EHN 2013年10月31日
よく使われている殺虫剤が
子どもの行動障害に関係しているかもしれない

解説:リンゼイ・コンケル

情報源:Environmental Health News, October 31, 2013
Common insecticides may be linked to kids' behavior problems
Synopsis by Lindsey Konkel
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/2013/10/insecticides-kids-behavior/

オリジナル:Oulhote Y, MF Bouchard. 2013.
Urinary metabolites of organophosphate and pyrethroid pesticides and behavioral problems in Canadian children.
Environmental Health Perspectives. http://dx.doi.org/10.1289/ehp.1306667

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2013年11月2日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_131031_pyrethroid_behavior_problems.html


 ケベックの研究者らによる新たな研究によれば、家庭で一般的に使われている殺虫剤が子どもの行動障害に関係しているかもしれない。

 この研究は、ノミ駆除剤(flea bombs)やゴキブリ退治スプレーを含んで3,500種以上の製品中で使用されているピレスロイドの潜在的な人間への健康影響を調査した最初の研究のひとつである。

 この発見は、子どもの脳の発達へのリスクが知られている他の殺虫剤の代替として使用されているこの化合物の安全性に何らかの疑問を提起する。神経系を阻害することにより昆虫を殺すピレスロイドへの曝露は、家庭や学校、自治体、農場で使用されているので、拡大している。

 この研究で、カナダの6歳から11歳までの779人の子どもたちの尿がテストされ、彼らの両親はそれぞれの子どもたちの行動についての質問に回答した。

 97%の子どもたちは、ピレスロイド分解物の痕跡を持っており、91%が、もうひとつの種類の農薬である有機リンの痕跡を持っていた。

 ピレスロイド分解生成物ひとつの cis-DCCA の尿中のレベルの10倍増は、両親が報告した注意力欠陥や多動のような行動に関する問題点のスコアーの倍増と関連していた。

 他の分解性生物である trans-DCCA もまた、多くの行動問題と関連していたが、その関連性は統計的に有意ではなかった、すなわち、その発見は偶然であったかもしれない。分解生成物trans-DCCA 及び cis-DCCA は、あるピレスロイド、すなわちペルメトリンに特有であった。

 行動スコアーと有機リン分解生成物との間に関連性は見られなかった。

 研究者らは、ピレスロイドに関連する神経行動学的影響を調査している研究は他にほとんどないと述べている。

 近年ピレスロイドの使用は劇的に増えているが、その理由は、子どもたちへの健康影響についての懸念があるので、現在、廃止されつつある有機リン系農薬の代わりに使用されているからである。有機リンへの母親の曝露は、神経発達の遅れ、IQスコアーの低下、及び注意力欠陥に関連している。

 ペルメトリンとその他のピレスロイドは、除虫菊中に天然に存在する化合物の合成物なので、有機リンよりも安全であると広く喧伝されてきた。

   しかし、ペルメトリンの子どもへの潜在的な健康影響に関するデータは非常に少ない。ニューヨーク市の348組の母子に関するひとつの調査が、胎内でピレスロイドに曝露した幼児に発達スコアの低下を見出した。また若い実験動物の研究で、あるピレスロイドが低レベルで神経系の発達に影響を及ぼすことを示した。

 ”子どもたちの脳は神経毒素に感受性が高く、また子どもたちはしばしば指を口持っていき、外で遊ぶことが多いので、子どもたちはには農薬の毒性についての大きなリスクがある”と、この研究の著者らは書いている。

 この研究のひとつの限界は、行動障害について高いスコアーを示した子どもたちの数が少なかった、すなわち、わずか69人(全サンプル数の6.8%)ということである。農薬はすぐに体外に代謝されるかもしれないので、1回だけの尿検査では子どもたちの曝露を正確に表していないかもしれない。

 この研究はピレスロイドが行動障害を引き起こすことを証明したわけではないが、著者らは彼らの発見は、ピレスロイドの子どもへの潜在的な影響を決定するために、もっと多くの研究が必要であることを示唆していると述べた。

 


化学物質問題市民研究会
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