WHO 公衆の健康保護のための予防の枠組み
レビュー用ドラフト (2003年5月2日)

(訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会
情報源:Draft for Review (2 May 2003)
Precautionary Framework for Public Health Protection
http://www.who.int/peh-emf/meetings/archive/Precaution_Draft_2May.pdf
更新日:2003年8月26日


目 次

概要1
1. はじめに1
   予防原則 1
   WHO の役割 2
   範囲と目的 2
2. 予防的枠組み:支配的概念2
   予防の枠組みの目標 3
   科学の役割 4
   予防の枠組みとガイドライン 4
   予防的措置を用いることの法的関係 4
3. 予防の枠組みのプロセス5
   Fig. 1a. Risk Management Framework for Known Risks 5
   Fig. 1b. Risk Management Framework for Uncertain Risks 6
   Fig. 2. Precautionary Framework for Public Health Protection 6
   問題に関すること 7
   リスク評価 8
   選択肢の生成 8
   選択肢の評価と選択 10
   便益評価 10
   コスト叉はコスト効率 11
   各選択肢の便益−コスト分析及び便益−コスト効果分析 12
   選択肢の規準 (EC 2000) 12
   選択肢の選択 13
   選択肢の実施 13
   選択肢の評価 13
4. References14
   Key References: 14
   Additional References: 14


P.1
概要

 予防の枠組み (Precautionary Framework) は、既知 (すなわち、比較的確立されており、確実) 叉は不確実なリスクを管理する時の、考慮すべき手順を含む支配的な概念である。予防の枠組みは、全ての主要な段階で知識を提供し、それにより、全体的なあるいは総計としてのリスクに関するより包括的な理解を確実にすることを意図している。
 予防の枠組みはまた、物理的、化学的、あるいは生物学的な作用因子(物質)への暴露を削減するための選択肢を開発し、当該リスクに最も適切な選択肢を評価、選択し、選択した選択肢を実施、評価、監視する方法を提供する。

 予防の枠組みの中でのリスク管理は、反復プロセスであり、新たな情報と理解の発展を推進する。予防の枠組みは、このプロセスに広い範囲の関係者を取り込むことで、決定の過程を透明にし、関係者の利害を明確にすることを求めている。

1.はじめに

 社会の変化と急速な技術の発展は、かつてない多様な作用因子(物質)や環境を作り出し、その結果は時には予測することが難しく、さらには人間の健康や環境にリスクを及ぼすこともある。これらのリスクを管理することは難しくなっている。なぜなら、そのリスクが新しいものでその危険性を特定できない場合、従来のリスクの算定方法では適切でないからである。

 最近、その結果はよく分からないが、多分有害であろうと思われる作用因子(物質)叉は行為への暴露を防ぐ、あるいは制限するために、予防的措置 (precautionary measures) が用いられている。
 法律を制定したり注意を喚起したりして、社会は新しい技術が及ぼす潜在的なリスクを最小にしようと試みているが、一方では、その便益を享受している。このリスク−便益のトレードオフを行なう場合、社会は、その文化、その慣習、その経験、そして科学者たちに依存している。このようなやり方は、知識と経験が蓄積する時間がある場合にはうまく機能してきた。しかし、リスクが新しく、その影響が十分には測定できず、科学が明確な決定をするに足るデータを提供できない場合には、予防原則の適用が支持される。

予防原則

 1992年の欧州連合(EU)に関する条約 (Treaty on European Union ( 1992 )) により、予防原則はヨーロッパの環境法の基礎となっている。欧州委員会(EC)によるコミュニケーション (EC 2000) は、この原則の政治的に透明な適用のための指針を提案しているが、一方、関連する科学的データの注意深い検証を強調している。しかし、予防的決定 (precautionary decisions) には様々な議論があり、原則自体明確な定義に欠けている (Foster 他、2000年、Kheifels、2001年)。いくつかの国で、予防原則の名の下にとられた措置をみると、この原則の意味について、また、その適用の仕方について、広い範囲で混乱があるように見える。

