EHN 2012年7月19日
1980〜1990年代の羊水から よく使用されていた化学物質が検出された 情報源:Environmental Health News, Julu 19, 2012 Common chemicals detected in amniotic fluid from 1980s and 1990s Synopsis by Cheryl Stein http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/2012/06/ 2012-0718-phthalates-30-year-old-amniotic-fluid/ オリジナル情報: Jensen, MS, B Norgaard-Pedersen, G Toft, DM Hougaard, JP Bonde, A Cohen, AM Thulstrup, R Ivell, R Anand-Ivell, CH Lindh and BAG Jonsson. 2012. Phthalates and perfluorooctanesulfonic acid in human amniotic fluid: temporal trends and timing of amniocentesis in pregnancy. Environmental Health Perspectives dx.doi.org/10.1289/ehp.1104522 http://ehp03.niehs.nih.gov/article/info%3Adoi%2F10.1289%2Fehp.1104522 訳:安間 武(化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2012年8月7日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn /ehn_120719_DEHP_DiNP_PFOS_in_amniotic_fluid.html 数十年前の羊水を測定しているデンマークの科学者らは、3つの代表的な汚染物質をほとんど全てサンプルから検出した。この研究は今日の成人又は10代の人々が子宮でどのような化学物質に曝露していたかを示すひとつの事例である。この結果は、フタル酸エステル類とPFOSへの今日の胎児の曝露を示す最良の証拠を提供するものである。 20年〜30年前に妊婦から収集した羊水の検査で研究者らは、3つのよく使用されている化学物質、フタル酸エステル類DEHP と DiNP、及び防汚化学物質PFOSを、検査されたほとんど全ての羊水サンプルから低レベルで検出した。 この研究は、子宮中の汚染物質を直接測定している点が重要である。それは、羊水中でPFOSを測定したことを初めて発表した研究であり、フタル酸エステル類を測定したかず少ない研究のひとつである。 これらの二つのフタル酸エステル類又はPFOSへの出生前の曝露が子どもの発達に有害影響を及ぼすかのか、又は長期間持続する影響があるのかどうかについてはまだ、確定的な答えはない。 母親の血液や尿中で発見される化学物質のうち胎盤を通過して胎児に入り込むのはわずかなので、羊水は胎児が何に曝露しているかを知る良い指標かもしれない。もっと正確に曝露を調べる能力が健康影響を観察している研究にとって重要である。 DEHP、DiNP、PFOS は、妊婦の尿及び血液中、及び新生児のへその緒の血液中で測定されているが、これらの化学物質の人の羊水中での存在に関してはほとんど情報がない。 フタル酸エステル類 DEHP と DiNP は、塩化ビニルを柔軟にするために可塑剤として添加される(訳注1)。これらの化学物質は柔軟プラスチック製のおもちゃ、医療用チューブ、壁張り材、床タイル、シャワーカーテン、食品容器のような製品で使用されている。人々は、主に、摂食、接触、又は呼吸を通じてそれらに曝露する。フタル酸エステル類が一度体内に入り込むと、それらは速やかに代謝して、一日以内に尿中に排泄される。 動物実験では、DEHPは肝臓がんに関連しており、生殖系への影響もあるかもしれない。最近のある研究は出生前曝露が男の新生児の鈍い反射神経との関連を示している。子どもの健康を懸念して、アメリカとヨーロッパは、 子どものおもちゃや製品でのDEHP 及びその他のフタル酸エステル類の使用、及び 口で噛めるような子どもの小さなおもちゃでの DiNP の使用を禁止した(訳注2)。 PFOS (訳注3)は、じゅうたん、布製品、紙製品での防汚コーティングに使用されている。人々は、紙容器を通じて汚染された食品を食べたり、汚染された部屋のホコリを吸い込んでPFOSに曝露する。PFOSは血液中で数年間、体内を循環する。PFOSは、発達、代謝及び生殖にかかわる甲状腺機能と重要な甲状腺ホルモンに影響を及ぼす。 この研究では、研究者等は、1980年から1996年の間に妊娠したデンマークの女性300人の保管されていた羊水のサンプルを分析した。彼等は、7種のフタル酸エステル類と過フッ素化合物PFOSを測定した。羊水穿刺(せんし) は妊娠10週から30週の間に実施された。 ひとつのDEHPマーカー、ひとつの DiNP マーカー及びPFOSが羊水サンプルの 96 から 99 %から検出された。 妊娠の後期に羊水穿刺(せんし) が実施されたものほど、羊水中の各化学物質のレベルは高かった。さらに、羊水サンプルが収集されてから16年の間(訳注:1980年から1996年)に、DEHP 代謝レベルは減少し、DiNP 代謝はレベルは増加しているように見える。 この期間でのPFOSの変化は少なく、産業でのこの期間のPFOSの使用は増大していたので、このことは興味深いことである。化学物質のレベルは母親の年齢とも妊娠回数とも関連がないように見えた。 訳注1: 可塑剤/ウイキペディア 訳注2: 可塑剤をめぐる最近の動向 (塩ビ工業・環境協会) 訳注3: PFOS汚染について/大阪府立公衆衛生研究所 |