EHN 2019年2月6日
PFAS とフタル酸エステル類への早い時期の暴露は
子どもたちの肺機能を妨げるかもしれない


ヨーロッパにおける1,000人以上の母親と子どもたちの研究は、
よく使用される化学物質を肺機能を低下と関連付ける
ブライアン・ビエンコースキー

情報源:Environmental Health News, Feb 6, 2019
PFAS and phthalate chemical exposure early in life
may hamper kids'lungs

Study of more than 1,000 mothers and children in Europe
links common chemicals to reduced lung function.
By Brian Bienkowski
https://www.ehn.org/pfas-and-phthalate-chemical-exposure-
early-in-life-may-hamper-kids-lungs-2628082014.html


訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2019年2月27日
このページへのリンク
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_190206_
PFAS_and_phthalate_chemical_exposure_early_in_life_may_hamper_kids_lungs.html


 本日発表された研究によれば、3種の異なる化学物質−パラベン、フタル酸エステル類、及びパーフルオロアルキル化合物(PFAS)に出生前及び出生後直ぐに暴露した子どもたちは 6歳時及び 12歳時に肺機能が低下している。

『The Lancet Planetary Health』に発表されたその研究は、ヨーロッパの 1,000 組以上の母親と子どもを検証し、子どもの出生前及び出生後のひとそろいの化学物質の暴露と影響を調べた最初のものである。妊婦や小さな子どもが常に暴露している身の回りのいくつかの化学物質は肺機能の低下をもたらすかも知れないことを示唆している。

 その発見は重要である。なぜなら、”より厳しい規制と消費者製品中のこれらの化学物質をラベル表示することで公衆に知らせる”ことにより、我々は”子どもの肺機能低下を防ぐことに役立てることができ、そのことは成人してからの慢性呼吸器系疾患の発症を防止する”であろうことを示すからである。子ども時代に肺機能が低いと、成人してから、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(訳注1)のような、しつこい肺疾患を病むことがある。

 研究者らは妊娠中に85暴露、早期子ども時代に125暴露を測定した。子どもたちは6歳及び12歳の時に肺機能テストを受けた。科学者らは2種類の PFAS 化学物質、5種類のフタル酸エステル類代謝化合物、1種類のパラベン及び金属銅が子どもたちの肺機能低下と関連していることを発見した。

 これらの化合物の全ては環境中に広がっている。PFAS は、調理器具中、撥水性衣料、防汚性繊維及び絨毯中に、防汚及び撥水化学物質として見いだされており、アメリカの給水系中での発見が増大している。フタル酸エステル類は身体手入れ製品、合成洗剤、おむつ、ビニル床材を含む多数の製品中に見いだされる。そしてエチルパラベンはプラスチック、溶剤、及びいくつかの身体手入れ用品中に見いだされる。

 それらの化学物質がどのように肺の発達に影響を及ぼすのか明確ではないが、以前の動物研究は、 PFAS 化合物が炎症を誘引し、気道の機能を変えることを見出していた。フタル酸エステル類は免疫系の発達に影響を与え、炎症を誘引することが以前に示された。

 その研究には限界があった。彼らはある化学物質との関係を見つけたが、彼らはその結果を複数のテストで調整した後、肺機能の低下と有意に関連付けられる暴露はひとつもなかった。本日発表されたその研究に関する論評もまた、その限界は”単一暴露は非常に小さな影響しか及ぼさないかもしれない”ことを示していると述べた。

 その論評はまた、使用されたデータは関連を見るために最大量であるが、それでも”相対的に小さい”と述べている。

 バルセロナ地球健康研究所(ISGlobal)の研究者であり、本研究の最終共著者であるマルティ−ヌ・ブライハイドは、彼らの”複数テスト修正は、その研究の中でテストされた多くの関連を考慮しており、統計的閾値の設定は保守的である 。この閾値を超えるのに十分に強い関連性があるものはなかったが、それらは単一暴露研究で通常適用される統計的に有意なレベルに間違いなく達していた”と、彼女は述べた。

 観察された影響は、”暴露が広範囲なので、主に集団レベルに関する懸念である”と彼女は述べた。

 ブライハイドは、出生前及び出生後の数十の化学物質暴露を調べるアプローチ自体が、子どもたちの健康に影響を与える汚染をどのように防止するかを解きほぐす新たな道を拓くと述べた。

 これは、”環境健康研究に新たなパラダイムを意味するものである”と声明の中で」彼女は述べた。

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訳注1  慢性閉塞性肺疾患/ウィキペディア
・・・慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、代表的な慢性呼吸器疾患の一つであり、肺胞の破壊や気道炎症が起き、緩徐進行性および不可逆的に息切れが生じる病気である。・・・COPDの主要な原因は喫煙であり(間接的・受動的曝露を含む)、少数は大気汚染や職業病などによる、有毒なガスや微粒子の吸入である。・・・2012年には世界で年間300万人がCOPDで死亡しており、これは世界における死因の6%を占める。死者の90%以上は中低所得国である。2030年までに、COPDは世界3位の死因になるであろうとWHOは予測している。



化学物質問題市民研究会
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