 この報告書における予防の枠組みは、予防原則によって提起された論点に目を向けている。
 予防原則を法的に実施する場合には、この予防の枠組みに従うことを提案する。

P.2
WHO の役割

 世界保健機構 (The World Health Organization (WHO)) は、開発国及び開発途上国の双方における不確実で地球規模的である環境健康への脅威にますます関心を持っている。
 もし、これらのリスクの複雑さ、証明されていなくても時機を得た防止対策の必要性、そして科学的不確実性(及びその潜在的誤用)の下でも予防的措置をとることの適切さが増大しているのなら、WHOが、公衆健康の価値と健康を促進し守るという使命と一致した予防措置を適用するための全体的な手法を開発することが重要である。

 国際的な公衆健康機関として、WHOは健康と安全に関する勧告の基礎を常に確認された科学的証拠に置いてきた。しかし、1999年の第3回ヨーロッパ大臣間環境安全会議において、WHOは、 ”リスクを評価する際に予防原則を厳密に適用し、危険に対してより予防的で積極的なアプローチをとる必要性” を考慮すべきことを問われた。その結果、WHOは、ワークショップ、 ”予防的政策と健康保護 : 原則と適用” (ローマ、2001年5月) を通じて、この分野の展開を図ってきた。
 シンポジウム、 ”環境的暴露、公衆健康、及び予防原則” (バンクーバー、2002年8月) では理論的分野の進展がケーススタディとともに検証された。
 WHOはまた、2002年10月、コレギウム・ラマジニ(Collegium Ramazzini)の国際科学会議 ”予防原則 : 環境と職業の健康に関する研究とその保護の示唆するもの”を共催した。
 最近では、WHO国際ワークショップ、”予防原則の電磁界問題への適用” を、欧州委員会 (EC) 及びアメリカ国立環境健康科学研究所(US National Institute of Environmental Health Sciences)とともに、2003年2月24-26日、ルクセンブルグで開催した。このワークショップでは、健康問題に対する予防原則の適用のための枠組みに焦点があてられた。

範囲と目的

 この報告書の目的は、複雑さと不確実さがともなう情況での公衆健康保護の政策決定を改善する予防的戦略の適用に関する指針を与えることである。公衆健康保護のための予防的枠組みは、WHO加盟国が自国の公衆健康政策と環境健康リスクに焦点をあてた予防的措置の適用を展開する際に役に立つよう作成されている。

2.予防的枠組み:支配的概念

 公衆の健康を守る政策と措置を検討するためには、健康に関するWHOの定義を知る必要がある。健康:肉体的、精神的、及び社会的に完全に幸福な状態であり、単に病気や疾患がないということではない。従来、公衆健康政策は常に、因果関係がはっきりした後に病気を防ぐことを目標としてきた。しかし、政策を、リスク要素が因果関係を伴って明確にされる前に、あるいは不確実性があるままに、立法化することができる。このようにすれば、予防措置はごく自然に従来の公衆健康政策と措置に統合することができる。

 予防的枠組みは、健康のリスク管理の全ての段階を補完するものであり、健康との因果関係に関する情報や確実性が十分ではないと考えられる場合にのみ引用されるようなものではないという意味において、”支配的な (overarching)”概念であるといえる。従って、この予防的枠組みは、公衆健康を守ることを意図した措置についての選択肢や決定を検討する時にはいつでも実施することができる。

P.3
 予防原則が適用されてきた方法には多くの相違があり、また公衆健康問題に対する有用性を混乱させるような広範な論争にさらされてきた。予防の枠組みは、特に予防原則の適用に対して指摘される批判の多くを克服するように意図されている。

予防の枠組みの目標

 公衆健康に関して、予防的措置を適用する全体的な目標は、健康へのリスクの可能性を削減することにある。最終的にそのようなリスクが存在しないことがわかったなら、そこでとられたどのような措置も健康を守ったことにならないし、資源が不必要に費やされたことになる。しかしこのような結果は、リスクは存在しないものとして公衆健康に関する措置が遅れたり無視されたが、最終的には実際にリスクは存在し、しかも深刻であったというような場合よりも受入れられ易い。もちろん、一方で何もしない、他方で予防的措置をとる、そのどちらを選択するかは当該リスクの程度による。
 もし、選択された措置がそれほど負担にならず、高価でないならば、また、問題のリスクが深刻なものであるならば、予防的措置は正当であるように見える。予防の枠組みでは、たとえリスクの確実性がなくても、それらがリスクの可能性に釣り合う限り、措置がとられる。

