コロラド大学コロラド公衆衛生校 2022年7月16日
フタル酸エステル類に暴露すると
早産の可能性が高くなる

妊娠中の女性に関する NIH の研究は、
妊娠を危険にさらす可能性のある化学物質との関連を確認

情報源:Colorado School of Public Health, July 16, 2022
Preterm birth more likely with exposure to phthalates
NIH study of pregnant women confirms link with
chemicals that could put pregnancy at risk
https://coloradosph.cuanschutz.edu/research-and-practice/
centers-programs/lead/about-us/news/public-health-main-site-news/
preterm-birth-more-likely-with-exposure-to-phthalates


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2022年8月22日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/Phthalates/220716_
coloradoSPH_Preterm_birth_more_likely_with_exposure_to_phthalates.html



 米・国立衛生研究所(NIH)の新しい研究によると、妊娠中に複数のフタル酸エステル類にさらされた妊婦は、早産のリスクが高かった。フタル酸エステル類は、化粧品などのパーソナルケア製品や、溶剤、洗剤、食品包装に使用される化学物質である。

 米国の 6,000 人を超える妊婦のデータを分析した結果、研究者らは、尿中の複数のフタル酸代謝物の濃度が高い女性は、出産予定日の 3 週間以上前に出産する早産の可能性が高いことを発見した。

 ”早産は赤ちゃんと母親の両方にとって危険な場合があるため、予防できるリスク要因を特定することが重要である”と、NIH の一部である国立環境衛生科学研究所 (NIEHS) の疫学者であり、米国医師会誌(JAMA)小児科に掲載された同研究の上級著者ケリー ファーガソン博士は述べている。

 このテーマに関するこれまでで最大の研究であるこの研究では、コロラド公衆衛生校(SPH)のコンラッド・M・ライリー寄贈疫学教授であり、肥満および糖尿病センターのライフコース疫学センターの所長であるダナ・ダベリアを含むファーガソンと彼女のチームは、全米で実施された 16の研究によるデータを共同利用した。このデータには、出産前及び出産頃の尿中フタル酸代謝物(フタル酸への暴露を表す)に関する個々の参加者のデータが含まれていた。研究者らは、1983年から 2018年の間に出産した合計 6,045人の妊婦のデータを分析した。この研究に参加した女性の 9%、つまり 539 人が早産した。フタル酸代謝物は、尿サンプルの 96%以上で検出された。

 検査したほとんどのフタル酸代謝物の濃度が高いほど、早産の確率がわずかに高くなった。妊娠中の女性に見られた 11種類のフタル酸エステル類のうち 4種類に暴露すると、早産の確率が 14〜16% 高くなった。最も一貫した調査結果は、マニキュアや化粧品などのパーソナルケア製品で一般的に使用されているあるフタル酸エステルへの暴露に関するものであった。

 研究者らはまた、統計モデルを使用して、フタル酸エステルへの暴露を減らす介入をシミュレートした。彼らは、フタル酸代謝物レベルの混合物を 50% 減らすと、早産を平均で 12% 防ぐことができることを発見した。フタル酸エステルを含まないパーソナルケア製品 (ラベルに記載されている場合) の選択、製品中のフタル酸エステルを削減するための企業による自発的な行動、又は基準や規制の変更など、行動を対象とする介入は、暴露の減少と妊娠の保護に貢献する可能性がある。

 ”人々が日常生活でこれらの化学物質への暴露を完全になくすことは困難であるが、我々の結果は、大規模な集団内でのわずかな削減でも、母親とその子どもの両方にプラスの影響を与える可能性があることを示している”と NIEHS のポスドク研究員で、この研究の筆頭著者であるバーレット・ウェルチ博士は述べた。

 新鮮な家庭料理を食べること、プラスチック製の容器や包装に入った加工食品を避けること、無香料の製品や「フタル酸エステル不使用」と表示された製品を選択することは、暴露を減らすために人々ができることの例である.フタル酸エステル類を含む製品の量と種類を変更することで、暴露を減らすこともできる。

 研究者ら」は、フタル酸エステル類への暴露が妊娠に影響を与えるメカニズムをよりよく理解し、母親が暴露を減らす効果的な方法があるかどうかを判断するために、さらなる研究を行っている。

国立環境衛生科学研究所 (NIEHS) について
 NIEHS は、国立衛生研究所(NIH)の一部であり、人間の健康に対する環境の影響を理解するための研究を支援している。 NIEHS または環境衛生に関するトピックの詳細については、www.niehs.nih.govにアクセスするか、ニュース リストを申し込んでください。

国立衛生研究所 (NIH) について
 米国の医学研究機関である NIH には、27 の研究所とセンターがあり、米国保健社会福祉省の一部である。 NIH は、基本的、臨床的、及び先端的な医学研究を実施並びに支援する主要な連邦機関であり、一般的な病気とまれな病気の両方の原因、治療法及び処置法を調査している。 NIH とそのプログラムの詳細については、www.nih.gov をご覧ください。



化学物質問題市民研究会
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