EHN 2007年11月8日論文解説
アメリカ国民の
ビスフェノールA及びオクチルフェノールへの暴露

ピーター・マイヤーズ博士による概説

情報源:Environmental Health News, November 8, 2007
Exposure of the US population to bisphenol A and 4-tertiary-octylphenol: 2003-2004
Synopsis by Pete Myers, Ph.D.
http://www.environmentalhealthnews.org/newscience/2007/2007-1109calafatetal.html

Original: Calafat, AM, X Ye, L-Y Wong, JA Reidy and LL Needham. 2007.
Exposure of the US population to bisphenol A and 4-tertiary-octylphenol: 2003-2004
Environmental Health Perspectives, in press.
http://www.ehponline.org/docs/2007/10605/abstract.html

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会
掲載日:2007年11月20日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_071108_BPA.html


 CDC(米疾病管理予防センター)の新たな分析は、多くのアメリカ人は、10年も昔のデータに基づいてEPAにより設定された現在の閾値より高いレベルでビスフェノールA(BPA)に暴露していることを示している。これらのレベルは、動物が胎内で暴露して受ける広い範囲の健康影響を引き起こすのに十分なレベルよりも明らかに高い。もうひとつの化学物質オクチルフェノール(4-tertiary-octylphenol)への暴露もまた、広まっている。

 CDCのデータはまた、子どもたちは大人よりも多くBPAに暴露している、すなわち大人よりも高いレベルで体内にBPAを持っていることを示している。

何をしたか?

 カラファト(Calafat)らは、2003年〜2004年に実施された全国健康栄養調査(NHANES)で収集された尿を分析した。この調査はアメリカ人の代表的サンプル(試料)を得るために注意深く設計されている。彼らは2,517のサンプル中のビスフェノールA(BPA)とオクチルフェノール(4-tertiary-octylphenol (tOP))のレベルを測定した。彼らの精密な手法は、BPAを0.4μg/L、tOPを0.2μg/Lという低いレベルで検出することを可能としている。これらのデータの統計的分析で、彼らは異なる人種、年令、及び家計収入を比較した。

何を見つけたか?

 彼らはサンプルを採取した人々(6才以下はいない)の92.6%からBPAを検出し、tOPは57.4%から検出した。BPAの濃度の幾何学的平均値は2.6μg/Lであり、100分の95分位の数値(95th percentile)濃度は15.9μg/Lであった。彼らはtOPの幾何学的平均値は計算しなかったが、それは検出可能なものがサンプルの60%以下であったためである。tOPの100分の95分位の数値は2.2μg/Lであった。

 メキシコ系アメリカ人のBPAレベルは非ヒスパニック系黒人(p = 0.006)及び非ヒスパニック系白人(p = 0.21)より低かった。

 女性のレベルは男性より高かった(p = 0.043)。所得が最も低い層(年間2万ドル以下(約230万円以下))は所得の高い層(45,000ドル以上(約520万円以上))よりも高いレベルであった。

 子どもたちは青年よりもレベルが高く(p < 0.001)、青年は成人よりもレベルが高かった((p < 0.003)。

何を意味するか?

 BPA摂取後の人体におけるBPAの半減期は比較的短いので、これらのデータはアメリカ人が継続的にBPAに暴露していることを示している。

 2007年8月に発表された包括的人体暴露調査で報告された計算によれば、カラファトらによって報告されたレベルは多くの人々の暴露はEPAの参照用量である1日当たり50μg/Lより高いことを示している。この参照用量はEPAによって計算された暴露レベルであり、EPAは理論的に十分に安全であるとしている。過去10年間に発表された多くの研究は、現在の参照用量は全く時代遅れであり、値が高すぎることを示している。ヒトと動物のBPA代謝に関して入手可能なデータを注意深く分析した結果は、今日の人の暴露レベルが動物に広範な有害影響を及ぼすに十分なレベルよりも高いことを示している。

 子ども達が最も高い暴露レベルであるというカラファトらの発見は、二つの点で心配なことである。第一には、動物での実験のほとんどが発達期の暴露が最も問題であることを示していること。第二には、全国健康栄養調査(NHANES)の設計で、サンプル採取された子どもの中に6才以下の子どもがいないということである。赤ちゃんと幼児の暴露はもっと高いかもしれない。多くの赤ちゃんが水中又は電子レンジでの使用が警告されているポリカーボネート製の哺乳瓶でミルクを与えられている。加熱されるとBPAの溶出が増える。粉ミルクはまた、缶からの溶出のために、もうひとつのBPA汚染源となり得る。

 低所得層における比較的大きな暴露は、動物研究に基づいたBPAに関連する疾病エンドポイントの疫学的調査の予想を裏切りかねない意外な健康リスクを明らかにした。例えば肥満である。


訳注:関連記事

ES&T Science News - November 7, 2007 / U.S. baseline for bisphenol A



化学物質問題市民研究会
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