EHN 2009年4月7日
農薬が子どもの脳腫瘍を起こす
解説:ヒーサー・ハムリン

情報源:Environmental Health News, April 7, 2009
Pesticides blamed for some childhood brain cancers
Synopsis by Heather Hamlin
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/pesticides-linked-to-child-brain-cancer/

オリジナル:Shim Y, SP Mlynarek and E van Wijngaarden. Parental exposure to pesticides and childhood brain cancer: United States Atlantic Coast Childhood Brain Cancer Study.
Environmental Health Perspectives doi:10.1289/ehp.0800209.

訳:安間 武(>化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年4月10日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_090407_pesticides_childhood_brain_cancers.html

 何が子どもの脳腫瘍を引き起こすかについて決定的にはわかっていないが、研究は一貫して出生前の農薬暴露との関連性を示している。

 両親が農薬を使用する家に住む子どもたちは農薬を使用しない家に住む子どもたちに比べて2倍、脳腫瘍にかかりやすいことを新たな研究が明らかにした。除草剤の使用は特にある種のがんのリスクを高めるように見えた。

 多くの農薬が動物にがんを引き起こすことはよく知られている。

 この研究は農薬の使用を避ける又は制限する新たな説得力のある理由と暴露に対する必要な予防措置を明らかにしている。それはまたこの研究が、農薬暴露、特に農場生活と農薬の使用がこの死をもたらす病気に大いに関係することを示す多くの研究に加ったことになる。

 脳腫瘍は二番目に多い子どものがんであるが、その原因は明確ではない。ある場合には遺伝がその役割を果たしているが、研究者らは遺伝子に関係していないがんは環境要因と暴露に関連していると信じている。

 著者らは、”妊娠前、妊娠中、出生後の両親の暴露が、がんのリスクを増加させる” と説明する。それぞれの時期の暴露は、がんをもたらす遺伝的変異又は遺伝子発現の変化又はホルモンと免疫機能の変化など、様々な変化の引き金となるかもしれない。

 この研究は大西洋岸の四つの州(フロリダ、ニュージャージー、ニューヨーク(ニューヨーク市は除く)、及びペンシルベニア)の住宅地域に住む800人以上の父親と500人以上の母親を評価したものである。研究者らは、”暴露した”それぞれの人を、年齢と社会的状況が同じである”暴露しなかった”人と対応付け比較している。この調査には暴露した子どもたちの400人以上の父親と250人以上の母親が含まれている。

 研究者らは母親との電話インタビューを通じて、出産までの二年間の両親の家庭及び職場での殺虫剤、除草剤、及び殺菌剤への暴露を評価した。

 1993年から1997年までに診断された10歳以下の子どもの脳腫瘍をこの研究は対象とした。子ども達は最初の大西洋岸子ども脳腫瘍研究に参加していた。彼らの疾病はアストロサイトーマ (astrocytomas)(訳注1や原始神経外胚葉性腫瘍(primitive neuroectodermal tumours (PNET))(訳注2)を含む、広い範囲のがんを示した。アストロサイトはこの研究では除草剤の使用に関連していた。

 子どもの脳腫瘍のリスクは、父親が農薬暴露後直ちに体を洗うか防護服を着る場合の方が、ほとんど又は時々しか予防措置をとらない場合に比べて有意に低かった。

 この研究で評価された両親は一般的に、芝生の手入れや園芸を含む住宅での暴露を通じて農薬に接触していた。


訳注1
アストロサイトーマ

訳注2
PNET (primitive neuroectodermal tumor) 原始神経外胚葉性腫瘍について



化学物質問題市民研究会
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