EHN 2010年12月7日
経口避妊薬は飲料水中の
エストロゲンの主要汚染源ではない


情報源:Environmental Health News, December 4, 2010
Oral contraceptives are not a major estrogen source in drinking water
Synopsis by Ami Zota, Sc.D
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/
birth-control-not-major-estrogen-source-in-water/


オリジナル論文:
Wise, A, K O'Brien and T Woodruff. 2010. Are oral contraceptives a significant contributor to the estrogenicity of drinking water? Environmental Science & Technology
http://dx.doi.org/10.1021/es1014482

訳:安間 武(>化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2010年12月28日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_101207_oral_contraceptives.html


 水のエストロゲン汚染に果たす経口避妊薬の役割は、他の農業、産業及び家庭からのものに比べて、比較的小さい。

 新たな研究が、経口避妊薬はアメリカやヨーロッパの河川及び飲料水のエストロゲンの主要な汚染源ではないということを見つけた。経口避妊薬の役割は、ヒト、産業、及び農業からの汚染源に比べて全く小さい。

 魚やその他の水生生物のメス化を報告する科学的研究のために、エストロゲン汚染についての人々の懸念は増大している。他の研究は、水中の低レベルのエストロゲンへの長期的な曝露はヒト健康に有害影響をもたらすかもしれないということを示唆している。今回の新たな情報は、経口避妊薬が魚やカエルのメス化に大きな役割を果たすという懸念を緩和するものである。

 経口避妊薬が主要な汚染源かどうかを調べるために、研究者らは、地表水、地下水及び飲料水中のエストロゲンの源を特定したヨーロッパ及びアメリカの科学的研究をレビューした。彼らは経口避妊薬中の主要なエストロゲンである17-αエスニルエストラディオール(EE2)に着目した。また、飲料水中のエストロゲン汚染の公衆衛生影響を評価した。

 著者らは、家畜はヒトよりも13倍の排泄物を出すので、農業が水中の重要なエストロゲン汚染原であることを見つけた。家畜は天然及び医薬品のホルモン両方を排泄する。ある研究は環境中の全エストロゲンの90%が動物の排泄物に由来すると推定している。

 水はまた、天然ホルモンや、ホルモン補充療法などその他のエストロゲン含有処方薬を含んで、ヒトに由来する他のエストロゲン化学物質によっても汚染されている。

 さらに、産業と農業の汚染源はエストロゲンを排出するだけでなく、エストロゲン作用を有する農薬などの有害化学物質を放出する。これらの化合物は我々の水供給系の全体のエストロゲン汚染に関わっている。

 よいニュースとして、多くの排水用及び飲料用処理プラントは80〜99%の合成エストロゲンを除去することができるということである。これらの処理はまた、天然エストロゲンの除去にも効果があるように見える。

 しかし、マイナス面もある。天然と、農業由来、特に家畜からの合成エストロゲン及びエストロゲン様化合物は、一般的に処理されずに水系に入り込む。曝露を削減するための将来の取り組みは水系中の全てのタイプのエストロゲン削減に焦点を合わせる必要があるかも知れない。



化学物質問題市民研究会
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