EHN 2019年2月19日
プラスチックは、製造前から投棄後の長い期間まで、
我々の健康を脅かす − NGOs 報告書


プラスチックのライフサイクルのどの段階も人の健康にかなりのリスクを及ぼし、
世界中の大部分の人々がこのライフサイクルの複数段階でプラスチックに暴露している
ブライアン・ビエンコースキー

情報源:Environmental Health News, Feb 19, 2019
Plastic threatens our health from before production to long after it's thrown away: Report
"Every stage of the plastic lifecycle poses significant risks to human health,
and the majority of people worldwide are exposed to plastic at multiple stages of this lifecycle."
By Brian Bienkowski
https://www.ehn.org/phthalates-children-motor-skills-2628411444.html

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2019年2月23日
このページへのリンク
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_190219_Plastic_threatens_
our_health_from_before_production_to_long_after_its_thrown_away.html


 本日発表された環境関連 7団体の協力による報告書 Plastic & Health: The Hidden Costs of a Plastic Planet(プラスチックと健康:地球のプラスチック汚染の隠されたコスト)によれば、プラスチック汚染は、”人間の生命と人間の権利”への脅威であり、この問題を食い止めるために我々はその製造、使用及び廃棄の方法について徹底的に見直さなくてはならない。

 環境関連 7団体の協力の結果であるその報告書は、プラスチックの人々と地球への影響を検証するほとんどの試みが、製造、製品のテスト又はプラスチックの廃棄処分方法のような、ひとつの側面にだけ焦点を当てていることを見出した。しかし、今回の報告書の著者らは、プラスチックのライフサイクル全体見る必要があると述べている。それは、”ライフサイクルのそれぞれの段階は他の段階と相互に関係しあい、それらの全ては人間環境と人間の体と、複数の、そしてしばしば交錯する方法で、相互作用する”からである。

 報告書は、過去数年の間に国民の意識に上がった最新の話題からなっている。

 プラスチック汚染は、地球上広く行渡っており、研究が野生生物、我々の食物、そして我々自身に浸透していることを発見しており、我々のプラスチックの日常的使用がいかに我々の健康に影響を及ぼしているかについて新たな懸念をもたらしている。

 ”ライフサイクルを通じてプラスチックに関連する健康問題は、様々な種類のがん、糖尿病、いくつかの臓器機能不全、目、皮膚及びその他の感覚器官への影響、先天性障害、その他多くの影響を含む”と、報告書の著者の一人である国際環境法センター(CIEL)の上席弁護士デービッド・アゾレーは EHN へのメールの中で述べた。

 ”そして、それらは人の健康の犠牲(costs)についてだけであり、気候への影響、漁業や農地の生産性への影響については述べられていない”と、彼は付け加えた。

 その報告書に関与した他の団体は、 Earthworks, the Global Alliance for Incinerator Alternatives, Health Babies Bright Futures, IPEN, Texas Environmental Justice Advocacy Services, Upstream and Break Free From Plastic Movement である。

 アゾレーとその仲間らはプラスチックのライフサイクルのそれぞれの段階で及ぼされる独自の健康リスクを発見した。
  • プラスチック製造の原料として使用される化石燃料の抽出物は、大気と水の汚染、そして交通量の増大やパイプライン建設のような地域社会への他の直接的影響をもたらす。(今日製造されるプラスチックの 99%以上は化石燃料を使用して作られる。)

  • プラスチック溶剤と添加物の精製と製造は発がん性化合物や他の有害物質を放出するが、それらのあるものは、無色で、無臭か臭いが少ない傾向があるので、検出するのが難しい。加えて精製工場の作業者はこれらの化合物に高レベルで暴露している。

  • プラスチック製品や包装は、消費者の手にある時に、有害物質及び/又はプラスチッ粒子を吸入又は摂取をもたらす。

  • プラスチックの焼却は有害化合物を放出する。

  • プラスチックの分解は、人々、野生生物、土壌、及び水に入り込むことができるマイクロプラスチックをもたらす。

 アゾレーは、マイクロプラスチック自体の影響と関連する化学物質の影響を区別することが重要であると述べた。

 プラスチックの製造又は焼却時に生成される化学物質副産物に加えて、ビスフェノールA(BPA)、カドミウムや鉛のような金属、難燃剤、過フッ素化合物(PFAS)、フタル酸エステル類、そして他の化学物質のような有害な添加物がある。これらの多くは、我々のホルモンをかく乱する内分泌かく乱物質として知られており、また、がん、心臓疾患、肥満と糖尿病、先天的欠損症、そして生殖系、免疫系、及び神経系への影響を含む、様々な健康影響に関連している。

