カナダ統計局 健康報告書 2010年8月
鉛とビスフェノールAのカナダ人の体内濃度
主な発見の概要


情報源:Statistics Canada Health Reports August 2010
Lead and bisphenol A concentrations in the Canadian population
Summary of key findings
http://www.statcan.gc.ca/pub/82-003-x/2010003/article/11324/key-cle-eng.htm

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2008年9月4日
このページへのリンク
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/canada/Aug_2010_Lead_BPA_in_Canadian.html


 2007年-2009年 カナダ健康指標調査(CHMS)による新たなデータは、6歳から79歳までのカナダ人の全員(100%)が検出可能な濃度の鉛を血中に持っており、91%のカナダ人が検出可能な濃度のビスフェノールA(BPA)を尿中に持っていることを示している。

 これらの発見は、CHMSの第3回目の発表データに含まれているが、これらはカナダ人の全国的代表サンプルからのバイオモニタリング・データを収集したものである。調査における身体の検査要素の一部として、血液及び尿サンプルが収集され、慢性病、伝染病、栄養バイオマーカー、一般的健康、及び広範な環境化学物質及びそのその代謝物について分析が行なわれた。血中の鉛と尿中のBPAは測定された環境化学物質の一部である。

 血中の鉛濃度は過去30年間で劇的に下がっている。血中の鉛が最後に国家レベルで測定されたのは1978年−1979年であり、その時にカナダ健康調査はカナダ人の6歳〜79歳の鉛濃度の幾何平均は4.79 μg/dLであると推定した。2007年−2009年における同一の年齢グループの鉛濃度の幾何平均は1.34 μg/dL に下がった。この減少は、環境中の鉛の主要発生源の除去を反映している。1970年代から、鉛は最早自動車ガソリンに添加されたり、食品缶詰のハンダとして使用されたりすることはなくなり、塗料中の鉛制限値も下げられた。

 ヒト曝露を評価するために一般的に用いられる血中鉛レベルは最近の曝露を反映しており、また、骨から血液への鉛代謝の結果として過去の曝露を表しているかも知れない。ヒトは大気、水、ホコリ、消費者製品、そしてある種の職業や趣味から鉛に曝露することがある。

 高い血中鉛濃度は脳と腎臓へのダメージのリスクが増大する。鉛の血中濃度が10 μg/dL以上になると問題が生じると考えられているが、最近の研究は子どもの間では、もっと低い濃度でも健康影響がでることが見出されている。

 2007年−2009年では、6歳〜79歳の年齢の人々の1%以下が10 μg/dL以上の血中鉛濃度であり、それに比べると1978年−1979年は27%の人々がこの値以上であった。

 2007年−2009年では、血中鉛濃度は成人の方が子どもより高かった。血中鉛濃度は成人の年齢が上がると高くなり、60歳〜79歳の成人が最も高い濃度を示した。男性は、6歳〜11歳を除いて全ての年齢グループで女性より高かった。

 年齢グループ及び性別ともに血中鉛濃度が高いのは、家計収入が低いこと、カナダ外生まれであること、築50年以上の住んでいること、又は現在又は過去に喫煙歴があること、週に少なくとも1回は酒を飲むことと関連していた。

 カナダ健康指標調査(CHMS)は今回初めて、BPAへの曝露を国家レベルで調査した。BPAは、主にポリカーボネート・プラスチック(食品容器や飲料ボトル等)やエポキシレジン(食品や飲料の缶詰の内面ライニング等)で使用される工業化学物質である。それは内分泌かく乱物質であると認められており、高濃度での曝露の主要な健康影響として生殖毒性が特定されている。尿中のBPAに対してカナダには現在、指針値はない。
 2007年−2009年には、6歳〜79歳の年齢のカナダ人は容量ベースの幾何平均BPA濃度は1.16 μg/Lであった。この値は、他の研究の同一年齢の平均値又は中央値が1 〜 3 μg/Lであるとの報告と整合性がある。

 全体的に容量ベースのBPA濃度は男性の方が女性よりも高いが、その相違は40歳〜79歳の男性の高濃度が大きな原因である。

 尿中のクレアチニン濃度によるBPA標準化の結果、、6歳〜79歳では幾何平均1.40 μg/g クレチアニンのBPA濃度であった。6歳〜11歳の子どもたちは、他の年齢グループに比べて、著しく高いクレアチニン標準化幾何平均BPA濃度であった。

報告書全文


参考情報
下記ウェブサイトに本報告書に関する有用情報/リンクがあるので、引用させていただきました。
食品安全情報(化学物質)No. 18/ 2010(2010. 08. 25)/国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部

(引用)
 ヘルスカナダは、カナダにおける環境化学物質のヒトバイオモニタリングに関する報告書を発表した。この報告書は、カナダ健康指標調査(CHMS:Canadian Health Measures Survey)の第1回(Cycle 1)の結果報告であり、カナダ国民の環境化学物質への暴露に関する初めての包括的データセットである。第1回は2007年3月〜2009年2月に6〜79歳の約5,600人を対象に実施した。第2回(Cycle 2)の調査は2009〜2011年で、3歳位の子どもも対象に含め、第3回(Cycle 3)は2010〜2014年に実施する予定である。

*環境化学物質のヒトバイオモニタリング
Human Biomonitoring of Environmental Chemicals
http://www.hc-sc.gc.ca/ewh-semt/contaminants/human-humaine/index-eng.php
−Canadian Health Measures Surveyの解説サイト−
 2006年から実施しているカナダの化学物質管理計画の一環として、カナダ統計局、カナダ公衆衛生局、ヘルスカナダの共同作業としてバイオモニタリングが実施されている。指標は血中及び尿中の環境化学物質の量、対象とする環境化学物質は重金属・微量元素、有機塩素系物質、PCBs、ポリ臭素化難燃剤、パーフルオロ化合物、ビスフェノールA、有機リン系殺虫剤、ピレスロイド系殺虫剤、フェノキシ系除草剤(2,4-D)、クロロフェノール(2,4-DCP)、コチニン、フタル酸などである。 今回、最初のデータが発表され、例えば1970年代に比べて鉛暴露量は減っていることが示されている。他の多くの化学物質についてはこれがスタートポイントとなるデータである。調査結果は次のサイトから入手可能である。
http://www.hc-sc.gc.ca/ewh-semt/contaminants/human-humaine/chms-ecms_bio-eng.php



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