レイチェル・ニュース #724
2001年5月10日
フッ素添加を見直そう
ポール、エレン及びマイケル・コネット
#724 - Fluoridation: Time For A Second Look?, May 10, 2001
by Paul, Ellen and Michael Connett
http://www.rachel.org/?q=en/node/5319

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
掲載日:2001年6月2日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/rachel/rachel_01/rehw_724.html



 1997年にアメリカ環境保護局(EPA)の科学者、技術者及び弁護士たちの組合(union)は、公共水道水へのフッ素添加を中止することを求めたカリフォルニア州の市民提案(citizen initiative )を支持した。1999年に同組合の副理事長が、同組合はフッ素添加に反対することを表明する書簡を発表した[1] 。

 フッ素添加とは、虫歯予防のために公共の水道水にフッ素を加えることである。アメリカでのフッ素添加は1945年に始まり、1992年までに約56%のアメリカ国民に対しフッ素添加された水道水が供給されるようになった[2] 。

 一般的には、水道水1リットル当たりのフッ素イオンが1ミリグラム(1ppm)となるようフッ素化合物が水道水に加えられている。1986年にEPAは、水道水中のフッ素化合物の最大汚染濃度(Maximum Contaminant Level:MCL)を4ppmと設定した。このMCL値は、フッ素化合物による健康障害である骨格へのフッ素沈着症(肢体不自由となる骨の病気)に基づいて決められている。

 公共水道水へのフッ素添加については50年間に渡って激しい論争が行われていた。しかし、今、新しいデータがこの論争に決着を付けようとしている。
 フッ素添加の効用は当初、誇大に主張されていた。最近数年の間に、虫歯は水道水がフッ素添加されている地域でも、またフッ素添加されていない地域でも減少している。実際に、アメリカの最大級の調査によれば、フッ素添加された地域の効用はといえば、子ども1人当たりの虫歯が0.6本以下であるということであるが、これは1人の子どもの歯の総数の1%以下である[4] 。(訳注:正しくは2%以下か?)

 地域の公衆衛生当局は、ある主張に基づいて、水道水を通じて地域住民全てに薬物(フッ素)を投与することを正当化しているが、最近の研究ではその主張は間違っているということが示された。

 例えば、1945年には、科学者達はフッ素は効用があるので飲むべきであると信じていた。しかし米疾病管理予防センター(CDC)は最近、フッ素の作用は主に局所的なもので全身性のものではないということを認めた[5] 。このことは、わずかな効用を得るためにフッ素を飲む必要はないということを意味している。

 当初信じられており、現在は誤りであるということが知られている第2の点は、フッ素が欠くことのできない栄養素であるといことである。フッ素の欠乏が原因で病気になるという証拠はどこにもない。母乳中の天然のフッ素レベル(0.01ppm)は、フッ素添加された水で溶いた人工乳よりも約100倍低い[6] 。

 第3の点は、歯のフッ素沈着症(フッ素が歯の成長を阻害することを原因とする歯のエナメル質の欠陥)の発生は、フッ素が1PPM添加された水道水を飲む子どもたちのわずか10%で、その症状も軽いと信じられていたことである。今日、フッ素沈着の歯は水道水にフッ素添加された地域の子どもたちの30%に2本あるいはそれ以上あり、その症状も全てが軽いわけではない[7] 。

 第4の点は、水道水中のフッ素1ppmという値には、毒性に対す十分な安全性許容値が含まれていると信じられていたことである。フッ素沈着症に対するフッ素の安全性許容値などというものは存在せず、また、特にヨウ素などの栄養素が欠乏した時にフッ素が骨格を変化させ、脳や甲状腺や他の柔らかい組織に影響を与えることに対する安全性許容値も存在しない。

