米化学会 EST 2009年10月21日
初期のBPA暴露は
子どもの行動影響に関連する


情報源:Environmental Science & Technology, October 21, 2009
Early BPA exposure linked to behavioral effects in children
Researchers say that BPA exposure in the womb
might trigger aggressive behavior and other problems for girls.
Naomi Lubick
http://pubs.acs.org/action/showStoryContent?doi=10.1021/on.2009.010.20.457440

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年10月29日


 Environmental Health Perspectives (2009, DOI 10.1289/ehp.0900979)に発表された研究によれば、母親が妊娠初期にビスフェノールA(BPA)に暴露した小さな女の子は、攻撃的になり、学習障害を持つかもしれない。小さな男の子はそのような影響が見られない。

 サイモン・フレーザー大学(カナダ)のブルース・ランファーらによる新たな研究は、249人の女性を妊娠初期から追跡した。同チームは、妊娠後16週と26週、及び出産時に彼女らの尿中のBPAレベルを測定した。2年後、母親らは、子どもの年齢用に作られた行動評価書を使用して彼女の子どもたちを評価した。

 同チームはテストした女性の尿サンプル中のほぼ90%の中にBPAを見出した。この化学モノマーはポリカーボネート・プラスチック(例えば、最近カナダでは店の棚から撤去された硬質飲料水容器中に見出される)のような製品中に広く残存している。BPAはまた医療用チューブを柔らかくするために、また食品容器や缶のライニング中で一般的に使用されている。

 BPA濃度の中央値は、妊娠初期に採取された女性の尿サンプル中で高いことを明らかにした。出産時の1.3ナノグラム/mlに比べると、1.8 及び 1.7 ナノグラム/mlであった。また、彼らは16週に採取されたサンプル中のBPAのレベルが高ければ高いほど、より強く子どもの行動評価点に関連しており、この関係は男の子よりも女の子に強いとを見出した。

 この結果は、米環境保護庁(EPA)が2008年の議論あるレビュー後、BPAの問題点に立ち戻ることを決めた時に報告されている。EPAと国立健康研究所(National Institutes of Health)から金の出たもうひとつの独立した報告書 ”チャペルヒル ビスフェノールA 専門家パネル合意声明(訳注1)(Chapel Hill bisphenol A expert panel consensus statement)”は、現状の暴露レベルは、”注意欠陥多動障害(ADHD)や自閉症を含む神経行動問題の増加”のような人の健康に影響を与えるのに十分であると結論付けた。今回のEHPの論文の著者らは誰も独立委員会のメンバーではなかった。

 著者らはプレスリリースでこの研究は、初めて”胎児期のBPA暴露と幼児期の健康影響との関係を検証した”ものであり、その結果は”動物実験からのデータと一貫している”とコメントしている。そのような動物実験は特にメスのマウスでの神経毒性影響、及び他の影響と共に子孫への遺伝的影響を示している。

 それにも関わらず、著者らはまた、彼らの研究は相互関係を示唆しているだけであり両親のADHDについての未確認から母親の選定における選択バイアスまで、多くの混乱するが状況が彼らの結果に疑いを投げかけると言っている。”胎児のBPA暴露が子どもへの有害影響を引き起こすかどうかはまだ分からない”と彼らは結論付けている。


訳注1


化学物質問題市民研究会
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