 予防の枠組みは2つの目標を持つ。

(@) 作用因子(物質)が取り込まれる前に、健康に対する脅威を予測し、暴露を削減するために適切に対応すること

 理想的には、予防の枠組みの中で考えるにあたっては、作用因子(物質)を取り込む前に、優先度としてのリスクについて問い直すということである。例えば、「どのレベルのリスクなら許容できるか?」 とか 「どのくらいの汚染なら人間や生態系は吸収できるか?」 と問う前に、予防的戦略ならば、まず 「我々の目標を達成しつつ、どのくらいの汚染を我々は回避できるか?」 「予防のための代替案、あるいは機会は何か?」と問うであろう。これらの質問は被害の証拠が現れる前に、常々、発せられるべきである。

 予防的枠組みは、着手するかどうかの事前検討を通じて新技術あるいは作用因子(物質)を導入する最初の提案の段階からリスクを予想する。それは、実施後は、潜在的な結果を監視する義務を負う。このようなやり方で、予防の枠組みは、自然に公衆健康政策と措置に統合され、理想的には、たとえ入手できるリスク情報が不完全であっても、情報に基づく決定を可能にし、暴露を削減する選択肢、技術、そして製品の幅広い範囲の中から包括的に分析し選択するツールとなる。

(A) 作用因子(物質)が取り込まれた後には、潜在的あるいは知覚できるしかし証明されていない健康問題に対する公衆の懸念に目を向けること

 予防の枠組みは社会的及び科学的展望を統合する。リスク認知は複雑な社会的構成概念である。その多面性が、提案されたリスク管理の選択肢に対し、個人による異なった対応と様々な関係者による多様な反応を導き出す。
 適切な調整案を選択するということは、それが科学的確実性の程度、被害の潜在的な大きさ、影響を受ける集団の規模、及び、科学と社会の相互作用に依存するので、複雑かもしれない。
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 一般大衆と科学者とではリスクの存在について誤りが生じることに対する受け入れ方が異なるかもしれない。
 科学者は通常、リスクが真実であると受け入れる前に、仮説に基づく研究により具体化した多くの証拠を求める。例えば、科学者は、もし偶然性により生じる証拠の確率が5%以下なら、そのリスクを真実のものとみなすであろう。このように科学者は一般的に、それが存在しない時に何かが存在するとは言わないよう注意深くなる。
 一方、公衆は、不確実なそして曖昧な情況を恐れる。例えば、市民は、存在しないと考えられた何かが存在すると示されるより、存在すると考えられた何かが存在しないと示されることの方に、統計的には無関係に、寛容である。言い換えれば、公衆は真実のリスクが見逃されることを望まない。

科学の役割

 予防的枠組みは、社会的要素、価値、そして経験に関する科学的証拠、あるいは観察に基づく展望を認め、目を向けるべきそれぞれに対する基盤を提供する。科学に基づくリスク管理は、健康リスク評価の証拠の確実性と適切性を評価するための、研究者間による相互レビューされた論文の評価を頼みにする。
 経験又は観察に基づく展望と、さらに人々の評価の妥当性を認めることは、知識のギャップ、及び科学的評価の網から目こぼれしたかもしれない証拠の不十分な個所を見つけ出すことに役立つ。このために、予防の枠組みは科学に基づくリスク管理に置き換わるのではなく、むしろそれらを強化し、わからないことあるいは十分に理解されていないことを評価する一方、わかっていることは何でも受け入れようと試みる。

 通常は証拠に基づく評価の一部とはならない追加情報を含めることによって、予防の枠組みは、彼ら自身の経験が問題を理解するための合理的で知的な基礎となる、そのような関係者のニーズに注意を向ける。科学的に確かな情報がなくても観察と経験は示唆に富み、有益なことがあり、従って分析において適切な役割を担う。科学及び経験又は観察に基づく強化された展望は、選択肢の有効性を評価する上で助けになり、意図しない結果を避けることに役立つ。
 予防の枠組みを用いて市場に出された後の調査を行うことにより、特別の配慮が必要な感受性の高い集団、国、又は地域を特定することなどを含む、早期警告を効果的に検知できるかもしれない。

