EHP 2008年1月号 サイエンス・セレクション
明らかな受容
ビスフェノールAの結合特性を明確にする


情報源: Environmental Health Perspectives Volume 116, Number 1, January 2008
Science Selections
Clear Reception
Elucidating the Binding Characteristics of Bisphenol A
http://www.ehponline.org/docs/2008/116-1/ss.html#clea

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2008年1月8日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehp/08_01_ehp_bpa_receptors.html


 ポリカーボネート・プラスチックやエポキシ樹脂製造に広く使用されているビスフェノールA(BPA)は正常な内分泌機能をかく乱することができる。BPA のエストロゲン受容体(ER)結合と相互作用が内因性ホルモン(訳注:ヒトが本来有するホルモン)のそれらより100〜1.000倍弱いので、研究者らはBPAはエストロゲン受容体以外に核受容体と作用するとの仮説を立てていた。最近の研究は、孤児核受容体族のひとつであるBPAのエストロゲン関連受容体γ(ERR-γ)−それらの天然リガンドは不明である−との相互作用を直接分析し、BPAがこの受容体に結合することを可能とする構造的要件を明確にした。[EHP 116:32?38; Okada et al.].

(訳注)九州大学の研究者らによる研究である。Hiroyuki Okada, Takatoshi Tokunaga, Xiaohui Liu, Sayaka Takayanagi, Ayami Matsushima, and Yasuyuki Shimohigashi
Laboratory of Structure-Function Biochemistry, Department of Chemistry, The Research-Education Centre of Risk Science, Faculty and Graduate School of Sciences, Kyushu University, Fukuoka, Japan

 同じ研究チームによる以前の研究は、BPAはエストロゲン関連受容体γ(ERR-γ)と強く結合することを示した。その研究はまた、BPAがERR-γの高い構造活性を維持することを示した。構造活性をもった受容体はあるリガンドがない時にはmolecular eventsを引き起こし、逆作用物質として知られる特定のリガンドはこれらの受容体を不活性化することができる。

 著者らは、ERR-γは発達中の哺乳類の脳に、そして成長後は脳、肺、及びその他の組織に、非常に強く発現することに言及することにより、この調査の重要性を強調している。このチームの未公開の研究結果は、胎盤中に最も高く発現することを示している。BPAがERR-γと結合すると、悪い時期に転写を引き起こすことにより受容体の役割に影響を及ぼすことがありえる。

 トリチウム(訳注:三重水素、放射性を持つ)で標識をつけたBPAを用いて、研究者らはBPAがいかに強くERR-γに結合するかを正確に特性化するために最初の飽和結合分析を実施した。彼らはまた、化学物質のどの構造的特性がERR-γ結合とその構造活性の維持のために重要であるかを特定するために、BPA類似物質及びフェノール誘導体を含むその他の産業化学物質の競争的結合分析を実施した。彼らは、ERR-γに対するBPAの特定の極端に高い結合親和性を発見した。BPAとその類似物質は受容体に結合する能力が変化し、フェノール誘導体はERR-γ媒介の内分泌かく乱物質としての潜在的な候補となることが新たに発見された。

 これらの発見は、報告されているBPA関連内分泌かく乱は、エストロゲン受容体(ER)よりもむしろエストロゲン関連受容体γ(ERR-γ)を介して実際に影響されるかどうかという疑問を直ちに提起する。さらに加えて、研究者らはERR-γの正常な生理学的役割及びBPAがこれらの役割に及ぼすやり方を確定することの必要性を強調している。ERR-γが胎児の脳や胎盤に強く発現するのなら、新生児への影響について更なる情報が特に緊急を要する。

ジュリア・バーネット (Julia R. Barrett)



化学物質問題市民研究会
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