EHN 2014年9月26日
既に廃止されたスコッチガード化学物質で
魚はまだ汚染されている

ブライアン・ビエンコスキー(EHN スタッフライター)

情報源:Environmental Health News, September 26, 2014
Fish still contaminated with phased-out Scotchgard chemical
By Brian Bienkowski, Staff Writer, Environmental Health News
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/news/2014/sep/pfos-in-waters

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2014年10月16日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/
ehn_140926_Fish_still_contaminated_with_PFOS.html


 かつてスコッチガード製造に使用されていた残留性の高い化学物質が、十数年前に廃止されたにもかかわらず、いまだにアメリカの河川や五大湖にいるほとんどの魚を汚染していることを新たな連邦政府の研究が示している。

 米・環境保護局の研究者らは、五大湖の5つの湖の沿岸及び162の河川の73%で採取した157尾の魚全てにペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)を発見した。

 淡水魚におけるこの種の最大の研究は、バス、マス、淡水性スズキ及びナマズの摂食が、釣り人やその家族の主要な暴露源であり得ることを示唆している。この化学物質は、世界中で野生生物、人間、及び水系に広く残留している。

 ”このことは、その製造は10年以上も前に中止されたのに、PFOSがまだ顕著に残留していることを示している”と、この研究には関与していないデューク大学の科学者クレイグ・ブットは述べた。

 PFOS とその他の過フッ素化合物は、ポットや鍋、布、紙、絨毯などの耐油/耐水コーティングや泡消火薬剤に使用される。

 PFOS の主要な製造者である3M社は、科学者らが PFOS は水、野生生物、そして人間に蓄積することを発見した後、2002年に自主的にその製造を中止した。

 それにもかかわらず、”我々がテストした全ての人々が体内にあるレベルで PFOS を持っていた”と、ブットは述べた。この化合物は、光でも分解せず、酸化しない。いったん環境中に入り込めば、どうすることもできない。

 ほとんどの健康研究は、PFOS により飲料水が汚染された地域社会に焦点を当てている。しかし、人々は多くの経路で暴露していると、ウェスト・バージニア大学の教授で疫学者のサラ・クノックスは述べた。”暴露経路は複数あり、食品容器のコーティング、防汚スプレー、防火加工、そして焦げ付き防止調理なべなどである”と彼女は述べた。

 EPAは、”食品の汚染は、PFOS と PFOA への人間の汚染の90%以上の原因かも知れなず、魚が PFOS の主要暴露源かもしれない”と見積もっている

 ”食物連鎖の中で上位である魚ほど、それだけ有害物質の汚染が大きいことに留意すべきである”とノックスは述べた。

 河川では、25魚種がテストされ、コクチ及びオオクチバスとブチナマズが最もいたる所にいた。五大湖では、18魚種がテストされ、ほとんどがレークトラウト(湖のマス)、コクチバス、そして淡水性のスズキであった。この研究は河川名を明示していないが、その場所はほとんどがミシシッピー川の東岸であった。

 内分泌かく乱物質であることが疑われる PFOS は、低出生体重子どもの免疫系機能の低減妊娠中の高血圧と関連付けられている。

 さらに、飲料水がデュポンの工場により汚染されたウェストバージニア州の約47,000人の研究は、PFOS を、肝臓機能の変化、女性の早期閉経、及び高コレストロールに関連付けている。ラットとマウスの動物研究もまた、PFOS が、発達障害、生殖障害及び免疫系障害を示している。

 もうひとつの過フッ素化合物である PFOA は、五大湖で採取したサンプルで19尾にだけ発見され、河川のサンプルからは発見されなかった。PFOA は、心臓疾患子どもの免疫系の低下、及びがんと関連付けられている。

 再三にわたる要求にもかかわらず、EPA 当局は、この研究を実施した科学者らへのインタビューを許可しなかった。

 測定された13の化合物のうち、PFOS は最も高いレベルで検出された。都市の川の魚からは、PFOS は 4.8〜127 ppb の範囲で、五大湖の魚からは、1.9〜80 ppb の範囲で測定された。

 EPA は PFOS の”安全用量”を確立していない。しかしミネソタ州保健当局は、もし PFOS の濃度が 40〜200 ppb の範囲なら魚の食事は週1回だけ、そして 200〜800 ppb の範囲なら月1回だけとするよう勧告している。アメリカの河川からの魚のサンプルの約11%、及び五大湖からのサンプルの9%が40 ppb を越えていた。

 五大湖の汚染を研究しているアイオワ大学の教授ケリ・ホーンバックルは、研究者らは廃水処理施設が過フッ素化合物(PFCs)の汚染源ではないかと疑っている。

 3M社の PFOS と PFOA の廃止後に新たな化合物が出現したが、同社は2008年にそれらを排除した。3M社は、ペルフルオロブタンスルホニルフルオリド(PFBS)を安全な代替物質として売り込んだが、この化合物は河川や五大湖のサンプル魚からは全く見つからなかった。繰り返しのインタビューの要請に対し、3M社は何も答えなかった。

 米国立野生生物連盟(National Wildlife Federation, NWF)の科学者マイケル・ムレイは、五大湖に出現している汚染物質に対応するために重要なことは、手遅れにならないうち、今上流を見ることであると述べた。

 ”我々は、5年で過フッ素化合物の次のラウンドに付き合いたくない”とムレイは述べた。”重要なことは汚染防止であり、グリーン・ケミストリのようなやり方であり、最初の段階でこれらの化学物質の必要性を削減することである。一度それらがここ(五大湖)に来れば、それらはもうどこにも行かないからである”。



化学物質問題市民研究会
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