予防の枠組みとガイドライン

 完全な科学的情報がない場合、予防の枠組みは:
  • 既存の科学を基礎とするガイドラインを置き換えるものではない。人間の暴露を制限する全ての国際的ガイドライン及び多くの国のガイドラインは、一貫性があり、再現性があり、他の研究機関でも確認されている健康への影響についての研究結果に基づいており、人間に有害な物理的、生物学的、化学的な作用因子(物質)への暴露レベルを明確に特定するものである。さらに、暴露限界は、既知の影響に関し特定されたどのようなしきい値に対する不確実性をも許容する安全係数を含んでいる。健康保護に対するそのようなアプローチは予防の枠組みにおいても本質的である。

  • 既存のガイドラインを拡張または展開するには適さない。すでに確立されたガイドラインがある場合には、それらの科学的基礎が、暴露制限を勝手に下げるために予防の枠組みを用いることで、ゆがめられてはならないということが重要である。
予防的措置を用いることの法的関係

 ある社会、又は社会の一部は、健康へのリスクが真実であるということを容認すると見られるような場合には予防的措置を採用したがらない。幾分、この懸念は公衆のこの問題に対する理解に関係している。
 この懸念は、必ずしも完全には払拭できないが、きめ細かなコミュニケーションによって改善することができる。
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 しかしこの懸念は、幾分は、法律上のものである。すなわち、予防的措置を採用することは、責任を容認すると解釈されることもありうるかもしれない、また、予防的措置をとる以前の同じような暴露についての責任をも暗示するととられるかもしれない、さらには、そのような行為を行なう人や国家当局、あるいは企業を、なぜそのような行為を行なったのか、あるいは行なわなかったのかについての正当性を法廷で述べなければならないような情況にするかもしれない、ということである。

 予防的措置を実施した場合、人や国家当局、あるいは企業は予防的措置をもっと早く講じなかったことによるどのような結果についての責任も認めさせられることはない、あるいは、押し付けられた予防的措置が必要である、あるいは適切であるということを認めさせられることはないということは、明白に認められるべきである。

3.予防の枠組みのプロセス

 ”リスク評価とリスク管理に関するアメリカ大統領/議会指令 1997” (http://www.riskworld.com) で採用されたリスク管理プロセスは Fig.1(a) に示される。そこでは既知のリスクのリスク管理サイクルが示されている。そこでは可能性のある選択肢の分析が浮き彫りにされており、決定に至る過程をオープンにするとともに、全ての関係者の利害を明確にすることとなっている。
 不確実なリスクのリスク管理サイクルは、Fig.1(b に示される。そこでは既知のリスクの管理サイクルの属性は保持されているが、さらに予防措置の考え方が付加されている。
 支配的な予防の枠組みはFig.2 に示される。既知及び不確実なリスクに関するリスク管理プロセスの統合である。


Fig. 1a. Risk Management Framework for Known Risks

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Fig. 1b. Risk Management Framework for Uncertain Risks


Fig. 2. Precautionary Framework for Public Health Protection

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問題に関すること

 既存のリスク管理の枠組みは、ほとんど、既知のリスクを取り扱っている。それらは問題を特定すると、事実(証拠)と測定に基づいて脈絡を明らかにする。ガイドラインまたは制約が便益−コスト分析に従って設定されるかもしれない。
 法令、規制、叉は指針が一度設定されると、測定に基づき、これらの規準に従っていない時に問題があるとみなされる。危険であることがわかっている物質の特性と似ている化学的または物理的特性を持った物質のように、潜在する根拠がもしあれば、起こりうる問題 (すなわち、既知のリスクではない問題) として考慮される。

 予防の枠組みには不確実なリスクとして定義される問題も含まれる。全てのリスクはある程度は不確実であるが、このレポートでは、不確実とは従来の科学的規準では解明されていないリスクを指し、不確実であるという場合には、その度合いだけではなくリスクが存在するかどうかということも含む。
 有害な影響が起こるかもしれないということは、受け入れることのできないリスクを有する他の行為、製品叉は情況との類似による、あるいは、いかに被害が引き起こされるかについての合理的で論理的な説明 (必要に応じて研究者間のレビューを受けたテスト) を示すことによる、あるいは、本質的な科学的未知を特定することによる、経験叉は観察だけに基づく証拠に由来する。ここでは、経験、類推、知覚が重要な役割を果たす。
 不確実なリスクもまた既知のリスクとして定義するためには不十分で、結論に達しない、あるいは不正確とみなされるような証拠を持っているかもしれない。
 予防的措置を考慮する時には、不確実なリスクに対する説明が、特にリスクの事実に基づく証拠が弱いあるいは主観的であるような場合には、重要な論点として認識されなくてはならない。

