EPA ファクトシート 2006年11月20日
EPA、デュポン社に同意命令
ワシントン工場近辺の飲料水保護のための措置

情報源:Fact Sheet, November 20, 2006
EPA, DuPont Agree on Measures to Protect Drinking Water Near the DuPont Washington Works
http://www.epa.gov/region03/enforcement/dupont_factsheet.html
訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2006年12月9日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/epa/epa_dupont_concent_order_061120.html

 C-8(PFOA、パーフルオロオクタン酸)と呼ばれる化学物質の最近の研究は、デュポン社ワシントン工場の近くに住むウェストバージニア州とオハイオ州の人々の飲料水中のC-8 汚染からの保護の方法を変える新たな法的協定を促進させた。米環境保護庁とデュポン社との間の”同意命令(consent order)”(訳注1)として知られる協定の下に、デュポン社は、水供給系の C-8 濃度が 0.50ppb に達したならある措置をとらねばならない。

 2002年の同意命令で、飲料水中の C-8 濃度が150ppbに達したらデュポンは住民に対しボトル水を供給するか水処理装置を設置することに同意していた。しかし最近の調査でウェストバージニア州パーカーズバーグの近くにあるデュポン社ワシントン工場の付近に住む人々の血中には C-8 が中央値 298〜369 ppb のレベルで存在していることを示している。この値は一般的アメリカ人の血中平均濃度 5.0ppb よりはるかに高い。新たな調査研究は実験動物に様々な種類の有害影響を示しており、その結果は公衆の健康にとって懸念あるものである。したがって飲料水中の”対策レベル(action level)”を 0.50ppb に下げるための EPA とデュポン社との間の新たな同意命令が2006年11月20日に発効した。

 この協定の下に、もし飲料水中で検出される C-8 のレベルが 0.50ppb 以上となった場合には、デュポンはワシントン工場近くに住む公共又は個人の水使用者に代替の飲料水か水処理設備を提供することになる。C-8は粒状活性炭処理によって除去される。水を沸騰させても除去することはできない。

 最大の懸念はデュポン社ワシントン工場の近辺に住む人々である。製造工程で C-8 を使用する同工場は飲料水の地下水源中のC-8の汚染源である。

 オハイオ州のリトル・ホッキングに住む12,000人とリューベックに住む9,000人が未だに C-8 のための水処理が行われていない公共水道水を使用している。同地域の他の共同体も影響を受けるかもしれない。

 リトル・ホッキングの住民は現在、民事訴訟の結果から生じた協定に基づきデュポン社からボトル水を提供されている。EPAはその訴訟の当事者ではなく、調停の立場でもない。リトル・ホッキング公共水道水中のC-8の平均濃度は1〜7ppbである。オハイオ州は水処理設備の設置工事に必要な許可を与えたが、工事着手の明確な日時は決まっていない。

 リューベックの住民はデュポンとのボトル水協定は結んでいない。同市の公共水道中のC-8濃度は一貫して 0.50ppb 以上というわけではない。2002年以来、C-8 濃度は 0.4〜1.1ppb の範囲にある。ウェストバージニア州の健康当局は水処理設備設置の許可を与えており、処理設備は必要な州及び市の認可が得られれば6ヶ月以内に工事が完成すると考えられている。同施設は2007年6月までに運転が開始されると期待されている。

 粒状活性炭水処理設備が水供給系に設置されているところでは、消費者はC-8濃度が0.01 ppb 以下の水を受けており、この濃度は0.50 ppbという対策レベルより十分に低い値である。ベルプレ(Belpre), Tupper Plains/Chester 及び ポメロイ(Pomeroy) を含むいくつかの公共給水系ではすでに C-8 のための処理を行っている。メイソン郡ではまだ C-8 のための処理が行われていない。これら4つの処理済み水系の中には、その水源の C-8 濃度が 0.50 ppb 以上の所はない。

 個人の給水系−家庭用井戸−に関しては、デュポンは多くの数のテストを実施しており、78システムに処理装置を設置した。C-8 濃度が 0.50 ppb 又はそれ以上であったのはこれらのうち30システムであった。

 水がC-8で汚染されている地域に住む人々は、利用している公共給水系または個人の給水系に水処理設備が設置されるまで、それらの水系の水を飲まないことによってC-8暴露を低減できるかもしれない。

 EPAは個人が自分の飲料水をテストすることは勧めない。デュポンは新たな”同意命令”に基づき、EPAによって定義された地理的地域の調査を実施し、C-8 対策レベルの 0.50 ppb を越える公共又は個人の給水系がないか調べることを求められている。EPAは、デュポンによってまだ調査されていないリトル・ホッキングとベルプレ公共サービス区域の間の地域をすでに定義したが、そこでの C-8 レベルは0.50 ppbを越えるかもしれない。分析データが入手可能となったならオハイオ州とウェストバージニア州と協議して、この地域をさらに評価し詳細に検討する。

 もし水のテストをしたいという個人がいれば、非常に限られた試験所でC-8の濃度分析を行うことができる。EPAはC-8の濃度分析を行うことができる認証された試験所の完全なリストを持っていない。

 C-8 が人間に与える影響についてはまだ合意はない。しかし、動物データやワシントン工場の近辺に住む人々の血液サンプルに関するデータから懸念が生じている。更なる調査研究が進められているが、その結果が入手できるのは数年後かもしれない。その間、この新たな対策レベルが飲料水からのC-8暴露を低減し、有害な健康影響の可能性を削減するであろう。


訳注1:同意命令
訳注2:参考記事


化学物質問題市民研究会
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