EHP 2006年4月 特別号 論文集
野生生物に化学的に引き起こされる内分泌かく乱の生態学的関連
遺伝子毒性とインポセックス影響との間に因果関係はあるか?
ジョセフィン A. ハガー (プリマウス大学生物科学部門生態毒物学ストレス生物学研究所/イギリス)ら
(アブストラクトの紹介)
情報源:Environmental Health Perspectives Volume 114, Number S-1, April 2006
The Ecological Relevance of Chemically Induced Endocrine Disruption in Wildlife
Is There a Causal Association between Genotoxicity and the Imposex Effect?
http://www.ehponline.org/docs/2005/8048/abstract.html
Josephine A. Hagger,1 Michael H. Depledge,1,2 J g Oehlmann,3
Susan Jobling,4 and Tamara S. Galloway1
1Ecotoxicology and Stress Biology Research Centre, School of Biological Sciences,
University of Plymouth, Plymouth, Devon, United Kingdom;
2Environment Agency of England and Wales, Almondsbury, Bristol, United Kingdom;
3Department of Ecology and Evolution - Ecotoxicology, University of Frankfurt, Frankfurt, Germany;
4Brunel University, Uxbridge, Middlesex, United Kingdom

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2006年6月4日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehp_2006_April_S-1/06_04_ehp_s-1_Genotoxicity.html

  アブストラクト
 環境汚染物質が内因性ホルモン作用を妨げることにより生殖系及び発達系プロセスをかく乱する能力があるという証拠がますます増大している。内分泌かく乱の多くの報告が、遺伝子損傷と一致したした器官と組織の正常な発達の変化を記述しており、最近の研究はホルモン作用影響を持つと分類されている多くの化学物質がまた、発がん性及び変異原性の潜在的能力を持つことを確認している。
 しかし、今日までに生体(in vivo)において、遺伝子損傷と内分泌機能の変化及び有害影響を結びつける決定的な例はなかった。ここに我々は、DNA 損傷がチヂミボラ(Dog whelk (Nucella lapillus))におけるインポセックス(内分泌介在経路の変更の結果と考えられるメスの腹足類の雄性化(masculinization))の発生と関係するという初めての証拠を示す。
 トリブチルスズ(TBT)誘引のインポセックスの様々な段階を示す257固体がイギリスの南西部のサイトで採取され、それらのインポセックスの状況は物理的検証によって決定された。線形回帰分析が、ヘモサイト(hemocytes)におけるインポセックスの程度と DNA 損傷(小核形成(micronucleus formation))との間の非常に強い関連(相関係数0.935、p < 0.0001)を明らかにした。
 さらに、ヨーロッパ中のサイトで採取したもっと数の多いチヂミボラ(dog-whelk)の組織学的検証が、TBT 汚染したオスの巻貝及びインポセックスを示すメスにおいて主に輪精管(vas deferens)とペニスに過形成性的成長が見られることを確認した。
 TBT 体内汚染と異常な成長の間に強い関連が見いだされ、生殖系プロセスに影響を与える環境化学物質が DNA 損傷の経路を通じてそのような影響を及ぼすという仮説を支える抗しがたい証拠を示した。

キーワード:
生態毒性学、内分泌かく乱、遺伝子毒性、インポセックス、小核(micronucleus)、チヂミボラ(Dog whelk (Nucella lapillus))、トリブチルスズ

Environ Health Perspect 114(suppl 1) :20-26 (2006) . doi:10.1289/ehp.8048 available via http://dx.doi.org/ [Online 21 October 2005]


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