根拠

  1. 1998年に長期にわたる低用量でのラットの実験結果が発表された[8] 。2つのグループのラットに、異なるフッ素化合物を蒸留水に1ppm添加した2種類の溶液を与えた。第3のグループには蒸留水だけを与えた。アルツハイマー病や他の痴呆症に関連があるとされるアミロイドの脳での蓄積量は、蒸留水だけの第3のグループに比べ、フッ素添加した2つのグループのラットで増大するという結果を得た。著者はフッ素化合物にはアルミニウムを脳血管のバリアを通過させる働きがあると推測している。

  2. 中国やインドの数百万の人々は、骨格フッ素沈着症と呼ばれる肢体が不自由になる骨格の病気に罹っているが、これは彼らの飲料水中に存在する中〜高程度(1.5〜9ppm)の天然のフッ素化合物によって引き起こされるものである[9] 。骨格フッ素沈着症は、単なる関節の痛みというような程度の軽いものから、重度の障害を伴うものまで、様々な段階がある。症状が関節炎とよく似ているので、骨格フッ素沈着症の最初の2段階までは、関節炎と誤診されやすい[3] 。アメリカでは関節炎が現在流行している。このことに対するフッ素化合物の関連性については無視されているが、深刻に受け止める必要がある。

  3. 1945年にフッ素添加が始まって以来、我々は様々な所でフッ素化合物に曝露する機会が事実上増大している。フッ素の添加された水を用いて製造された食品や飲料、工場から排出されるフッ素化合物で汚染された大気、残留農薬、ビタミン剤、歯科用品などである。もし、飲料水中の1ppmだけからフッ素化合物を摂取しているのなら、人々の1日のフッ素化合物の平均摂取量は2ミリグラム程度である。しかし人によってはボトルの飲料水を飲んだり、飲料水の量が平均より少ないこともあるので、摂取量はもっと少ないかも知れない。1991年に米厚生省(Department of Health and Human Services :DHHS )は、水道水中に約1ppmのフッ素化合物を含む地域の人々のフッ素化合物の摂取量は1日当たり1.58〜6.6mgであると推定している[10] 。

  4. 1日当たり1.58〜6.6mgの摂取量は、人間の甲状腺機能をを抑える量として知られている量と一致する。2.27〜4.54mg/日の摂取で、フッ素化合物は甲状腺機能亢進症の諸症状を完全になくすことが分かっている[11] 。フッ素化合物が甲状腺機能を抑える用量が分かっているので、現状のフッ素化合物の消費と甲状腺機能低下症との間に、何らかの関係があると考えられる。アメリカでは2,000万人以上の人々が、甲状腺障害の治療を受けており、さらに多くの診断未確定の人々がいると考えられる[12] 。

  5. フッ素化合物は内分泌かく乱物質である。フッ素化合物は、細胞膜を通してホルモン信号を伝達するGプロティンに作用するので、水溶性ホルモンの様な働きをする[13] 。さらに、フッ素化合物は松果体に蓄積し、メラトニン(訳注:松果体から分泌されるホルモンの一種)の分泌を減少させる[14] 。

  6. 骨を強化するために骨粗鬆(しょう)症の患者に投与されるフッ素化合物(50〜75mg/日)により股関節部の骨折の発生率が増えている[15,16] 。1990年以来実施された18の研究事例のうち、10例については、水道水へのフッ素添加と老人の股関節部骨折との間に関係があることを示している[17] 。毒物疾病登録機関(Agency for Toxic Substances and Disease Registry:ATSDR )は、「もしそれが事実なら、老人の股関節部骨折は子どもの歯のフッ素沈着症が置き換わったもので、フッ素化合物への曝露の終着駅である」としている[18] 。股関節部骨折は決して些細な問題ではない。アメリカでは毎年50,000人が骨粗鬆(しょう)症に関連する股関節部骨折で死亡している[19] 。

  7. フッ素化合物が雄ラットと、恐らく若者に骨がんを発生させるという証拠もある[20, 21] 。

  8. “社会に責任を負う偉大なるボストンの医師達”が最近発表した報告書で、フッ素化合物は若い動物や子どもの脳の機能に影響を与え、IQを低下させるという研究を検証している[22] 。

