Science News 2018年4月26日
プラスチックは、何度でも、何度でも、何度でも、
リサイクル可能である

最初の基礎的要素(ビルディングブロック)への分解が
ポリマーの再使用可能性への鍵である
ローレル・ハマーズ

情報源:Science News, April 26, 2018
This plastic can be recycled over and over and over again
Breaking down into its initial building blocks is
the key to the polymer's reusability
By Laurel Hamers
https://www.sciencenews.org/article/plastic-polymer-recyclable

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2018年5月7日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/news/180426_ScienceNews_
This_plastic_can_be_recycled_over_and_over_and_over_again.html




汚染問題:リサイクルされるプラスチックもあるが、ほとんどのものは最終的に埋め立て場に堆積することになる。リサイクルが容易なプラスチックなら、その状況を変えるのに役立つであろう。 Gavran333/iStockphoto
 プラスチックには将来性が大いにある。新しいタイプのプラスチックは、適切な化学物質に暴露すると、それが由来した元の基礎的要素(ビルディングブロック)と同一の要素に分解し、繰り返し再生することができる。そのリサイクル可能な材料は、従来の試みで生成された再使用可能なプラスチックより丈夫であると、研究者らは4月26日にサイエンス誌で報告した。

 容易に再使用できるプラスチックを開発することは、世界の廃棄物問題に対する取り組みのひとつである。Science Advances に報告された2017年のある調査によれば、製造されたプラスチックでリサイクルされているのはわずか約10%だけである。しかしプラスチックは非常に安価であり有用なので、数億トンのプラスチックが毎年量産されている。

 プラスチックのリサイクルにとって主要な障害の一つは、ほとんどのプラスチックはそのままでは有用ではない分子に分解してしまうということである。これらの分子をプラスチックやその他の材料に変換するためには、多くの化学反応を必要とし、そのことがリサイクル・プロセスを効率の悪いものにしている。そして近年、生物分解性プラスチックが評判となっているが、それらは適切な微生物が存在する場合にのみ分解する。通例、これらのプラスチックは最終的には埋め立て地に長い間堆積するか、海洋に浮遊する。元の基礎的要素に分解し、追加的なプロセスや純化処理なしに再使用することができるプラスチックを作り出すことが、汚染の堆積を低減するのに役に立つであろう。

 しかし、そのようなプラスチック・ポリマーを開発することは一種の綱渡りであると、この研究には関与していないエジンバラ大学のポリマー科学者マイケル・シェーバーは述べている。ポリマーは、モノマーと呼ばれる小さな分子が多数結合した長い鎖であり、それらは糸でつながるビーズのようにつながっている。ポリマーにするために極高温又は多くの手練手管を必要とするモノマーは現実的な基礎要素でないかもしれない。そして結果として得られるポリマーは、例えば熱いコーヒーをそれらでできたカップに注いでも鎖を不安定にさせないよう、そしてプラスチックが溶け出さないよう、十分高い温度でも安定である必要がある。

 フォート・コリンズにあるコロラド州立大学のポリマー化学者ジアンボ・ズーと彼の同僚らは、この課題の解決に乗り出した。そのチームは過去に、元の(最初の)分子に分解することができるポリマーを作り出すという幸運に恵まれていた。しかし彼らの実験室及び同じ路線をたどる他のグループにより作り出されプラスチックは、実用的な用途のためには柔らかすぎ、温度感受性が高すぎた。



魅惑的なプラスチック:元の基礎的要素に分解することができる新たなポリマーは、使い捨てのプラスチック・ボトルに比べて使用上の遜色はない。 Bill Cotton/Colorado State Univ
 今回、ズーと彼の同僚らは、前回の彼らの成果物を構成するひとつの小さな環状分子に、もうひとつの環状分子を加えることにより、その分子を補強して特有の構造に改良した。その硬直性は、モノマーが室温で迅速に結合して熱的に安定したポリマー鎖になりやすくした。

 次にそのポリマーをある穏やかな化学物質又は十分に高い温度に暴露させると、そのポリマーは分解して元のモノマーに戻った。研究者らはこのサイクルを数回、くりかえすことができ、理論的にはそのポリマーは無限にリサイクル可能であることを示した。

 それぞれのモノマーは特定の構造にロックされるが、それらは同じ化学的処方で作られていても、全てが同じ形状というわけではない。モノマーの二つの異なる構造の混合はより強度の高いプラスチックになると、ズーは言う。”これは恐らく、世の中で最良のシステムである”。

 それはまだ、完全ではない。ズーと彼の同僚らは、将来はモノマー設計をもっと工夫し、脆性がもう少し小さいプラスチックを作ることを計画している。最終的には、彼らはその製品を商業化したいと考えている。

引用

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訳注:プラスチック問題


化学物質問題市民研究会
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