EHN 2010年3月4日
 フタル酸エステルは
マウスをアレルギーになりやすくする

by Negin P. Martin, Ph. D

情報源:Environmental Health News, March 4, 2010
Phthalates predispose mice to allergies
By Negin P. Martin, Ph. D
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/
phthalates-predispose-mice-to-allergic-reactions/


オリジナル論文:
Shigeno T, M Katakuse, T Fujita, Y Mukoyama and H Watanabe. 2009.
Phthalate ester-induced thymic stromal lymphopoietin mediates allergic dermatitis in mice.
Immunology 128:e849-57.

訳:安間 武(>化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2010年3月7日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_100304_phthalates_mice_allergies.html


 マウスの皮膚にこすりつけたフタル酸-n-ジブチル(DBP)(訳注1)は、げっ歯類の免疫系を変え、接触性アレルギー(訳注2)を起こしやすくすると、科学誌『Immunology』に発表された新たな研究が報告している。
 これは、DBPがどのようにマウスの免疫系を変更して接触過敏症として知られる一種のアレルギーになりやすくするかを示した初めての研究である。この結果は、フタル酸エステル類とアレルギーの関連を見出した以前の研究を支持するものである。

 アレルギーは、通常は有害ではない異物に対する免疫反応である。しかし、この反応はしばしば有害であり不快感を与える。接触過敏症は、ある個人がある化学物質に過敏となったときに起こり、皮膚がその物質に接触した後に炎症を起こす。ツタうるしかぶれによるアレルギー反応は接触過敏症の最もよく知られた例である。

 アメリカ人の概略20%はアレルギーを経験している。アレルギーの急速な増加−特に都市地域の子ども達−は、環境的要因が人々にこの症状を起こしやすくする、ある役割を果たしているということを示唆している。

 フタル酸-n-ジブチル(DBP)は、大気汚染物質である。それは多くの家庭用品、おもちゃ、化粧品、医療品中に見出される可塑剤である。それは発達障害、代謝障害、生殖障害に関連する内分泌かく乱物質である。また免疫系の研究において、DBPに対して皮膚を過敏にすることが示されている。

 この研究では、研究者らは、化学物質混合物をマウスの左耳に擦り付けることにより、マウスをその物質に過敏にした。過敏化プロセスで、化学物質は皮膚中のたんぱく質と反応し、免疫系により異物叉は抗原として認識された。

 5日後、研究者らは同じ混合物をマウスの右耳に擦り付けた。研究者らはDBPを含む混合物はアレルギー反応を引き起こすことを観察した。マウスの耳はこの二回目の暴露で腫れあがった。DBPを含まない混合物で擦られたマウスは反応しなかった。

 混合物の個々の成分をテストした結果、科学者らはDBPが二回目の暴露の後にマウスに免疫反応の誘引を引き起こした化学物質であることを発見した。最初にDBPを含む物質をマウスの耳に擦りつけた時、DBPは免疫系の蛋白質化学を変更し、その後の暴露に対してもっと激しく反応させるようになった。

 これらの発見は、DBPのような環境汚染物質への暴露がアレルギー発症の原因になり得ることを示唆している。


訳注1:フタル酸ジ-n-ブチル(DBP)
訳注2:接触性アレルギー



化学物質問題市民研究会
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