EHN 2010年4月6日
出生前に農薬に暴露した子どもたちに遅れが見られる
by Emily Barrett

情報源:Environmental Health News, April 6, 2010
Delays seen in children exposed to pesticides before birth
Synopsis by Emily Barrett
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/
prenatal-pesticide-linked-to-delays-high-blood-pressure-later/


オリジナル論文:
Harari, R, J Julvez, K Murata, D Barr, DC Bellinger, F Debes and P Grandjean. 2010. Neurobehavioral deficits and increased blood pressure in school-age children prenatally exposed to pesticides. Environmental Health Perspective http://dx.doi.org/10.1289/ehp.0901582.
http://ehp03.niehs.nih.gov/article/info%3Adoi%2F10.1289%2Fehp.0901582

訳:安間 武(>化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2010年4月10日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_100406_delays_in_children.html


 花栽培産業で働く母親から出生前に殺虫剤に暴露した子どもたちは、6〜8歳に達したときに思考力、学習力、及び記憶力が遅れていることを北部エクアドルの子ども調査が発見した。血圧もまた高かった。

 この結果は同じ研究グループにより実施された以前のパイロット調査の結果と同様であり、発達中、特に特定のウィンドウ期間における胎児の農薬暴露に懸念があることを示唆する証拠が増大していることを示すものである。

 動物とヒトによる農薬暴露研究は、ある農薬は発達中の脳に有害であり、神経作用を阻害し、潜在的に行動と認識に永久的障害を引き起こすかもしれないことを示している。全体として、この研究は、農薬使用はたとえ低濃度であっても職場で、特に妊婦には制限されるべきであることを示唆している。

 科学者らは、北部エクアドルの小さなコミュニティの小学2年生と3年生の子どもたちを調査したが、そのコミュニティの大人の住民らは殺虫剤、特に地元の花栽培産業で最もよく使われている有機リン系農薬に高いレベルで暴露している。子どもたちの二つのグループ、ひとつは胎内で発達期間中に殺虫剤に暴露したグループ、もうひとつは暴露しなかったグループ、が比較された。テストでは、手先の器用さから記憶力や知能までことごとくが測定された。研究者らはまた、現在の子どもたちの農薬暴露レベルを評価し、基本的な健康テストを実施した。

 妊娠中に母親が殺虫剤に暴露した子どもたちは、著しい認識力の欠陥、特に動作スピード、動作協調、絵のコピーに関わる(現場での、又は記憶による)視覚の作業能力に欠陥を示した。その欠陥は約1〜2年の発達遅れである。子どもたちは、血圧は高く、母親が暴露していなかった子どもたちに比べて体が小さかった。特に、妊娠中に殺虫剤に関連した健康影響を報告した母親が一人もいなかったということは、母親の受けた暴露は非常に低レベルであるが、そのような低レベル暴露でも胎児の発達に有害影響を与えることを示唆している。

 これらの影響は、現在暴露している子どもたちや父親が花栽培の仕事をしている子どもたちには見出されなかった。この影響は、発達中に母親を通じて殺虫剤に暴露したと思われる子どもたちだけに見られた。

 この研究にはいくつかの限界あある。この研究は、通常は家庭での暴露より高い職業暴露だけに目を向けており、母親の数年前の職業暴露の記憶に頼っている。理想的には、将来の研究は妊娠期間中に暴露を測定し、子どもの健康を追跡することが望ましい。



化学物質問題市民研究会
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