 予防の枠組みはリスクのある部分だけに集中するということはない。例えば、一つのリスクを抑制すると他のリスクが増大するかもしれない。予防の枠組みはリスク全体に焦点をあてるようなやり方で適用されるべきものである。

 病気と暴露の特性とともに、感受性の高い集団の保護や暴露の不公平のような重要な信念と社会的価値は、不確実な問題を定義する時に重要な考慮すべきことがらである。多くの社会では、老人や子どもは彼ら自身のリスクを効果的に管理することはできないので、老人や子どもに対する配慮を高めている。さらに、多くの社会は、潜在的に増大する脆弱性、生涯にわたる暴露の可能性、及び子どもは将来そのもであるという理由から、子どもや胎児は厚く保護されるべきであると信じている。

 実際の、そして将来における暴露(個人と全体)の分布と程度は、潜在的公衆健康へ与える影響と問題の不確実性への寄与を決定する要素となる。従って、それらは予防の枠組みの中で考慮されるべきである。例え比較的小さな(従って検知が難しい)暴露であっても多くの個人が暴露すると公衆健康に重大な影響を与えるかもしれないので、広い範囲での暴露には特に注意を払われなくてはならない。

 不本意な暴露は、特にリスクと便益の分布がある期間、ある地域及び社会的地位にわたって不公平で不当であると見られるよう場合には、枠組みの中でいかにリスクが取り扱われるべきかということに対し、影響を与えるであろう。社会の中で恵まれない境遇の人々が不本意に直面する潜在的なリスクに対し、特別な配慮が払われなくてはならない。

 当然のことと思われる健康への影響の特性もまた、知覚された問題を定義する時の一つの要素となりうる。予防の枠組みの中でとられる行為は健康への悪影響を防ぐことを意図している。
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 ある病気、例えばがんは特に恐れられている。その一方で、頭痛や不眠などは、特に深刻でもないし治ることもあるが、それでも個人の安寧と生産性に深刻な影響を与えるので、よく考慮されるべきである。

 予防の枠組みは、適切な救済措置を考慮する時に異なった重みを提供されるので、不確実なリスクから既知のリスクを識別することができる。

リスク評価

 既存のリスク管理の枠組みは分かっていることに注目するので、科学が重要な役割を果たす。科学は厳格で多分野にわたり、科学に基づく評価は証拠の重みに基づく。しかし、不確実性とリスクの妥当な評価に必要な仮定もまた明らかにされなくてはならない。
 不確実性は評価のあらゆる段階で存在する。危険の存在、暴露の程度、そして暴露と病気の発症または深刻さとの関連などである。科学的調査がどうしても必要というわけではない時には、仮定あるいは他の証拠からの類推が用いられる。可能なら予想される影響の範囲を提示することが望ましい。

 最良の予防の枠組みは pre-emptive であり、従って未知なことあるいは不確実なことを明らかにするよう試みることである。このようなやり方で、予防の枠組みは、従来の証拠を基礎とした既知のリスクの評価を拡張する。
 重要な証拠 (例えば、疫学的叉は実験室での調査) がない時には、関連する知識のギャップについての記述が特に重要である。我々の現在の知識の境界と存在するギャップの両方の評価は科学によって決定することができるし、決定すべきである。未知のことを明らかにするということは、全ての行為と暴露に対して政策を展開するということではない。

 ある人たちにとっては、疫学的あるいは実験室での調査で病気の存在を実証できないことは、当該物質との因果関係はないということになる。しかし、長い潜伏期間 (最初の暴露から病気の証拠があがるまでの間) は多くの病気の特徴であり、長い年月の間、新しい暴露がそのような被害をもたらす可能性があるということを我々は理解することができない。限られた時間枠の結果、病気を実証できなくても、その病気が将来のいつかは起きるという可能性を除外することはできない。

