、受けていない。

 この分析は PFAS 研究に焦点を当てているが、著者らはこの分析の結果が他の科学分野はもとより、環境健康研究のより大きな部分に反映することを期待している。

 研究チームがプレスリリースの発行を控える理由のひとつは、学術以外のコミュニケーションを追求する職業上の動機が実際に欠如している、あるいはその可能性があることである。 ただし、この分析では、プレスリリースのある論文の年令調整後の平均被引用数は、プレスリリースのない論文よりも 3 分の 2 多かった。 また、引用数と Altmetric スコアの間には正の相関関係があった。

 もうひとつの障壁は、自分たちの研究に関する報道が不正確であったり、過剰に誇張されたりするのではないかという科学者らにある恐怖である。 しかし、これまでの研究では、誇張表現は大学のプレスリリースに遡ることが多いことがわかっている。 これは、科学者がプレスリリースをまったく発行しないのではなく、プレスリリースの草案作成においてもっと積極的な役割を果たし、その正確性を確保することが解決策であることを示唆している。 その他の障壁としては、時間、リソース、メディアに精通していないこと、社会における科学者の役割についての哲学的見解の相違などが挙げられる。

 ”科学者とその機関に対し、メディアへの働きかけを研究プロセスの重要な部分として取り入れるよう強くお勧めする”と、共著者で国立環境衛生科学研究所の名誉科学者でデューク大学の研究員であるリンダ・バーンバウムは述べた。 ”科学者として、私たちはより良い政策、医療行為、業界の革新などに提供できる情報の鍵を握っている。私たちの研究を幅広い人々と共有することで、その可能性を解き放つことが私たちの責任である”。

 ”わが国の科学研究のほとんどは国民によって資金提供されており、彼らは負担した研究の結果を知る権利がある”とグリーン科学政策研究所の執行ディレクターであり、この研究の共著者であるアーレン・ブルームは述べた。”プレスリリースと簡単な計画により、科学者らはメディア報道、到達範囲、研究の影響力を高めることができる”。

 著者らは、自分の研究についてメディアの注目をもっと集めたい科学者のために推奨事項を記載し、ビデオ、テンプレート、追加リソースを含む ウェブページを紹介している。

詳細情報: 環境健康研究の影響を高めるための効果的なコミュニケーション戦略、Environment Health (2023)。 DOI: 10.1186/s12940-023-00997-6

ジャーナル情報: Environmental Health


化学物質問題市民研究会
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