EHN 2008年9月24日論文解説
北東海岸及び西海岸の女性は
水銀レベルが高い
魚の摂取で汚染 米国内で異なる


情報源:Environmental Health News, September 24, 2008
Northeastern, West Coast women have high mercury levels
Contamination from eating fish varies in U.S.
By Marla Cone
Editor in Chief, Environmental Health News
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/news/northeastern-pacific-coast-women-have-highest-mercury-levels

Original: Adult Women' s Blood Mercury Concentrations Vary Regionally in USA:
Association with Patterns of Fish Consumption (NHANES 1999-2004)
Kathryn R. Mahaffey, Robert P. Clickner and Rebecca A. Jeffries
doi: 10.1289/ehp.11674 (available at http://dx.doi.org/) Online 25 August 2008
http://www.ehponline.org/members/2008/11674/11674.pdf

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会
掲載日:2008年9月25日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_080924_Mercury.html



 新たな国の調査によれば、米北東部の女性は水銀汚染がアメリカで最も高く、5人に1人は胎児に安全である考えられるレベルを超えている。

米環境保護庁(EPA)科学者キャスリン R. マハフェイに率いられたこの調査は、妊孕期の女性の水銀汚染を地域的に調べた初めてのものである。

 水銀は魚や海産物に蓄積する潜在的な神経毒である。赤ちゃんが子宮の中で高い濃度の水銀に暴露すると、脳の発達に異常をきたし、学習能力を損ない、知能指数が低い結果となる。

 環境健康展望(Environmental Health Perspectives)のオンライン版に8月25日に発表された新たな報告よれば、全国的で女性10人に1人、700万人近くの水銀体内濃度が、胎児にリスクを及ぼすかもしれない濃度を超えていた。

 1999年から2004年の間に収集されたデータを分析したその報告書によれば、アメリカ女性の水銀濃度は減少しており、これはよいニュースである。
 魚を食する頻度が異なるので、水銀暴露は全国で大幅に異なる。
 大西洋岸の女性は血中の水銀濃度は最も高く、ついで太平洋岸に住む女性の濃度が高い。最も低いのは中西部及び西部の内陸部に住む人々である。五大湖周辺、東北部、及び南部内陸部に住む女性の濃度は中程度である。
 ”海岸近くに住む女性たちが水銀暴露の許容レベルを超えるリスクは、海岸地帯ではない所に住む女性たちに比べて約3〜4倍高い”と著者らは書いている。
 ある女性たちは非常に高い暴露を受けている。大西洋岸の女性の5%は胎児をに害を及ぼすかもしれない量の3倍以上のレベルであった。
 マハフェイと彼女の同僚らは、北東部の女性の水銀レベルが高いのは彼女らが魚類や貝類をより高い頻度で食べるという事実を反映していると報告している。しかし彼らは、女性たちが食べている魚類のうちのあるものは、他の地域で食べられている魚より高い濃度で汚染されているということを意味しているかもしれないと考えている。

 さらに、一家の所得が75,000ドル(約800万円)を超える裕福な女性、及びアジア系又は諸島(island ethnicity)の女性の水銀レベルは最も高かった。
 著者らによれば、アメリカ女性は同じ量の魚を食べていながら、近年、水銀濃度が著しく低下している。
 EPAの指針値である血中水銀濃度5.8ppbを超える女性は、入手可能な最新データによれば、2003〜2004年には約2.5%であったが、1999〜2000年は7%であった。
 科学者らは胎児にとっては3.5ppbでも懸念があるかもしれないと述べている。2003〜2004年には女性の7%が、1999〜2000には女性の14%がこの値を超えていた。
 明らかに女性はメカジキのような高度に汚染している魚は食べないようにしていると著者らは述べている。
 ”このパターンは、全体の魚の摂取をを減らすより、食べる魚の種類を選択することの方が賢明なやり方であることを示唆している”と彼らは書いている。

 2004年に確立された指針(訳注1)は、妊孕世代の女性は、メカジキ、サメ、アマダイ、キングマッケレル(サバ科の大型魚)を避けるよう勧告している。同指針はまた、女性は缶詰のライトツナ、サケ、タラ(pollock)、ナマズなど水銀の少ない魚介類を週に12オンス(平均2食)までとすることを勧告している。
 EPAと食品医薬品局(FDA)によって作成されたこの指針によれば、缶詰のイソマグロ又はビンナガマグロは水銀汚染が高いので週に6オンスに限定すべきとしている。

 EPAとFDAは、女性が魚を食べることを止めてしまうことを恐れて、水銀についての警告を釣り合いの取れたものにしようと努力した。魚は高いたんぱく質源であり、胎児に有益な脂肪酸を含んでいる。

 水銀は胎児の発達中の脳を害することに加えて成人にとってもリスクがある。
 新たな著書、『水銀診断:金、政治、そして毒』の中でサンフランシスコの医師、ジェーン・ハイタワーは、いかに多くの患者が水銀毒、脱毛、深刻な筋肉痙攣、頭痛、胃痛、不眠、記憶減退の害を被っているか述べている。ある研究は水銀が心臓血管疾患に関係することを示している。
 ハイタワーは多くの医師は水銀のリスクについて知らないと述べている。
 ”医師と消費者は、水銀汚染レベルに加えて魚の種類と摂取する量に関してもっとよく勉強する必要がある”と彼女は書いている。

 科学者らは、様々な化学物質についてアメリカ人をテストする国家プログラムの一部として、疾病管理予防センター(CDC)によって収集された水銀データを分析した。この新たな調査は、地域別データを分析した初めてのものであり、これらのデータは公開されておらず、研究者からの特別な要求があった場合にのみ入手できる。

 この調査結果は下記から入手できる。
http://www.ehponline.org/members/2008/11674/11674.pdf


訳注1


化学物質問題市民研究会
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