EHP 2007年2月号 サイエンス・セレクション
過フッ素化合物(PFCs)の経路を示す
母乳と血清間の移動


情報源:Environmental Health Perspectives Volume 115, Number 2, February 2007
Science Selections
Mapping a Course for PFCs / Transfer Between Mothers' Milk and Serum
http://www.ehponline.org/docs/2007/115-2/ss.html#mapp

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年1月3日
このページへのリンク
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehp/07_02_ehp_PFCs_milk.html

 焦げ付き防止表面処理のような製品中に使われている様々な過フッ素化合物(PFCs)が人の血液と母乳のサンプル中に見い出されているが、よく分っていないことは、いかに効率的にこの化学物質がこれら二つの媒体の間を移動するかということである。この知見の欠如に目を向けて、スウェーデンの研究者らはこれらの化合物の授乳による移動をよりよく理解するために血清と母乳サンプル中のPFCsの濃度を比較した。[EHP 115: 226-230; Karrman et al.]

 以前のヒトと動物の研究は、母親はある種のPFCsを胎児と乳児に伝えることを示していた。過フッ素化合物であるパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びパーフルオロオクタン酸(PFOA)−これらはアジアから南極大陸まで生態系を汚染している−が実験室の動物における肝臓及び精巣がん、発達障害、免疫系障害、 神経内分泌影響、及び出生障害等の影響と関連があることを示しているので、これらの化合物がヒトの生命の最も早い段階に体内に入り込むことができるということは懸念を引き起こすことである。

 研究チームは出産後3週間の12人の女性から母乳と血清のサンプルを収集した。同チームはまた、この比較的小さなサンプルからのPFCレベルを1996年から2004年の間に年間25人から90人の女性から収集した母乳と比較した。

 同チームは今回の血清サンプルから8種類のPFCsと今回の母乳サンプルから5種類のPFCsを見出した。これらの母乳サンプルの全てはPFOS(平均濃度も最も高かった)及びパーフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)を含んでいた。これらのパターンとレベルは以前の母乳アンプルで検出されたものと類似していた。

 科学者らは母乳中PFC濃度は母親の血清中濃度の約1%であると計算した。彼らは、乳児が母親から受けるPFCsの推定レベル(約200ナノグラム/日)は相当な暴露であり、母乳中のPFCsの潜在的なハザードにについて更なる研究の実施を求めている。

 彼らはまた、血清中と母乳中のPFCレベルとの関連は特定の化合物に依存することを見い出した。これらの相違は必ずしも異なる化合物が血液全体から母乳に移動する効率を示すものではないかもしれない。それぞれの化合物が母乳全体よりも血漿中でいかに容易に濃縮するかというような変数が比率に影響を与えるかもしれない。

スコット・フィールド(Scott Fields)


訳注:参考資料
日本人の血液中パーフルオロオクタンスルホン酸濃度(益永茂樹、他)


化学物質問題市民研究会
トップページに戻る