ScienceDaily 2019年10月22日
新たな難燃剤、古くからの問題: 難燃剤の代替は重大なリスクを提起すると科学者らが警告 (出典:トロント大学) 情報源:ScienceDaily, October 22, 2019 New flame retardants, old problems Replacement flame retardants present serious risks, caution scientists (Source: University of Toronto) https://www.sciencedaily.com/releases/2019/10/191022080726.htm 参照論文: Arlene Blum, Mamta Behl, Linda S. Birnbaum, Miriam L. Diamond, Allison Phillips, Veena Singla, Nisha S. Sipes, Heather M. Stapleton, Marta Venier. Organophosphate Ester Flame Retardants: Are They a Regrettable Substitution for Polybrominated Diphenyl Ethers? Environmental Science & Technology Letters, 2019; DOI: 10.1021/acs.estlett.9b00582 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2019年10月24日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/flame_retardants/ 191022_SD_New_flame_retardants_old_problems.html 概要 新たな研究によれば、我々のテレビ、その他の電気/電子機器、及び子ども用カーシートから発散している新たな難燃剤は、それらが代替することを意図した古い難燃剤と同じように有害である。著者らは、有機リン系難燃剤と呼ばれる代替化学物質は子どもの低い知能指数、生殖問題、及びその他の重大な健康障害に関連していることを発見した。 全文 Environmental Science & Technology Letters に本日発表されたピアレビューされた研究によれば、我々のテレビ、その他の電気/電子機器、及び子ども用カーシートから発散している新たな難燃剤は、それらが代替することを意図した古い難燃剤と同じように有害である。著者らは、有機リン系難燃剤と呼ばれる代替化学物質は子どもの低い知能指数、生殖問題、及びその他の重大な健康障害に関連していることを発見した。 難燃剤は特に深刻な脅威を子どもたちに及ぼす。赤ちゃんは母親と同じレベルの難燃剤を体内に持って生まれ、その後、指を口にする行動を通じてさらに暴露する。小さな子どもは成人より 3〜10倍、あるいはそれ以上高いレベルの難燃剤を持つ可能性がある。このことは、最も脆弱なこの時期に子どもたちの発達中の脳や生殖器官を害する可能性があることを意味する。 ”我々は、これらの難燃剤はすべての世代の脳の発達を脅かすということを認める必要がある”と、国立環境健康科学研究所(NIEHS)の元ディレクターであるリンダ・バーンバウムは述べた。 難燃化学物質は、多くの製品の火災の危険を低減するために必要というわけでも、効果的であるというわけでもない。これらの化学物質は可燃性規制に合致するために添加されている。しかし、それらはしばしば着火を数秒遅らせるだけであり、火災をもっと危険にすることを示す研究がある。 数年に及ぶ研究と提唱の後、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDEs)と呼ばれる有害な難燃剤は、家具中のクッション(フォーム)、電子機器、及び子ども用品中での使用が廃止された。それらの廃止は人間の健康の勝利であるとして初めのうちは歓迎されたが、PBDEs は多くの製品で有機リン系難燃剤に取り換えられていた。 古い PBDE 難燃剤と同様に有機リン系難燃剤は、絶えず製品からは遊離して埃にとりつく。難燃剤で汚染された埃が人の手に付くと、サンドイッチと一緒に難燃剤を食べることになる。科学者らはまた、有機リン系難燃剤のレベルは以前の難燃剤に比べて大気中、埃中、及び水中でしばしば 10〜 100倍高いことを発見した。 最も懸念のあることは、有機リン系難燃剤が調査対象となったほとんど全ての人々から検出されたということである。いくつかは、成人の生殖能力及び子どもの健康な脳の発達を脅かすのに十分なレベルで見出された。 ”これらの結果は、化学物質政策に対するモグラたたき的なアプローチ(whack-a-mole approach)の危うさを示している”とインディアナ大学の副主幹研究員マータ・ヴェニア博士は述べた。”製造者らは有害化学物質の使用を止めなくてはならな時に、しばしばそれを同様な有害性を持つ同様な化学物質に置き換える。難燃剤の場合には、我々はフライパンから飛び出して火の中に飛び込んだ(訳注:さらに最悪な情況に陥る)”。 この研究では、研究者らは難燃剤に関するピアレビューされた100編近くの科学論文をレビューした。彼らは古い PBDEs 難燃剤及び新しい有機リン系難燃剤の健康影響、環境的有害性、及び化学的特性に関する研究結果を比較した。 彼らは代替された化学物質は風や水により発生源よりはるかに遠くに−深海、氷に覆われた山頂、北極や南極にすら、運ばれていることを発見した。トロント大学のミリアム・ダイアモンド教授によれば、”有機リン系難燃剤は現在、世界中で発見されており、我々が難燃剤を使用したことがない地域を汚染している”。 著者らは、製造者らに対して、創造的な設計と本質的な耐火材料によって家具、電子機器、及び子ども用品中の火災安全を増強するよう求めている。”我々の調査結果は、これ等の化学物質を、個別的ではなく部類(class)として扱うことの重要性を示している”と、カリフォルニア大学サンフランシスコ校生殖健康環境プログラムのヴィーナ・シングラは述べた。”政策はその方向に向いているが、人と環境を守るために我々は今、不必要な使用を低減するための行動を起こすことができる”。 ”PBDE 難燃剤による我々の子どもたちの長年の健康被害の後に、最も広範に使用されている PBDE の代替難燃剤が PBDE と全く同じように悪いらしいということが分かったことに失望する”と、グリーン科学政策研究所(Green Science Policy Institute)の執行ディレクターであるアーレン・ブルム博士は述べた。”将来の世代を守るために、製造者らは有害代替物の循環を止め、不必要な難燃剤を完全に回避することができるし、そうしなくてはならない”。 記事出典 Materials provided by University of Toronto. Note: Content may be edited for style and length. 関連記事
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