2022年7月8日
過去から引き継ぐ化学物質が
世界中で卵を汚染する

研究者らは、発展途上国の汚染された場所の近くの卵のほぼ 90%で 
PCB 類とダイオキシン類を発見した。プラスチック廃棄物が主な原因である。
アシュレイ・ジェームス
情報源:Environmental Health News, July 8, 2022
Legacy chemicals are contaminating eggs around the world
Researchers find PCBs and dioxins in nearly 90% of eggs near contaminated sites
in developing nations. Plastic waste is a major culprit.
By Ashley James
https://www.ehn.org/pfas-air-pollution-2656977959.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2022年7月10日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_220708_
Legacy_chemicals_are_contaminating_eggs_around_the_world.html


 最近の世界的な研究では、発展途上国の汚染された場所からの放し飼い卵のサンプルのほぼ 90%が、有害汚染物質の欧州連合(EU)の最大食品制限を超えていることがわかった。プラスチック廃棄物が汚染の主な原因である。

 ダイオキシン類、及びPCB類 として知られているダイオキシン様ポリ塩化ビフェニルは、残留性有機汚染物質(POPs)であり、環境中に容易に拡散し、食物連鎖に蓄積し、生分解するのに何年もかかる。それらは、がん、ホルモンかく乱、脳発達の変化などの健康影響に関連している。世界的なストックホルム条約は 2004年以来、これらの種類の化学物質を規制しているが、この研究は、ダイオキシン類と PCB 類が依然として世界中の子どもたちと家族らに大きな健康上の脅威をもたらしていることを示している。新しい研究は、ほとんどの国が PCB の管理に失敗しており、2028年までに安全な PCB 管理というストックホルム条約の目標を達成するにはほど遠いという報告に続いて発表された。

 食品は、POPs のヒトへの最も一般的な暴露経路である。人々はしばしば、家禽類、魚介類、肉、牛乳、卵など脂肪分の多い食品を介して暴露することがよくある。卵は、環境への影響が最も少なく、最も安価な動物性タンパク質源であるため、世界中の貧しい人々にとって重要な栄養源である。それでも、同時に、鶏は汚染された土壌と灰を毎日食べ、POPs を卵に移すため、研究者らはそれらを最も敏感な暴露経路であると説明している。人々、特に子どもたちは、1日に1個の卵を食べるだけで、世界保健機関と EU によって設定された健康ベースの値を簡単に超える可能性がある。

 この研究では、研究者は、国際汚染物質廃絶ネットワーク(IPEN)とチェコの環境非営利団体である Arnika からの収集試料データを使用して、発展途上国の商業及び投棄場所の近くに住む放し飼いの鶏からの卵試料の 113グループを分析した。 ”我々は、世界 120か国以上のネットワークである IPEN で約20年間、卵の試料を収集し、重要地点を地図化してきした”と筆頭著者の、Arnikaの ディレクターであるジンドリッヒ・ぺトリックは EHN に語った。

 採取された卵の約 88%が、ダイオキシン類と PCB 類に関する EU の規制値を超えた。さらに、卵試料の 14%が EU の食品制限を 10倍以上超えた。汚染が最も高い試料は、ガーナの電子廃棄物場の近くで生産された卵からのもので、ダイオキシン類の EU 食品制限の 264倍であった。ひとりの子どもがこの場所からの卵をひとつ食べると、5年間の許容限度を超えるダイオキシン類にさらさたことになる。

プラスチックが火に油を注ぐ

 研究者らはプラスチックを燃焼した場所で、非常に高い卵汚染を発見した。たとえば、ケニアの電子廃棄物場では、全体的に卵試料は最も汚染されており、プラスチックは野焼きされている。バーナーの燃料としてプラスチックを使用しているインドネシアの豆腐工場からの試料も、非常に高い汚染レベルであった。また、ジャワ島にある二つの高レベルの汚染場所では、鶏はプラスッチック廃棄物の燃焼からの灰を食べていた。

 絶縁に使用される PVC などの塩素化合物を含む銅ケーブルは燃焼されると大量のダイオキシン類を放出する。銅や他の金属とともに PVC が燃えると、反応が速くなり、これらの毒素が大量に放出される。さらに、プラスチックを燃やすと、2,400 を超える他の有害化学物質類や、気候変動に寄与する温室効果ガスが放出される可能性がある。

 ストックホルム条約は、ダイオキシン類の発生を防ぐために PCV を他のプラスチック材に代替することを提案している。しかし、条約の 20年後の今日、顕著な代替品は導入されていない。 ぺトリックによると、これは塩素産業は強力なので、政策に影響を与えて PVC の代替を回避しているからである。

 ”これはプラスチックに関する新しい条約の重要な部分でなくてはならない。プラスチック廃棄による汚染について議題にしなければ、条約は間違いなく問題全体に対処することはできない”とペトリクは EHN に語った。

汚染卵を減らすための提案される解決策

著者はまた、以下を含むいくつかの解決策を提案する。
  • 全体的なプラスチックの使用を削減し、プラスチック廃棄物と電子廃棄物に輸出制限を課す。
  • 「汚染者負担」の原則を適用して、農民と影響を受けた人々を補償する。
  • 分析により、汚染制限の規制下にある土壌でも高度に汚染された卵が発見されたのだから、土壌汚染制限を強化する。
  • 発展途上国が、産業放出を管理し、汚染地域からの人間の暴露を監視するための能力を構築する。
  • POPs の廃棄物と汚染の管理と追跡の改善する。


化学物質問題市民研究会
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