 多くのヨーロパ諸国はフッ素添加を拒否している。単純で効果的な代替法があるので、ヨーロッパでは予防原則(precautionary principle)を適用している。その結果、彼らの子ども達の歯はフッ素沈着の被害を受けていない。子どもにフッ素を使わせたい親は、フッ素入りの練り歯磨きを買えばよいのである(1,000〜1,500ppmのフッ素化合物を含んでいるので、注意書きを良く読むこと)[23] 。
 ある人には有害となる強い薬物(フッ素)を地域全体に投薬して、フッ素化合物を子ども達に与えるアメリカのやり方は、どう見てもおかしい。それは医療倫理の“第一に傷つけるな”という予防原則にはずれることになる。それはまた、インフォームド・コンセントの倫理からもはずれている。

 2000年5月にフッ素化合物・アクション・ネットワーク(Fluoride Action Network:FAN)は12カ国の活動家や科学者からなる連合組織を立ち上げた。(参照 http://www.fluoridealert.org)。FANの目標はフッ素添加をやめさせ、フッ素化合物への曝露を最小にすることである。FANの設立メンバーには、故デービッド・ブラウアー、テディ・ゴールドスミス、マイケル・コルビー、ガー・スミス、テディー・スウェアリンゲン、EPA職員組合の代表、カナダのハーディ・リムバック博士(カナダのフッ素に関する歯科の権威で、1999年にそれまで15年間、フッ素添加を推進してきたことに対し謝罪した)などがいる。

 我々は、公衆衛生の分野や環境問題に関わる仲間達に、一緒に参加して、フッ素添加について見直しを行おうと呼び掛けている。

著者紹介
ポール・コネット:ニューヨーク州カントンのセント・ローレンス大学教授(化学)
エレン・コネット:『WASTE NOT 』の編集者、82 Judson, Canton N.Y. 13617
ミカエル・コネット:Fluoride Action Network (FAN) ウェブ・マスター http://www.fluoridealert.org

[1] J. William Hirzy, "Why the union representing U.S. EPA's professionals in Washington D.C. opposes fluoridation," WASTE NOT #448 ( May 1, 1999), pgs. 1-4. And see http://www.fluoridation.com/epa2.htm.

[2] Centers for Disease Control and Prevention, National Center for Prevention Services, Division of Oral Health, "Water Supply Statistics" (Atlanta, Georgia: Centers for Disease Control and Prevention, 1993). Available at http://www.cdc.gov/nohss/FSSupplyStats.htm.

[3] Bette Hileman, "Fluoridation of water. Questions about health risks and benefits remain after more than 40 years," CHEMICAL & ENGINEERING NEWS Vol. 66 (August 1, 1988), pgs. 26-42. Available at http://www.fluoridealert.org/hileman.htm.

[4] J.A. Brunelle and J.P. Carlos, "Recent Trends in Dental Caries in U.S. Children and the Effect of Water Fluoridation," JOURNAL OF DENTAL RESEARCH Vol. 69, Special Issue (February 1990), pgs. 723-727 and discussion pgs. 820-823.

[5] Centers for Disease Control, "Achievements in Public Health, 1900-1999: Fluoridation of Drinking Water to Prevent Dental Caries," MORBIDITY AND MORTALITY WEEKLY REPORT Vol. 48, No. 41 (October 22, 1999), pgs. 933-940.

[6] C.J. Spak and others, "Fluoride in Human Milk," ACTA PAEDIATRICA SCANDINAVICA Vol. 72, No. 5 (September 1983), pgs. 699-701.

[7] Keith E. Heller and others, "Dental Caries and Dental Fluorosis at Varying Water Fluoride Concentrations," JOURNAL OF PUBLIC HEALTH DENTISTRY Vol. 57, No. 3 (Summer 1997), pgs. 136-143.

[8] Julie A. Varner and others, "Chronic administration of aluminum-fluoride and sodium-fluoride to rats in drinking water: alterations in neuronal and cerebrovascular integrity," BRAIN RESEARCH Vol. 784, No. 1-2 (February 1998), pgs. 284-298.

