EHN 2013年6月6日
水銀は、中国の新生児の
神経管欠損症に関連する


情報源:Environmental Health News, June 6, 2013
Mercury linked to neural tube defects in Chinese newborns
Synopsis by Cheryl Stein and Wendy Hessler
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/2012/12/
2013-0522-mercury-pregnancy-higher-risk-neural-tube-defects/


オリジナル:Jin L, Z Le, Z Li, J-M Liu, R Ye and A Ren.
Placental concentrations of mercury, lead, cadmium, and arsenic and the risk of neural tube defects in a Chinese population.
Reproductive Toxicology http://dx.doi.org/10.1016/j.reprotox.2012.10.015
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0890623812003188

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2013年6月26日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_130606_Hg_neura_tube_defects_in_China.html


 中国で実施された調査によれば、二つの重度の神経管欠損症のいづれかをもつ赤ちゃんは、胎盤中の水銀レベルが欠損症のない赤ちゃんより高い。 脊髄披裂(二分脊椎)と無脳症 の障害を持った小児は、平均水銀レベルより12倍ほど高い水銀レベルをもっているらしかった。調査された地域は、神経管欠損症の有病率が高く、また、主要な水銀汚染減である石炭炊きプラントからの汚染が激しい田舎(rural)地域であった。しかしこの地域の赤ちゃんは通常ではない高い水銀暴露をしているわけではなかった。

何をしたか?

   この人間ケースコントロール研究で科学者らは、神経管欠損症をもって生まれた赤ちゃんは、水銀、鉛、ヒ素、カドミウムへの出生前暴露が神経管欠損症ではない赤ちゃんより高かったかどうかを検証した。

 研究者らは、中国北部の山西省(Shanxi Province)の田舎地域から、無脳症(anencephaly)の赤ちゃん36人、脊椎披裂症(spina bifida)の赤ちゃん44人、そしてコントロールとしての健康な赤ちゃん50人を調査対象とした。

 出産時又は妊娠中絶時、科学者らは、胎盤中の総水銀、鉛、ヒ素、カドミウムを測定した。人口統計学的情報が、出産後数週間以内の面接で収集された。

 この地域は、出生障害をもって生まれた赤ちゃんに関する情報を定期的に収集する健康調査システムを持っている。山西省のこの地域は、神経管欠損症の有病率が高く、また石炭燃焼による汚染がひどい地域である。

何がわかったか?

 、無脳症(anencephaly)又は脊椎披裂症(spina bifida)の赤ちゃんは、これらの神経管欠損症のない赤ちゃんに比べて胎盤中の水銀レベルが高かった。

 神経管欠損症の赤ちゃんの水銀レベル中央値は2.25ナノグラム/グラム(ng/g)、無脳症:2.19 ng/g、脊椎披裂症:2.44 ng/g であった。コントロールの赤ちゃんの水銀濃度中央値は1.19 ng/g であった。

 以前の出生障害履歴や妊娠初期の発熱などのその他のリスク要素を考慮した後、神経管欠損症をもつ赤ちゃんは、障害のない赤ちゃんに比べて、平均水銀レベルが12倍高いようであった。

 神経管欠損症の診断と他の金属のレベルとの関係はほとんどなかった。

 両方の出生障害の症例と障害のないコントロールについて、水銀汚染が知られていない地域の他の調査と比べると、胎盤中の水銀レベルは、ほぼ平均であった。


何を意味するか?

 新生児の神経管欠損症は、障害のない赤ちゃんに比べて、胎盤中の高い水銀レベルと関連があった。

 中国の調査は、水銀濃度が高くなると無脳症と脊椎披裂症のリスクが高まることを発見した。

 この調査は、動物の調査で以前に観察された金属暴露と神経管欠損症との関連と合致する。それらの調査では、発達初期におけるメチル水銀への暴露はマウスにおける神経管欠損症のリスクが増大し、ゼブラフィッシュにおける神経管細胞の成長が減少した。

 この中国の集団で測定された平均水銀レベルは、以前の調査で測定された範囲の中にあった。それらは水銀汚染が知られていない地域のレベルと同等であった。濃度は水銀汚染源が知られている地域での以前のヒト調査で報告されたレベルよりも低かった。

 しかし、この調査はいくつかの限界がある。第一に、著者らは水銀暴露経路を探さなかった。一般的に人間の暴露は、食物、水、及び空気を通じて生じる。第二に、彼らはより有害なメチル水銀ではなく総水銀レベルだけを報告した。

 神経管は、しばしば女性が妊娠したことを知る前の、非常に早い時期に発達するので、神経管欠損症の研究は難しい。  

 


化学物質問題市民研究会
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