EHN 2012年1月12日
デュポンの工場近くの子どもたちは
母親よりも多くPFOAに曝露している


情報源:Environmental Health News, Jan 25, 2012
Children near DuPont plant exposed to more PFOA than moms
By Marla Cone, Environmental Health News
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/news/2012/children-have-more-pfoa-than-moms

オリジナル情報:
Environmental Health Perpetive Online: 23 January 2012
Research Article
Relationships of Perfluorooctanoate and Perfluorooctane Sulfonate Serum Concentrations Between Child-Mother Pairs in a Population with Perfluorooctanoate Exposure from Drinking Water
Debapriya Mondal, Maria-Jose Lopez-Espinosa, Ben Armstrong, Cheryl R. Stein, Tony Fletcher
http://ehp03.niehs.nih.gov/article/fetchArticle.action?articleURI=info%3Adoi%2F10.1289%2Fehp.1104538

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2012年1月31日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_120125_Children_DuPont_PFOA.html


 新たに発表された調査結果によれば、ウェスト・バージニア州にあるデュポンの工場近くに住む子どもたちは、彼等の母親より高いレベルで、ある工業化学物質に曝露している。

 母親からの母乳とともに飲料水からも曝露した5歳以下の子どもたちは、この化学物質の血中レベルが母親より44%高い。この調査は、デュポンの化学物質がオハイオ中部渓谷の人々を病気にするかどうかを調べるために7年間費やしてきた3人の科学者からなる裁判所認定委員会によって実施された。

 この化学物質はペルフルオロオクタン酸(PFOA、又はC8)であり、それはテフロン焦げ付き防止ナベ、防水衣料、食品容器、その他の製品に使用されている。

 世界中のほとんど全ての人々がこの過フッ素(ペルフルオロ)化合物類の痕跡を体内に持っている。しかし、デュポンの工場の近くに住む人々は、アメリカ人の平均より7倍という異常に高いレベルのPFOAを体内に持っているが、それはこの化学物質が1951年以来この工場で使用されており、飲料水供給系を汚染してきたからである。

 科学者らは、工場の近くの共同体でPFOAを含むことが知られている井戸水を少なくとも1年以上飲んだ 4,943 組の子どもと母親を調べた。

 ”約12歳までの子どもたちは、この化学物質を母親より高い濃度で体内に持っているように見える。これは恐らく飲料水だけでなく、母親の胎内及び母乳を通じて曝露しているからであろう”と、ジャーナル『環境健康展望』に月曜日(1月23日)に発表された記事の中で、衛生と熱帯医療ロンドン校の研究チームは書いている。主著者は裁判所認定委員会の委員であるトニー・フレクチャーである。

 関連化学物質であるPFOSについては、子どもたちの血中濃度は母親よりも42%高く、19歳になるまで持続していた。

 この子どもたちと母親に関するこの新たな発見と時を同じくして、他の科学者らが北大西洋のフェロー諸島における子どもたちを調査して、過フッ素化合物が子どもたちのワクチン接種の効果を低減することに関連することを示した。このことは、この化学物質が免疫系を抑制するすることを示している可能性がある。

 環境健康科学者らは、胎児、幼児、及び子どもは、PFOA や PFOS のような工業化学物質が脳、生殖器官、免疫系、ホルモンなどの発達を阻害するので、それらの化学物質の有害影響を最も受けやすいと述べている。

 科学者委員会は、2001年に汚染された水により健康被害を受けたとしてウェスト・バージニア州とオハイオ州の地域共同体の住民がデュポンに対して集団訴訟を起こした後に、その調停の一部として設立されたものである(訳注2)。

 この委員会は今年の7月に、PFOA曝露による健康影響の見込みについての結論を出すことになっている。デュポンと原告側との調停案の下に、もし科学者らが、この化学物質とどのような疾病との間にでも”ありそうなな関連性(probable link)”が存在するという結論を出した場合には、デュポンは住民たちのために医療監視プログラムを設立することになっている。

 この地域共同体における以前の調査で、科学者らは、PFOA 曝露と、肝臓疾病、子どもの甲状腺ホルモンの変化、及び腎臓がん死のリスク増大の可能性を示唆するマーカーとの間の関連性を見出している。先月、この委員会はまた、C8 (PFOA) と妊娠が誘発する高血圧と子癇(しかん)前症との間のありそうな関連を報告した。それは先天性障害、早産、低出生体重、又は流産との関連性はないとした。

 この化学物質は、環境中のいたるところに存在し、長く残留するので、そのことが環境保護庁とデュポン及び他の製造者との間の、2015年までに排出を廃絶するという合意をもたらした。

 2005年、デュポンは、連邦環境法違反で1,025万ドル(約80億円)の罰金を支払ったが、これはEPAの過去最大の民事行政での罰金であり(訳注3)、さらに環境調査のために600万ドル(約4.8億円)を支払った。EPAは同社が公衆の健康に及ぼす脅威に関する情報を隠したとして告訴したものである。


訳注2
デュポンニュースリリース和訳:C-8集団訴訟原告団と和解/つれづれなる概説

訳注3
EWG in the News, December 15, 2005 テフロン化学物質 デュポン−EPA 危険報告義務違反訴訟 史上最高の過料で和解



化学物質問題市民研究会
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