 同様に、実験室での動物テストによる病気の実証ができなくても、それは影響がないということではなく、テスト装置の問題かもしれない。法的紛争に対する情報提供を前提とした動物テストでは一般的に危険を特定することが強調される。
 多くの発表されている研究は、発症率や危険の深刻さが、環境に関連性した異なる用量によって、どのように変化するかについては十分に解明していない。
 用量−反応の関係は、しばしば、環境的には不適切な非常に高用量からの外挿によって導き出されている。多くの化学物質への暴露において、低用量での用量−反応関係は健康にとって非常に重要であるのに、もっと高用量からの外挿によらざるを得なかった。
 ある危険物質については、信頼性のある影響を検出するのに必要な高用量での研究を実施することができず、いまだに動物実験に基づく倫理的ガイドラインに基づいているものもある。

選択肢の生成

 既存のリスク管理の枠組みでは、健康の予防に役立つように考えられた選択肢は、通常、リスク評価の結果として得られた法またはガイドラインに合致するよう作られている。総合的な目的は、既知の健康影響に対し保護できると認められているあるレベル以下に暴露を抑えることである。そこでは、選択肢の生成は工学的な解決方法によって、あるいは浄化によって暴露を減少することが強調され、技術的実現性によって推進される。
 教育、法規準拠への強制、汚染税、市場原理なども選択肢生成に役立つかもしれない。それが効果的であるなら、高度に不確かなリスクに対しては通常、最も抵抗が少なく、最もコストのかからないアプローチが選択される。

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 予防の枠組みは、不確実なリスクに対応して開発された選択肢を加える。ここでは、その目標は暴露を削減する方法を見つけることであり、可能性ある選択肢を生成することが、すでに特定されている目標レベルに合致することを制限するようなものであってはならない。従って、行動の修正(behaviour modification)のような個々の選択をともなう選択肢は、工学的あるいは技術的解決に沿って検討される。

 予防の枠組みは、最低限のものから厳格なものまで、応答選択肢(response options)を生成する。有害性の確実性と深刻性の程度は採るべき行動のタイプ決定する上で重要な二つの要素である。リスク管理の選択肢の範囲は下記のように示される。

リスク管理における選択肢
  • 公式な措置はとらないという決定は、リスクが非常に小さい、あるいは公式な措置をとるには証拠が不十分な場合に適切な対応である

  • 研究は我々の知識のギャップを埋め、問題を特定するのを助け、将来のよりよいリスクの評価に役に立つ

  • 用心深い待機:研究と測定の結果、及び、規準、規制、その他の決定を監視する

  • 意思伝達計画(コミュニケーション・プログラム)は人々が問題を理解し、プロセスに参画するようになり、何をなすべきかについて彼ら自身が選択することに役立つ

  • 補償が、職場あるいは環境中における、より高い暴露の受入の対価として提案されることがある。人々は高い暴露を受け入れる対価として価値ある何かを受入る意志があるかもしれない

  • 規制は、潜在的にリスクのある事象の発生、叉はその影響を制限するために、政府がとる公式の措置である。規制は多くの様式をとりうる。例えば、リスクを生じるような行為やプロセスを抑制するような、あるいは、リスクを生じない行為やプロセスを推進するような経済的な動機付け、などである。法規はまた、リスクの効果的な削減を確実にするよう意図したプログラムを含むかもしれない。数値規準は法への準拠の状態を示す、あるいは規定されずに達成する目標を示す方法を促すかもしれない。

  • 工学的選択肢(緩和)は、暴露を、最終的には既知のあるいは知覚できるリスクを削減するために、システムを工学的に変革する。緩和とはシステムを再設計する、遮蔽する、あるいは防護装置を設置することなどを意味するかもしれない。

  • 暴露の制限、叉は暴露源の禁止は、被害の確実性の程度が高い時に用いられる選択肢である。制限や禁止のコストが低い場合にも当然である。暴露制限の方法として、しばしば実行規準は設計規準であることが好ましいとされる。それは健康と安全の目標を達成する上で、より柔軟性があるからである。


