BCF プレスリリース 2006年1月24日
乳がん財団(BCF)の報告書の紹介
最新の証拠 2006:環境と乳がんとの間にどのような関係があるか?
乳がんの半分は環境が原因、アメリカ女性の乳がんリスクは1964年の約3倍


情報源:Breast Cancer Fund, For Immediate Release, January 24, 2006
Report Finds Half of Breast Cancer Causes May Be Environmental
U.S. Women’s Lifetime Risk for Breast Cancer Has Nearly Tripled since 1964
http://www.breastcancerfund.org/site/apps/nl/content3.asp?c=kwKXLdPaE&b=1745617&ct=1807559

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年3月20日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/bcf/06_01_bcf_brest_cancer.html


 【サンフランシスコ】 本日発表された報告書によれば、アメリカ女性は、たとえ遺伝的傾向やその他の一般的に認められているこの病気のリスク要素がなくても、やはり高い乳がんのリスクがある。

 報告書『最新の証拠 2006:環境と乳がんとの間にどのような関係があるか?』は、乳がん症例の約50%は遺伝、又は、女性の年齢、最初の全期間妊娠、アルコール摂取などの生活様式のいずれでも説明つかないとしている。

 その代わり、この報告書は、”今日使用されている約100,000種の人工化学物質がホルモン機能や遺伝子発現を変化させることにより乳がんの発症に寄与していることを抗しがたい科学的証拠が指摘している”−と述べている。報告書はまた、”昔から確立されている乳がんの環境的要因”として、X線やCTスキャンなどによる放射線暴露もあげている。

 乳がんと環境との関連に関する約350の科学的研究を検証し分析したこの報告書『最新の証拠 2006』は、サンフランシスコを拠点とする二つの団体、”乳がん財団(Breast Cancer Fund)”と”乳がん行動(Breast Cancer Action)”が共同で刊行したものである。この報告書は、ピッツバーグ大学がん研究所、タフツ大学医学部、コロンビア大学、及びその他の研究所の指導的科学者らによってピアレビューを受けた。

 この報告書は『最新の証拠』の第4版であり、2006年版は2004年と2005年の間に発表された46以上の新たな研究結果を報告している。

 2005年には、乳がんで40,000人以上のアメリカ女性−13分に1人−が死亡し、全世界では410,000人以上が死亡したと予測される。アメリカ女性7人のうち1人が生涯の間に乳がんと診断され、それは過去40年間に3倍近く増加している。

 ”乳がんのリスクを減らすかもしれない個人の生活スタイルを変えるよう女性に働きかけるために毎年相当な人と資金が使われている”−と乳がん基金(BCF)の代表ジャニー・リッゾは述べた。”しかし、この病気に寄与する多くの要因は女性の個人的管理の範囲をはるかに超えており、政府と民間企業の考え方の変革によってのみ対応できる。”

 ”この報告書は、我々が日々の生活で暴露している化学物質が我々を病気にしている”−と乳がん行動(Breast Cancer Action)の代表リサ・バンゾールは述べた。”乳がんにかかっている、あるいはそのリスクのある女性は、我々の健康を第一とし有害化学物質への暴露から我々を守ってくれる公共政策を必要としている。”

2006年度版報告書の中で明らかにされた研究結果の一部
  • 2000年に発表されたスカンジナビアの大規模研究の再分析によれば、乳がんの発症に対する遺伝的要因は、”中小程度の寄与”である。

  • ホルモン補充療法(HRT)の歴史にについて多分野にわたる分析の結果、科学者らは1930年代の初めから乳がんのリスクを知っていたことが明らかにされた。専門分析家は、なぜ1960年代以来数十年もの間、数百万人の女性が発がん性物質であると知られている強力な薬を処方されていたのかを問うた。

  • 2,4-D(訳注) やクロルデン(訳注)のような除草剤や殺虫剤で汚染された有害廃棄物処分場から1マイル(約1.6km)以内に住む女性は乳がんのリスクが高まるということをニューヨーク州ロングアイランドで実施された研究が明らかにした。アイオワ州及びノースカロライナ州で活動する研究者らもまた、塩素系農薬のあるものを使用している農民、及び農薬が散布される地域の近くに住んでいる人々の中に乳がんのリスクが増大していることを発見した。カリフォルニアでは、ある殺虫剤と除草剤はラテン系農業労働者の乳がんリスク増大と関連していることが示された。

  • 電離放射線には安全許容量は存在しない。国立研究協議会の報告書によれば、たとえ微量の放射線暴露でもヒトのがんリスクを増大する。
  • パーソナルケア製品で広く使われているフタル酸エステル類はヒトの乳がん細胞を急増させることが示された。科学者らはまた、ある種のフタル酸エステル類は、最も広く処方されている乳がん治療薬で乳がん細胞 MCF-7 を殺すタモキシフェンの有効性を抑制することを見いだした。
 この新たな報告書は乳がんのリスクを削減し、最終的にはその発症をとめるための10項目計画で提案している。それらの提案の一部:

  • 州及び連邦政府レベルで有害物質への暴露を監視するための環境健康追跡プログラムを確立すること
  • 労働者を有害な暴露から保護すること
  • 企業に有害な実施方法について責任を持たせ、地方、州、及び連邦政府レベルで、クリーンでグリーンな実施方法を推奨すること
  • 予防原則に基づいた包括的な化学物質政策を確立し、化学物質の製造者と放射線機器の製造者に、彼らの製品を市場に投入する前に、健康、安全性、及び環境影響の評価を実施することを義務付けること

State of the Evidence 2006: What Is the Connection Between the Environment and Breast Cancer?”
 (報告書『最新の証拠 2006:環境と乳がんとの間にどのような関係があるか?』)
  報告書概要(約250kb PDF)
  報告書全文(約550kb PDF)


 乳がん財団(Breast Cancer Fund)は、乳がんの環境的及び避けることのできる原因を特定しその排除を推進することに特化している唯一の全国的非営利組織である。
http://www.breastcancerfund.org/site/pp.asp?c=kwKXLdPaE&b=43969

 乳がん行動(Breast Cancer Action)は乳がんの撲滅を推進するための教育と運動を展開する全国的非営利組織である。


訳注:報告書本文の資料の一部



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