[9] S.S. Jolly and others, "Human Fluoride Intoxication in Punjab," Fluoride Vol, 4, No. 2 (1971), pgs. 64-79.

[10] Ad Hoc Subcommitttee on Fluoride of the Committee to Coordinate Environmental Health and Related Programs, Public Health Service, Department of Health and Human Services. REVIEW OF FLUORIDE: BENEFITS AND RISKS, REPORT OF THE AD HOC COMMITTEE ON FLUORIDE OF THE COMMITTEE TO COORDINATE ENVIRONMENTAL HEALTH AND RELATED PROGRAMS (February 1991), pg. 17.

[11] Pierre-M. Galletti and Gustave Joyet, "Effect of fluorine on thyroidal iodine metabolism in hyperthyroidism," JOURNAL OF CLINICAL ENDOCRINOLOGY Vol. 18 (October 1958), pgs. 1102-1110.

[12] Beth Ann Ditkoff and Paul Lo Gerfo, THE THYROID GUIDE [ISBN 0060952601] (New York: Harper, 2000), cover notes.

[13] Anna Strunecka and J. Patocka, "Pharmacological and toxicological effects of aluminofluoride complexes." FLUORIDE Vol. 32, No. 4 (November 1999), pgs. 230-242.

[14] Jennifer Anne Luke, THE EFFECT OF FLUORIDE ON THE PHYSIOLOGY OF THE PINEAL GLAND , Ph.D Thesis, University of Surrey, United Kingdom (1997). See also Jennifer Luke, "Fluoride Deposition in the Aged Human Pineal Gland," CARIES RESEARCH Vol. 35 (2001), pgs. 125-128.

[15] L.R. Hedlund and J.C. Gallagher, "Increased incidence of hip fracture in osteoporotic women treated with sodium fluoride," JOURNAL OF BONE MINERAL RESEARCH Vol. 4, No. 2 (April 1989), pgs. 223-225.

[16] B.L. Riggs and others, "Effect of fluoride treatment on the fracture rates in postmenopausal women with osteoporosis," NEW ENGLAND JOURNAL OF MEDICINE Vol. 322, No. 12 (March 22 1990), pgs. 802-809.

[17] Paul Connett and Michael Connett, "The Emperor Has No Clothes: A Critique of the CDC's Promotion of Fluoridation," WASTE NOT #468 (October 2000), pgs. 27-28. Available at http://www.fluoridealert.org/cdc.htm.

[18] Agency for Toxic Substances and Disease Registry, TOXICOLOGICAL PROFILE FOR FLUORIDES, HYDROGEN FLUORIDE, AND FLUORINE (F) [ATSDR/TP-91/17]. (Atlanta, Ga.: U.S. Department of Health and Human Services, April 1993), pg. 57.

[19] K. Phipps, "Fluoride and bone health," JOURNAL OF PUBLIC HEALTH DENTISTRY Vol. 55, No. 1 (Winter 1995), pgs. 53-56.

[20] National Toxicology Program, TOXICOLOGY AND CARCINOGENESIS (December 1990). This NTP study is summarized in reference 10, pgs. 71-73.

[21] Perry D. Cohn, A BRIEF REPORT ON THE ASSOCIATION OF DRINKING WATER FLUORIDATION AND THE INCIDENCE OF OSTEOSARCOMA AMONG YOUNG MALES. (Trenton, N.J.: New Jersey Department of Health, November 8, 1992).

[22] Ted Schettler and others, IN HARM'S WAY: TOXIC THREATS TO CHILD DEVELOPMENT (Cambridge, Mass.: Greater Boston Physicians for Social Responsibility [GBPSR] , May 2000). Available at http://www.igc.org/psr/ or from GBPSR in Cambridge, Mass.; telephone (617) 497-7440.

[23] Paul Connett and Ellen Connett, "The Fluoridation of Drinking Water: a house of cards waiting to fall. Part 1: The Science," WASTE NOT #373 (November 1996). See Table 2 pgs. 6-7.



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