インディアナ大学医学部 2022年10月12日
妊娠中のグリホサートへの高暴露は
赤ちゃんに低出生体重をもたらすかもしれない

クリスチーナ・グリフィス
情報源:Indiana University School of Medicine, Oct 12, 2022
Study: high exposure to glyphosate in pregnancy
could cause lower birth weights in babies

ByChristina Griffiths:a communications coordinator
https://medicine.iu.edu/news/2022/10/
environmental-health-glyphosate-exposure-study


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2022年10月24日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/news/221012_Indiana_Univ_Study_high_
exposure_to_glyphosate_in_pregnancy_could_cause_lower_birth_weights_in_babies.html


【インディアナポリス】−インディアナ大学医学部の研究者らは、妊娠中の除草剤暴露の影響についてさらに多くを学び、中西部で観察した妊婦の 99% でグリホサートを発見した。 Environmental Health に最近発表された研究訳注1)で、グリホサートのレベルが高いほど出生時体重が低くなり、新生児の集中治療室への入院リスクが高くなる可能性があることが分かった。

 これは、研究者らが重要な発見をした 2番目の小規模な研究である。 2018年に発表された同チームの以前の研究は、妊娠期間が短縮した妊娠の 93%でグリホサートを確認した最初の研究であった。最近の他の研究も彼らの発見を裏付けている。

 ”妊娠中、特に妊娠初期に農薬にさらされると DNA に刷り込まれ、遺伝子発現が変化する可能性がある”と、臨床小児科の教授であり、研究の筆頭著者であるポール・ウィンチェスター医学博士は述べている。”しかし、これらの化学物質がヒトの胎児の発育にどのように影響するかについては、ほとんどわかっていない。

 グリホサートは、除草剤として使用されるラウンドアップ中に一般的に見られる化学物質である。これは、米国中の農家や住宅所有者によって使用されているが、特に中西部ではトウモロコシと大豆に使用されている。以前の研究では、人々は包装された食品や有機食品であっても、食べる全ての食品でグリホサートにさらされる可能性があることが示されている。

 数年にわたり、研究者らはインディアナ州の 187 人の妊婦たちのコホートを観察し、妊娠初期に尿サンプルを収集した。 1 人を除く全ての女性の尿からグリホサートが検出された。

 ウィンチェスター博士によると、これまでの研究では、動物モデルにおける農薬暴露のさまざまな悪影響が示されているが、ヒトの胎児の発育への影響についてはあまり知られていない。

 ”新生児学者として、肥満や妊娠糖尿病などの問題を抱えた母親だけでなく、低出生体重などの問題を抱えた乳児がますます増えている”とウィンチェスター博士は述べた。”これらの除草剤がどのようにこれらの問題を引き起こしているのか、そしてそれらを防ぐために何ができるかを見つけるために、これらの除草剤を長期的に研究し続ける必要がある。

 研究者らは、もっと大きな妊婦のグループでグリホサート暴露について時間をかけて研究したいと考えている。

 この研究は、インディアナポリスの フランシスカン・ヘルス( Franciscan Health)、カリフォルニア大学サンフランシスコ校、アーカンソー医科大学、 ロンドン大学キングス・カレッジとの共同作業であった。

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 インディアナ大学医学部(IU School of Medicine)は、米国最大の医学部であり、毎年、US News & World Report によって全米トップの医学部にランクされている。この学校は、質の高い医学教育、最先端の医学研究へのアクセス、および住みやすさで一貫して認められている農村部と都市部を含む 9 つのインディアナ州都市での豊かなキャンパスライフを提供している。

訳注1:発表された論文とアブストラクト
  • Glyphosate exposure in early pregnancy and reduced fetal growth: a prospective observational study of high-risk pregnancies
    (妊娠初期のグリホサート暴露と胎児成長の低下:高リスク妊娠の前向き観察研究)
    Roy R. Gerona, Jill L. Reiter, Igor Zakharevich, Cathy Proctor, Jun Ying, Robin Mesnage, Michael Antoniou & Paul D. Winchester
    Environmental Health volume 21, Article nu

  • アブストラクト

    背景
     出生前のグリホサート (GLY) への暴露は、動物実験での生殖への悪影響と関連している。人間集団における妊娠中の GLY 暴露の影響についてはほとんど知られていない。この研究の目的は、高リスクで人種的に多様な妊娠コホートにおける基準の尿中 GLY レベルを確立し、出生前の GLY 暴露と胎児の発育および出生結果との関係を評価することである。

    方法
     インディアナ妊娠環境暴露研究 (PEES) の一環として、2013 年から 2016 年の間に高リスクの妊婦から妊娠初期の無作為な尿検体が採取された。人口統計学的データと臨床データは、母親と乳児の医療記録から抽出された。尿中グリホサート レベルは、GLY 暴露の代用として測定され、液体クロマトグラフ/タンデム質量分析法を使用して定量化された。主要な転帰変数(outcome variables)には、妊娠調整出生時体重パーセンタイル (訳注:データを大きさ順でならべて100個に区切り、小さいほうからのどの位置にあるかを見るもの)と新生児集中治療室 (NICU) への入院が含まれていた。一変量および多変量の線形およびロジスティック回帰モデルを使用して、主要な転帰変数と GLY 暴露との関係を評価した。

    結果
     検出限界 (0.1 ng/mL) を超える尿中 GLY レベルは、妊婦 187 人中 186 人 (99%) で検出された。さらなる分析は、単胎出生の妊婦 155 人に限定された。参加者の平均年齢は 29 歳で、大部分は非ヒスパニック系白人 (70%) または非ヒスパニック系黒人 (21%) であった。平均 (±SD) 尿 GLY レベルは 3.33±1.67 ng/mL であった。新生児の BWT%iles は、GLY と負の関係にあった。 (調整勾配 ± SE = -0.032 + 0.014、p = 0.023)。インディアナ州の大都市圏の外に住む女性から生まれた乳児は、母親の妊娠初期の GLY レベルに関連する BWT%ile が低い傾向があった。 (勾配 ± SE = -0.064 ± 0.024、p = 0.007)。 NICU 入院と母体の GLY レベルの調整オッズ比は 1.16 であった (95% CI: 0.90, 1.67, p = 0.233)。

    結論
     GLY は、この中西部コホートの妊婦の 99% で発見された。妊娠初期の母親の GLY レベルが高いほど、BWT%iles が低く、NICU 入院リスクが高くなる。この結果は、より大規模な集団研究におけるヒトの妊娠における GLY 暴露の影響に関するさらなる調査の必要性を示すものである。


化学物質問題市民研究会
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