EHN 2015年11月12日
浴室除菌スプレーは繁殖力を弱めるように見える
ブライアン・ビエンコースキー(EHN)

情報源:Environmental Health News, November 12, 2015
Germ-killing bathroom sprays appear to weaken fertility
By Brian Bienkowski(EHN)
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/news/2015/nov/
cleaning-products-fertility-hormones-cleaners-health-1

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2015年11月24日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/
ehn_151112_Germ-killing_bathroom_sprays_appear_to_weaken_fertility.html


 新たな研究によれば、台所や浴室用の洗浄スプレー中の共通成分はマウスの繁殖力を弱めるが、その成分はまた人間にも同じ作用を及ぼす可能性がある。

 健康に関する研究者らは、有名ブランドである Lysol, Clorox 及び Simple Green のような洗浄スプレー中で微生物を殺すために使用されている四級アンモニウム化合物(Quaternary ammonium compounds)(訳注1)と呼ばれる特定の化学物質−について懸念を持っている。バージニア工科大学の科学者らの最近のラボ研究は、マウスが暴露するとオスは弱い精子能力、メスは排卵の減少のような不安定な影響を受けることを発見した。

 産業側研究者らはこの研究に反論して、連邦政府機関はその化学物質は安全であるとみなし、マウスは現実的ではない高いレベルで暴露したと述べた。

 本日、”Reproductive Toxicology”に発表された研究は、米国の不妊率が上昇してるように見える状況下で出たものである。増大する証拠は環境化学物質がある役割を演じていることを示唆している。

 ”我々がマウスに影響を見たなら、人間への影響についても懸念すべきである”と、カリフォルニア大学サンフランシスコ校教授で生殖健康と環境を専門とするトレーシ・ウッドラフは述べた。

 あなたが洗浄用に使用しなくても、暴露のリスクがある。四級アンモニウム化合物はまた、水泳プール防藻化学物質、材木処理、帯電防止柔軟剤、及び化粧品のあるもので使用されている。

 研究の中で、研究者らは二つの共通な化合物、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウムと塩化ジデシルジメチルアンモニウムを水に混ぜて飲ませてオスとメスのマウスに暴露させた。暴露したメスは繁殖適齢時期でも排卵が減少し発情時間が短くなる。

 暴露したオスは、精子密度が低い。またメスのマウスの卵子に向かう精子の運動が非力であった。

 この研究の上席著者でありバージニア工科大学の解剖学及び発生学の准教授であるテリー・フルベックは昨年、これらの化合物に暴露したマウスは、妊娠するのにより長い時間がかかり、妊娠が少なく、産仔数が少ないことを報告した。今回の研究は、以前の研究で特定されたオス毎及びメス毎の問題を解き明かすことを目的としていた。

 これらの化合物は、家庭、病院、レストラン、微生物やその他の汚染をきらう産業において非常に効果的であり、広く使用されている。

 人間の暴露を監視した研究はないが、これらの化合物が広く遍在しているので、”広範な人暴露をもたらしているようである”と、フルベックと同僚らは今回の研究で書いている。

 より高い暴露をする人々・・・清掃業やクリーニング用品会社で働く男性や女性など・・・が増えるであろうと、ウッドラフは述べた。

 クリーニング用品製造業界を代表する米クリーニング協会の副代表で環境安全担当のポール・デレオは、この研究は”正当性のない懸念を”を提起するものだと述べた。

 彼は、米環境保護庁及び米食品医薬品局の両方がこれらの化学物質をテストし、それらは安全であるとみなしたことを指摘した。

 ”研究者らはまた、この研究で使用されたマウスに(EPA 基準に基づく)安全使用レベルと考えられるものより数百倍高いレベルの成分を過剰投与した”とデレオは eメールの中で述べた。

 消費者特殊製品協会(Consumer Specialty Product Association)を代表するタスクフォースは、この研究の結論は”30年以上にわたる現実世界の経験と科学的精密調査を無視している”と付け加えつつ、デレオの批判に eメールの中で賛同した。

 マウスの中のあるものは非常に高いレベルで投与されたことをフルベックは認めた。しかし低用量で投与されたオスのマウスには生殖問題があると彼女は述べた。

 さらに加えて、この化合物を全く投与されず、ケージと床を洗浄するためにこの化合物が用いられた場所に置かれたオスのマウスのあるものは精子に影響を受けていたと、彼女は述べた。

 適切に機能するホルモンは生殖にとって極めて重要であり、多くの研究が最近、ホルモンを擬態し変更する内分泌かく乱化学物質に焦点を当てている。

 なぜこれらの洗浄用化学物質がマウスに問題を引き起こしているのかを推測するのは時期早尚であると、フルベックは述べた。

 しかし、メスのマウスの”発情期”サイクル数の減少のような影響のあるものは、”ホルモンによって引き起こされる”内分泌かく乱の疑いをもたらすと、彼女は述べた。

 不妊には多くの潜在的な原因があり、個体数傾向の追跡は難しい。しかし、フルベックが研究の中で言及するように、2001年から2010年の間にアメリカの人工授精の比率は37%増加した。

 一方、過去70年間に世界中で精子数は著しく減少した。

 産科医であり、米国産婦人科医師会議(American Congress of Obstetricians and Gynecologists)の元議長ジーン・コンリー博士は、、ほとんどの医師らは環境に放出される前に、化学物質に関していかにわずかな研究しか実施されていないかについて理解していないと述べた(訳注2)。これらの研究が考慮されるべきであると、彼女は述べた。

 ”我々は、警告と知見の間の紙一重を歩いている”と、コンリーは述べた。”私は女性たちに健康なものを食べ、健康な生活様式で暮らし、クリーニングは、おそらく酢と水のような何かを使って、なるべく単純にするようお伝えする”


訳注1:4級アンモニウム化合物
4級アンモニウム化合物(陽イオン表面活性剤)被ばくによる健康への危険に関する評価および空中許容量の評価

訳注2:関連情報




化学物質問題市民研究会
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