EHN 2010年9月30日
BPA が大気中に 世界中で見出される
Synopsis by Thea Edwards

情報源:Environmental Health News, September 30, 2010
Something's in the air: BPA found around the world
Synopsis by Adelina Voutchkova and Laura Vandenberg
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/
endocrine-disruptor-bpa-measured-in-the-worlds-air/

オリジナル論文:
Pingqing F and K Kawamura. 2010. Ubiquity of bisphenol A in the atmosphere,
Environmental Pollution 158:3138-3143.

訳:安間 武(>化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2010年10月20日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_100930_BPA_in_Air.html


 世界規模の研究が、ビスフェノールAが大気中に存在し、この悪名高い内分泌かく乱物質に人々が曝露するもうひとつの可能性ある経路があることを発見した。

 ビスフェノールA(BPA)が見出される場所のリストに大気を加えるべきと、世界の大気中の化学物質のレベルを測定し報告している二人の日本の研究者は述べている。彼らは、例えば、極地に近い離れた場所のほとんどゼロからインドやアジアの人口密度の高い地域における高濃度まで、世界中の大気のサンプル中に広い範囲のレベルでBPAを検出した。

 その結果は、BPAの遠大な汚染を示し、人々に対するもうひとつの可能性ある曝露源を示している。BPAは肺に浸潤することができる粒子に付着して大気中に浮遊していることを研究者らは発見した。曝露量と汚染された空気を吸い込むことによる健康リスクはまだ分かっていない。

 研究者らは、BPAはプラスチック、電子機器、その他の廃棄物が焼却されるときに大気中に入り込むと信じている。それは人口密度の高い地域の近くで最も高い濃度が測定され、プラスチック焼却に関連する他の化学物質も同時に高いレベルを示すからである。BPAは、これらの製品中に共通に含まれており、また世界のある地域では焼却処分は普通の方法である。BPAを含むプラスチックと他の消費者製品の製造プロセスもまた、大気中のBPAの主要な発生源であると考えられている。

 これらの放出を抑制すれば、世界中、特にアジアでの曝露を制限することができ、それを吸い込むことに関連するどのような健康影響をも減らすことができると研究者らは結論付けている。

 最近、多くのメディアがBPAへの曝露による安全と健康リスクに注目するようになった。いたるところに存在する化学物質は土壌や、水、ホコリとともに、血液、尿、臍帯血の中で検出されている。

 数百の科学的研究が、BPAと動物における健康影響を関連付けている。子宮内でBPAに曝露したげっ歯類とサルは、肥満、神経行動障害、生殖障害、そして成熟すると前立腺がん、乳がんなどを発症する。ヒトでは、BPA曝露は、成人の糖尿病と心臓疾患、及び子どもの行動障害と関連している。他の研究は、中国の工場労働者の中で、BPAの高いレベルと性的機能障害をと関連付けている。

 BPA曝露によるありそうな健康影響の懸念のために、アメリカのいくつかの州、カナダ及びいくつかの欧州諸国は、ほ乳びん又は子ども用品中でのBPAの使用を制限又は禁止しているが、それでもまだ広く使用されている。

 ほとんどのヒト曝露は、食品又は飲料用缶のライニングから漏れ出すBPAで汚染された食品を摂取することにより起きると信じられている。BPAはまた、キャッシュ・レジスター・レシート、持ち帰り用食品を包むペーパー、ぺーパー・タオルを含む広い範囲の紙から検出される。最近の研究は、サーマル及びカーボンレス・ペーパー製品中のBPAはこすられて皮膚に付着し、吸収又は摂取される。BPA汚染ダストの吸入又は摂取はもまた、ヒト、特に子どもたちへの潜在的な経路である。

 この前例のない多国籍研究で、日本の研究者ピンギン・フとキミタカ・カワムラは、インド、中国、日本、ニュージランド、アメリカの12都市;中国とドイツにおける2か所の地域;太平洋、大西洋、インド洋、日本海及び東シナ海における8海洋地域;及びカナダと北極の3つの極地におけるBPAのレベルを報告した。彼らは、世界中で収集した260以上のサンプル及び以前の記録、とりわけ彼らが研究に含めたひとつのアメリカの都市からの10年前の測定を検証した。

 世界のレベルは、人口密度の多い地域からの距離に依存して、広く変動する。多くのアジアの都市の汚染レベルは高いが、インドの大都市ムンバイとチェンナイは中国、日本、又はニュージランドの都市より10倍高かった。海洋地域の最大濃度はアジアの海岸沖で見出された。

 BPAはまた、調査した3つの極地全ての大気中で検出されたが、その値は他のどこのサンプルよりもはるかに低かった。驚くべきことではないが、全てのサンプル中で最低のレベルは南極大陸で採取された。

 著者らは、アジア大陸はBPAの強い汚染源であると示唆している。BPAは、アジアから放出され、世界の他の場所に風により長距離を大気で運ばれると彼らは提案している。このことが北極と南極で大気サンプルを採取した理由である。

 研究者らによれば、希望の光があるかもしれない。もし、プラスチック焼却がアジアの大都市の大気中のBPAが高いレベルである主要原因なら、単純に焼却をやめることは大気中のBPAレベルを大きく低めるひとつの方法であろう。



化学物質問題市民研究会
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