 極端な場合、ある物質や行為を禁止するということは代替案があるかどうかにかかっている。もしそうならば、潜在的健康影響、コスト、便益への代替案が評価されなくてはならない。代替案がない場合には、評価はその物質や行為がもたらす潜在的に有害な影響に対する便益に焦点をあてる必要がある。
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 他の極端な場合は、何もしないという選択肢もまた、同様な手法を用いて評価されるべきである。 ”何もしない” という選択肢は、しばしば最も穏やかな選択肢であるが、相当なコストが発生することになる。増大する公衆の懸念と不安は、健康に悪い結果と経済的に高価なコストをもたらす可能性がある。

 これら両極端の間で、他の措置や調停(interventions)を考慮する必要がある。ある措置が最小のコストでできるなら、コストのかかる他の措置に要求されるよりも少ない証拠ですむかもしれない。予防の枠組みは釣り合いの取れた対応を求める。証拠がしかっりしていればいるほど、より強力な対応や措置を考慮することをより強く正当化することができる。

選択肢の評価と選択

 選択肢の評価は、たとえ有害性とは関係が薄そうであっても人間に対し有害な影響を引き起こす可能性という ”よい理由” がある時には、実施されるべきである。 ”よい理由” は、科学的証拠、経験や観察だけに基づく確信、叉はそれらしい原因の仮説などに基づくことができる。予防の枠組みでの選択肢評価は、どのような選択肢がとりうるかというだけではなく、既知の叉は不確実なリスクの証拠の特性や強さにも依存する。
 暴露を受ける集団の大きさがここでは明らかに重要である。強い客観的な証拠は、科学的に弱い証拠あるいは経験や観察だけに基づく証拠よりも、より厳しい救済措置 (選択肢) の検討をしやすくする。すなわち、健康への影響が広い範囲に存在する叉は深刻であるという証拠は、範囲が限られ、それほど深刻ではないという証拠に比べて、より厳しい選択肢の検討がなされるということである。

 リスク評価によりある危険を特定された場合には、選択肢評価は便益−コスト分析 (すなわち、異なる健康保護のレベルをもつ代替的な健康規準 (例えば、1/106 のリスク) )の達成に関する便益とコストを評価するための経済的手法) 、及び効果−コスト分析 (例えば、特定の健康保護の目標を達成する上で最もコストのかからない方法を特定する経済的手法) に従って実施される。
 これらのこと、及び選択肢評価の選択に関しては、アメリカ大統領命令 (http://www.riskworld.com) に述べられている。

 リスク評価が不確実な健康への危険性を特定した場合には、選ばれる選択肢はやはり可能性あるリスクに釣り合ったものでなくてはならず、原則として、これは便益−コスト分析によって実施される。
 例えば、国際がん研究機関 (IARC) または同等の機関が、ある物質を ”発がんの可能性(possibly carcinogenic)” あるいは 他の疾病原因の”可能性あり(possibly)” と分類した場合には、既知のリスクの場合と同様に、便益−コスト分析は合理的に定量化し、客観化することができる。
 科学的証拠がこれよりも希薄な場合には、便益ーコスト分析は、その客観性が小さくなり、満足がいくものではなくなり、支持しにくくなる。従って、便益−コスト分析は非常に低コストの選択肢だけに限定されるかもしれない。しかし、例え、コストがどんなに安く見えても、”低コストに見える”選択肢が本当に低コストであることを確認するために、少なくとも基本的な便益−コスト分析は実施されるべきである。

便益評価

 選択肢評価の第1段階は、調停(intervention)により得られる暴露削減の便益を評価することである。このことは、調停が暴露の異なる面に影響を与えるかもしれない(リスク・オフセット)、又は他の人々あるい集団に暴露を移転する(リスク移転)かもしれないという理由で複雑となる。もし予防的調停が新たなリスクへの暴露に通じるなら、そのような状況も考慮されるべきである。
 原則として、調停が集団に及ぼす暴露のパターンを描いた完全な絵が必要であるが、実際には、単に全ての必要な情報が入手できないという理由で、現実的に不可能である。
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 しかし、削減された暴露を表す一つの数字で結果を適切に表現することができると仮定することは避けることが重要である。

 第2段階は、考慮している健康への影響の深刻さを削減する暴露削減の便益を評価することである。暴露を削減する努力が実行可能ではないような情況では、健康への影響の深刻さを最小にする選択肢を代替案として評価すべきである。

