EHN 2010年4月14日
BPA は出生前に暴露したマウスの 子宮の遺伝子活動を高める by ELaura Vandenberg 情報源:Environmental Health News, April 14, 2010 BPA raises uterine gene activity in mice exposed before birth. Synopsis by Laura Vandenberg http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/ prebirth-bpa-exposure-affects-genes-in-the-uterus/ オリジナル論文: Bromer, JG, Y Zhou, MB Taylor, L Doherty and HS Taylor. 2010. Bisphenol-A exposure in utero leads to epigenetic alterations in the developmental programming of uterine estrogen response. The FASEB Journal http://dx.doi.org/10.1096/fj.09-140533. 訳:安間 武(>化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2010年4月16日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_100414_BPA_uterine_gene_activity.html エール大学の科学者らはビスフェノールA(BPA)がヒトとげっ歯類の子宮の発達に影響を与える重要な遺伝子をどのように変更するかを解き明かした。この化学物質は突然変異を引き起こすのではなく、遺伝子発現の変化と呼ばれる遺伝子のオンオフに影響を与える。 マウス研究の結果は、子宮内でのBPAへの暴露は”off”標識を取り除き、Hoxa10と呼ばれる遺伝子がエストロゲンの存在のスイッチをオンにすることを許すということを示している。BPAに暴露したメスのマウスは、暴露していないマウスに比べて生殖管中の Hoxa10 遺伝子の活動が25%高まる。暴露がとまった後でさえもこの変化は持続した。 BPAは遺伝子発現という方法で遺伝子に変化を与えることが知られている。いくつかの研究が、Hoxa10遺伝子へのこの種の変化を女性のがんや子宮内膜症と関連付けている。 全体として、この結果は胎児のBPAへの暴露は子宮の発達を変化させるというより多くの証拠を提供する。この研究はBPAがHoxa10遺伝子に影響を与えることができることを示す以前に発表された発見を支持するものである。しかし、これは研究者らがどのようにしてこの化学物質が実際にこの遺伝子に影響を与えるのかを示した最初のものである。 毎年、数十億ポンド(数十万トン)のBPAが製造され、ポリカーボネートプラスチック、食品缶詰の内面コーディングに使用されるエポキシ樹脂、歯の詰め物、感熱紙など、様々な製品中で使用されている。BPAはそのように広範に使用されているので、ほとんど誰もが体内にBPAを持っており、母親から胎児に伝わることがある。BPAはヒトと動物中でエストロゲンのように作用することが知られている。したがって、その生殖管への影響は潜在的に懸念がある。多くの研究で、BPAは生殖系を変化させ、乳がんと前立腺がんを増大させ、体重増加に影響を与える。 この研究におけるマウスは、5mg/Kg という高用量のBPAが1週間、妊娠マウスに投与された。この種の実験における高用量は劇的な変化を作り出すので、研究者らは化学物質が遺伝子又は細胞作用に与える影響のメカニズムを正確に調べることができた。ヒトがそのような高レベルで暴露することはない。 発達期間中にBPAに暴露したメスマウスは、暴露していないマウスに比べて子宮中での Hoxa10 遺伝子に関するメチル標識が少なかった。Hoxa10 は胎児の発達を制御する。メチル標識は遺伝子がオンにならないように作用する。 BPAはこの標識の数を減らすので、 Hoxa10 遺伝子は発達中のある期間、通常はオフであるのに、オンとなる。子宮組織は通常のエストロゲン信号に対するのとは異なる反応を示す。胎児の発達期間中に生じるこのような暴露は、時には成獣の正常なホルモン反応を変化させ、がんや生殖系の変更などの健康問題をもたらす。 BPA投与が終わっても、メチル標識はこの遺伝子に存在しない状態のままである。このことは遺伝子発現におけるはBPAの影響は長く継続し又は一生続くかも知れないことを示唆している。 |