 ”赤ちゃんでさえ、これらの不必要で危険な化学物質で汚染されて生まれてくる”と、Safer Chemicals, Healthy Families(安全な化学物質、健康な家族)の Mind the Store (店番)キャンペーン・ディレクターのマイク・シャーデは声明の中で述べた。”プラスチック中のこれらのような化学物質の危険について我々が学んでいる時に、アメリカ連邦政府は重要な環境及び公衆健康の保護に逆行している”。

 大手の小売業者らは、プラスチックから有害化学物質をなくすよう努力し、有毒なプラスチックである塩ビ( PVC)のような懸念ある最悪のプラスチックを早急に廃絶するための行動をとらなくてはならない。

 次にプラスチックそのものに問題がある。我々の水、空気、食物、そして我々自身の体内に微小なプラスチック粒子が存在することを示す研究が増加している。これらの粒子は我々の体内に入り込んだ時に、我々の健康にどのような影響をもたらすのか、まだ完全にはわかっていない。

 ”これらの粒子が我々の食物中に広く存在するなら、マイクロプラスチックの摂取により生じる人の健康に対する深刻なリスクを理解し、防止するためのさらなる研究が優先されなくてはならないと、著者らは書いている。

 同報告書は、プラスチックの製造量は 1950年には 200万トンであったものが、2015年には 3億8,000万トンに増加したというデータを含んで、プラスチック製造に関する衝撃的な統計に言及している。

 現在、プラスチックの約 42%が包装用に設計されているが、ほとんどのプラスチック包装は使い捨て(single-use)用に設計されているので、特に問題がある。

 そして、すでに製造された、ものすごい量のプラスチックはどうしようもない。”既に製造された全てのプラスチックの概略 3分の2は環境中に放出され、ある形状で−海洋中では破片として、大気中及び農業土壌中ではマイクロ−又はナノ−粒子として、給水系ではマイクロファイバーとして、又は人間の体内中ではマイクロ粒子として−そこに留まっていると、著者らは書いた。

 プラスチックは現在、我々の大気、我々の土壌、我々の水、我々の体内に浸透しており、その結果は無視できないと、North America for international ocean advocacy organization(Oceana)の首席政策担当ジャクリーン・サビッツは述べた。

 ”使い捨てプラスチックの代替を使用してプラスチック使用を劇的に削減しなければ、どのようなことも十分でない。会社はもはや、リサイクルのような廃棄物管理ソリューションという看板の背後に隠れ続けることはできない”と彼女は付け加えた。

 近年、プラスチック禁止の機運が高まっている。例えば国連の 12月報告書は、世界中の国の66%がプラスチック袋と取り組むための規制を導入したことを示した。しかし同報告書は、わずか8カ国しかマイクロビーズを禁止していないことを示した。

 ”この報告書は、プラスチック製品のライフサイクルを統合するもっと包括的な規制アプローチ;製造から使用、そして、流通から廃棄まで;が調査されなくてはならないことを示唆している。各国は、毎年少なくとも 80億ドルのダメージを引き起こしているプラスチックの代替を真剣に検討しなくてはならない”と、12月報告書の主著者の一人である World Resources Institute (世界資源研究所)の研究員セリーヌ・サルセド−ラ ヴィーニャは国連の発見についての声明の中で述べた。

 一見難しそうに見える問題への取り組みに役立てるために、その新たな報告書はプラスチックのライフサイクル全体を見ること−有害添加化学物質へのもっと強い注目;プラスチック中に何があり、それらがどのように廃棄されるのかについてのより高い透明性;そしてどのような提案される解決においても、その中心に人権と人の健康を置くこと−を勧告している。

 著者らはそれでもまだ希望を持っている。いかに迅速に欧州連合が一連の使い捨てプラスチック製品を禁止したか、そして、ほんの一か月前にカリフォルニア州バークレーで使い捨てのプラスチック食品関連品の禁止案が通過したことなど、アゾレーはこの問題に対する最近のいくつかの進展を指摘した。

 ”我々は、環境問題に対する前代未聞の意識向上と動員のレベルを見ている”と彼は述べた。

 報告書全体はここで見ることができる。

 ウェブ上の関連記事:
 The environmental toll of plastics - EHN


化学物質問題市民研究会
トップページに戻る