EHN 2010年1月15日
避妊ピル中のエストロゲンは
オスラットの生殖器官を小さくする

by Marla Cone

情報源:Environmental Health News, Jan 15, 2010
Estrogen in birth control diminishes sex organs in male rats
Synopsis by Michele A. La Merrill, Ph.D.
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/
birth-control-estrogen-diminishes-fertility-in-rats/


オリジナル:
Mathews, E, TD Braden, CS Williams, JW Williams, O Bolden-Tiller and HO Goyal. 2009. Mal-development of the penis and loss of fertility in male rats treated neonatally with female contraceptive 17alpha-ethinyl estradiol (EE). A dose-response study and a comparative study with a known estrogenic teratogen diethylstilbestrol (DES).
Toxicological Sciences 112(2):331-343.

訳:安間 武(>化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2010年1月25日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_100115_estrogen_birth_control.html


 避妊ピル中で見出されるのと同じエストロゲン(女性ホルモン)に暴露することによって引き起こされる変形したペニスや小さな生殖器官などの異常は、生殖器官が形成される時期に暴露したオスラットに不妊をもたらした。

 最近の動物研究が、避妊ピルを使い続けていた女性が妊娠すると男の子の生殖系発達を無意識に歪め将来不妊をもたらすかもしれないということを示唆している。同様に、ある種の農薬やビスフェノールAなどの産業化学物質のようなエストロゲン様の作用をする環境化学物質に暴露すると、その暴露が発達の重要な時期に起きるなら、これらの器官もまた影響を受けるかもしれない。

 研究者らは、避妊ピル中で使用されているエストロゲンの異なるレベルでの影響を比較した。彼らの結果はジャーナル『Toxicological Sciences』に発表された。

 彼らは、発達中にこのホルモンに低レベルで暴露するとテストしたオスラットに生殖器官と繁殖力に有害影響をもたらすことを発見した。女性が避妊ピルを日々服用する低容量のエスロゲンに暴露したラットの睾丸やその他の生殖器官は小さかった。テストステロン(男性ホルモン)レベルもまた低かった。丁度10倍の量のエストロゲンに暴露するとペニスが奇形になり、成獣になると不妊をもたらした。

 世界で5,000万人以上の女性が避妊ピルを使用しているのだから、この研究はヒトにも関連がある。使用者の3〜4%は妊娠第2期(the second trimester)に服用しているかもしれないと著者らは述べている。

 この研究の一部として、研究者らは新生ラットを避妊ピル中の主要なエストロゲンであるエチニルエストラジオール(EE)に最初の1週間、暴露させた。この発達の時期はヒトの妊娠第1〜第2期に一致する。これらの時期にはラットもヒトもオスの生殖器官が形成される。新生ラットに暴露させたエストロゲンの量は、女性が避妊のために使用する量から、以前の研究で奇形ペニスのためにラットの不妊をもたらすことが確認された量まで、様々であった。

 典型的な避妊ピル中で見出されるレベルでエストロゲンに暴露されたラットは正常のペニスの太さ、長さ、重量を持っている。しかし、10倍、100倍、1000倍というようにもっと高いレベルで暴露されると、ペニスと睾丸は変形し小さくなった。ペニスの太さ、長さ、重量は減少した。睾丸の重量は減少し、睾丸降下は正常よりも時間がかかり、そのことは成熟が遅れるかもしれないことを示唆している。

 精子数と繁殖能力もまた、ラットが暴露する避妊エストロゲンの量が増大するとともに、減少した。避妊ピル中で見出されるエストロゲンの丁度10倍で精子数は減少し、繁殖力はオスラットの40%で減少した。

 研究者らはまた、EE又はジエチルスチルベストロール(DES)−妊婦のつわりに対する薬として投与された合成エストロゲン−のいずれかに暴露させたラットを比較した。著者らは、ラットのペニスを変形させ、半分を不妊にすることが知られている容量ではラットをEE又はDESに暴露させた。DESはEEと同様にラットに同じような影響を及ぼした。すなわち、睾丸の重量を減少させ、睾丸低下を遅らせ、ペニス重量、太さ、長さを減少させた。DESに暴露した全てのオスは不妊になった。

 この結果は、経口避妊薬中に見出されるこの種のエストロゲンはDESと同様にオス生殖器官に有毒である。DESは、それを服用した母親の子ども達に稀ながん(訳注:膣がん)と生殖系の奇形を引き起こしたために1970年代の初期に医薬品としての使用は禁止された(訳注)。

 この研究では、著者らは、睾丸の重量のような実際の組織の重量を報告し、またラットの体重に対する相対的な組織重量を報告している。研究者らはしばしば、処理に関連する組織重量の相違が単純に体重の相違に反映しないことを明確にするために、この種の比較を用いる。この研究で測定されたオスの多くの性的組織の重量は避妊エストロゲンへの暴露が増大すると、絶対的及び相対的重量のどちらの点でも減少した。この一貫性はこの研究の強固さを確かなものにする。

 ラットのペニスのサイズは、避妊ピルで見られる用量の避妊エストロゲンへの暴露では変化がなかったが、ペニスのサイズがエストロゲン・レベルが高くなると減少するという事実は、公衆健康の観点からやはり懸念のあることである。


訳注:DES


化学物質問題市民研究会
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