EHP 2006年4月 特別号 論文集
野生生物に化学的に引き起こされる内分泌かく乱の生態学的関連
女性ホルモン様内分泌かく乱物質で汚染された
河口で採取されたカレイ中の
ステロイド性ホルモン濃度とビテロジェニン濃度との関連

アレキサンダーン P. スコット (環境・漁業・水産養殖科学センター/イギリス)ら
(アブストラクトの紹介)
情報源:Environmental Health Perspectives Volume 114, Number S-1, April 2006
The Ecological Relevance of Chemically Induced Endocrine Disruption in Wildlife
Relationship between Sex Steroid and Vitellogenin Concentrations in Flounder (Platichthys flesus) Sampled from an Estuary Contaminated with Estrogenic Endocrine-Disrupting Compounds
http://www.ehponline.org/docs/2005/8049/abstract.html
Alexander P. Scott,1 Ioanna Katsiadaki,1 Mark F. Kirby,2 and John Thain2
1Centre for Environment, Fisheries and Aquaculture Science (CEFAS), Weymouth, United Kingdom;
2CEFAS, Burnham-on-Crouch, United Kingdom
訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2006年6月5日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehp_2006_April_S-1/06_04_ehp_s-1_VTG.html

  アブストラクト
 高濃度のビテロジェニン(VTG:卵黄たんぱく(訳注1))は、今までに何ヶ所かのイギリスの河口で採取されたオスのカレイ(flounder / Platichthys flesus)で見いだされている。これらの高濃度レベルは女性ホルモン様内分泌かく乱物((EDCs)の存在が原因である。
 間性(intersex 訳注:雌雄の中間の性特徴を示す個体)を含んでだ生殖腺(gonads)の異常もまた、これらの河口で報告されている。しかし、今日までに、これら二つの発見に因果関係がある、又は女性ホルモン様 EDCs が個体群に有害影響を与えているという確固とした証拠はない。
 本調査では、我々は、マーセイ川の河口で採取したカレイ(flounder)の試料により、VTG の濃度とステロイド性ホルモン(オスの11-oxo-testosterone とメスの 17β-estradiol)の濃度の関連を問題にした。
 まず最初に我々は、オス及び未熟メスのカレイ中の高濃度 VTG が本当に外因性の EDCs の直接的な影響によって引き起こされ、内因性の17β-estradiol 分泌による間接的な影響ではない−ということについて検証した。調査結果のデータは、女性ホルモン様 EDCs の関与を支持した。
 次に我々は、女性ホルモン様 EDCs の存在は、不適切な VTG 合成を刺激するだけでなく、内因性ステロイド性ホルモンの分泌に有害な影響を及ぼすのではないかということを問題にした。ステロイド分泌の低下という予測された結果は、より小さな生殖腺(gonads)、より小さな 卵母細胞(oocytes)、より少ない精子数、産卵行為の抑制を含むことに留意すべきである。
 季節的な生殖サイクルとステロイド濃度の成熟段階の影響があるので、この疑問に答えることは、もっと難しかった。しかし、採取の月と成熟度を合わせることにより、メスの 17β-estradiol とオスのd 11-keto-testosterone はほとんどの場合、VTG 濃度が高い年には著しく低かった。

キーワード:
17β-estradiol、内分泌かく乱、エストロゲン、カレイ(flounder)、ステロイド性ホルモン、ビテロジェニン

Environ Health Perspect 114(suppl 1) :27-31 (2006) . doi:10.1289/ehp.8049 available via http://dx.doi.org/ [Online 21 October 2005


訳注1(参考)
水質に関する用語集/ビテロジェニン



化学物質問題市民研究会
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