EHN 2013年11月27日
ディーゼル排ガスは肺がん死亡の6%の原因である
解説:ブライアン・ビエンコスキー

情報源:Environmental Health News, Nov 27, 2013
Diesel responsible for 6 percent of lung cancer deaths, study says.
Synopsis by Brian Bienkowski
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/2013/11/diesel-lung-cancer-deaths/

オリジナル:Vermeulen R, DT Silverman, E Garshick, J Vlaanderen, L Portengen, K Steenland. Exposure-response estimates for diesel engine exhaust and lung cancer mortality based on data from three occupational cohorts. Environmental Health Perspectives. 2013. http://ehp.niehs.nih.gov/1306880/

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2013年12月15日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_131127_Diesel_lung_cancer.html


 新たな研究によれば、アメリカとイギリスにおける肺がん死亡者の推定6%−年間11,000人がディーゼルの排ガスが原因かもしれない。

 近年、ディーゼル・エンジンの排出基準は厳しくなってきたが、その排ガスは、トラック運転士、鉱山労働者、鉄道労働者の肺がん死亡に重要な役割を果たしていると著者らは書いている。さらに、ディーゼルの排ガスは 込み合った都市や高速道路近くに住む人々にも大きながんの脅威を及ぼしている。

 労働を通じてディーゼルの排ガスに曝露しているトラック運転士と鉱山労働者は、米国職業基準の下に許容できるとみなされるリスクより70倍近く高い致命的な肺がんリスクに直面している。科学者らは、これらの労働者の生涯のリスクは暴露している1万人の労働者当たり689人が余分な肺がんにより死亡すると計算した。これと比較すると、労働者1,000人当たり1人のがん死亡が連邦政府の職場基準に用いられている。

 さらにこの調査によれば、都市地域の人々は、米国健康基準に用いられている許容リスクより10倍高い肺がんの生涯リスクに直面している。米国の高速道路の近くで一般的に見いだされる量のディーゼル排ガスに暴露している1万人当たり推定21人が、生涯に肺がんで死ぬリスクにある。それに対して、大気汚染基準で使用されているのは1万人当たり1人の死亡というリスクである。

 その計算に至るために、エモリー大学といくつかの他の米国及び欧州の研究所の研究者らは米国と英国の国家死亡統計とともに、労働者に関する以前の3つの調査−トラック運転士のものがふたつ、非鉄金属労働者のものがひとつ−からのデータを使用した。

 彼らは、米国と英国における肺がん死亡の4.8%はディーゼル排ガスへの職業的暴露に起因し、一方1.3%がこの排ガスの環境的暴露に起因すると見積もった。[編集者注、11/27/2013:パーセンテージの記述の誤りを訂正。]

 ”現在そのようなレベルで、また過去には恐らくもっと高いレベルで曝露している数百万の労働者にとって、現在及び将来の肺がん罹患への影響は相当なものでああろう”と著者らは述べている”。

 研究者らは、彼らの見積もりは、”正確さからは程遠く、広範な仮定に基づいている”と述べている。しかし彼らは、その発見は過去の発見と”一般的に一貫性がある”と述べた。喫煙のような他の要因は考慮されていない。彼らは、喫煙はディーゼル排ガスの影響を変えないという仮定を採用した。

 世界保健機関は昨年、労働者らの健康データを見直して、”ディーゼル排ガスは人に発がん性がある(Group 1)”と結論付けた

 ディーゼル排ガスは米国と欧州では新たなエンジン基準が採用されてから過去数年間で著しく低減している。 米環境保護庁の報告書によれば、米国では、5万以上のディーゼル・エンジンが2008年から2010年の間に整備されるか廃止された。同報告書によれば、約23万トンの煤とスモッグの原因となる汚染物質が除去された。

 しかし、バスとトラックはクリーンな技術を大幅に採用しているが、農業機械や建設機械のようなオフロード用のエンジンについては、もっと時間がかかる。

 


化学物質問題市民研究会
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