EHN 2013年6月19日
BPAは口の中で吸収される
これでBPAの高い血中レベルを説明できる

解説:ジョン・ピーターソン・マイヤーズ

情報源:Environmental Health News, June 19, 2013
BPA is absorbed in the mouth; could explain high blood levels
Synopsis by John Peterson Myers
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/2013/06/
2013-0614-bpa-absorbed-in-the-mouth/


オリジナル:Gayrard, V, MZ Lacroix, SH Collet, C Viguie, A Bosquet-Melou,
P-L Toutain and N Picard. 2013.
High Bioavailability of Bisphenol A from Sublingual Exposure.
Environmental Health Perspectives online 12 June 2013.
http://dx.doi.org/10.1289/ehp.1206339

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2013年7月2日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_130619_BPA_is_absorbed_in_the_mouth.html


 犬を使った新たな実験が、ビスフェノールAは、口の中で、ニトログリセリン(訳注:心臓発作用)のように舌下で吸収され、直接血流中に入ることを発見した。これは、腸で吸収してから肝臓で解毒するという経路を迂回するものである。この結果は、生物学的に活性なBPAが、健康影響の原因となる可能性があり、BPAが大きなリスクを人健康に及ぼすかもしれないことを示唆している。

 フランスの科学者らは、ビスフェノールAが舌下から体内に入り込むことができる新たな経路を発見した。ビスフェノールAは、この経路を通ることにより、不活性な形態に変換する肝臓中の代謝経路を迂回して、活性なまま血液に到達し、脆弱な組織に付着する。この発見は、なぜ活性なBPAが予想より高いレベルで血液中に存在することが報告されるのかについて、可能性ある説明を与えるものである。

 BPAは、ポリカーボネート・プラスチックとエポキシ樹脂を製造するために用いられる。それは硬質プラスチック、CD、メガネのレンズ、割れても粉々にならないガラス様の特性を持つ同様な製品中で見いだすことができる。レジンは、ほとんどの食品缶の内面のコーティングに用いられる。

 実験動物又はヒトにおいて広範な健康影響がBPAへの暴露に関連しており、それらには心臓疾患、糖尿病、前立腺障害、乳房腫瘍、いくつかのタイプの神経系疾患がある。国家毒性計画は、BPAは子どもの神経行動的発達に影響を与える懸念があると結論付けた。

 この新たな研究の著者らは、舌下吸収(sublingual absorption)と呼ばれる舌下でのBPAへの暴露は、ほとんど完全に組織と相互反応することができることを初めて実証したと述べている。

 産業側を代表するある科学者や米食品医薬品局の役人のある者は、肝臓のBPA脱活性化能力は非常に効果的なので、非常に微量な活性BPAだけが血液中に入り込むので、有害影響を及ぼす可能性はないと述べていた。この仮定は、ゼラチンのカプセルを使用して(ヒトの場合)、又はチューブを使用して直接胃に(げっ歯類の場合)、口を経由せずにBPAを送り込むというヒトとげっ歯類のこれまでの実験に基づくものであった。

 舌下吸収は医薬品が血中に入る一般駅な経路である。例えば、ニトログリセリンは、心臓発作の救急目的で舌下から投与される。

 フランス政府といくつかのフランスの大学により実施されたこの研究は、犬を実験対象として使用したが、それは犬の口の骨ばった構造が、げっ歯類よりヒトの口に似ているからである。犬は医薬品の舌下吸収についての研究でヒトの代用としてよく用いられている。

 科学者らは、BPAは、舌下吸収経路を通じて”効果的に、そして非常に急速に吸収される”ことができ、この経路は、消化管からのBPA 吸収で知られているより、”はるかに高いBPA内部暴露をもたらすことができる”と結論付けている。

 これらの観察は、現在行われているBPAの安全性についての重要な議論のひとつを解決するかもしれない。24以上のヒト研究が、検出可能な量で、あるものは相対的に高い量で、活性BPAをを血中に見出したことを報告している。しかし、BPAがいかに急速に肝臓で代謝されるかについての研究が、血液中には測定可能な量のBPAは存在しないことを示していたので、これらの研究には克服すべき難題であった。ある科学者らは、BPAが血液中に存在すると報告する研究は、欠陥があり、血液を得るために用いられた装置がBPAを含んおり、サンプルを汚染した可能性が最も高いので、無視されるべきであると主張してきた。今回の発見は、この主張に対する新たな説明を提供するものである。

 この研究はまた、実験動物の胃に化学物質を投与するために胃チューブを使用することについて、広範な問題を提起する。これは、マウスに実際に投与される化学物質の量を制御できる優れた手法なので、毒性学で用いられている一般的な手法である。しかし、もし舌下吸収が一般的な投与経路になるなら、 莫大なコストをかけた今までの非常に多数の実験が、ヒトへの化学物質リスクについて誤ったデータを提供してきたことになる。

 


化学物質問題市民研究会
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