 便益は、それが1人当たりなのか、ある特定の集団のメンバー当りなのか、あるいは集団全体に適用されるのかを明確にする”単位”で表現する必要がある。さらに、利害の結果は明確に定義する必要がある。例えば、もし結果が病気の発生数ではなく死者数で定義されるなら、叉は疾病者の年齢ではなく死者の年齢で定義されるなら、異なる答がえられるであろう。
 便益は、『WHO世界健康報告2002 106頁』で得られる”調整された疾病生命年齢(disability-adjusted life years (DALYs))”で測定することができるが、各国政府は他の健康の結果を測定値として選択するかもしれない。

 人間の命や病気を金に換算するすることは難しいが、健康関連予算に限りがある場合、社会は特定の提案を評価し優先順位をつけるために、ある値を採用しなくてはならない。従って、比較と決定ができるよう概念的数値を決める必要がある。
 結果は、例えば、防止できた死者数のように様々な方法で数値化できる。防止できた死者の価値は通常、社会が1人の命を救うために費やす金額に基づくので、それは情況によって異なる。
 社会は価値の判定を行なうが、人がリスクに暴露することについて選択の余地がないような場合、潜在的な死が子どもに関わるような場合、そして死が、特にがんなど致命的な病気によってもたらされるような場合には、それらの死を防ぐためにはより多くの出費が必要となる。
 さらに難しいことは、頭痛や不眠などの結果についての客観的な評価である。これらの結果は調査が難しいだけでなく、社会や個人に対するコストもまた非常に不確実である。

 選択肢を予防的枠組みの中で評価する時には、リスクの不確実性について説明することが重要である。社会が特定の調停から引き起こされるリスク叉は病気の削減に対し導入した価値の値は、確立されたリスクが実際に削減されるということを仮定している。もし、そのリスクが実際には存在しないのなら、その数値を調整する必要がある。
 概念的には、暴露が病気を引き起こすという見込みに対し数値を導入する必要がある。この見込みは様々な方法で分析に取り入れられる。最も簡単なことは暴露が病気を引き起こす可能性に釣り合うよう調停の便益を削減することである。

コスト叉はコスト効率

 提案される調停(interventions)のコストを評価する必要がある。コストは3つの要素に分解できる。
 初期コスト (調停を実施するための実際のコスト) 、運用コスト (調停により直接的に発生する、あるいは、調停を実施し続けるために発生する反復コスト) 、及び、結果としてのコスト (調停を実施した結果、発生するコスト。例えば、調停により、人々が行動様式を変更しなくてはならなくなるような場合) である。

 あるコストは一度だけ発生するかもしれないし、他のコストは運用中に便益として発生するかもしれない。適用されるコストと便益は評価されなくてはならない。選択肢は健康リスクを削減する能力という観点から、既知及び不確実なそして関連するコストとその結果を勘案して、選択されるべきである。便益とコストの評価では全ての不確実性について十分な説明がなされなくてはならない。
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 各調停候補の便益とコストの評価が一度、得られたなら、それらは便益−コスト、あるいは、効率−コスト分析によって、どの調停が妥当かを評価するために比較することができる。実利的手法(utilitarian approach)により、削減コストが便益に匹敵するところまで暴露を削減することができる。しかし、社会は期待される便益よりも慎重な方、コストがかかる方を望む。これは全てのリスクに当てはまるであろうが、特に、深刻な結果に関する小さなリスクに対する保険料率、あるいは意図しない暴露に関わる情況、子どもの暴露、特定の疾病に関するリスクに関連する。
 これは価値判断の問題であり、コストと便益の比較、すなわち ”等しい” よりむしろ ”不釣り合いではない” ことの検証を行なうことにより、この段階で考慮することもできるし、もっと早い段階で防ぐべき災難(fatality)の評価から推論することもできる。

 各選択肢の便益−コスト分析及び便益−コスト効果分析

 第一段階は、どのような選択肢についても潜在的影響をモデル化し、短期及び長期にわたる実施コストを算出することのできる効率分析の手法を開発することである。次に、それぞれの選択肢の効率を個別に特定して評価する必要がある。様々な選択肢に対し異なった検討を加える。同様に、新しい情況に対する選択肢の適用にあたっては個別の評価が必要である。
 合理的な比較を導き出すことのできる貴重な基礎を提供する標準的アプローチを国際レベル叉は地域レベルで開発することが重要である。

 便益−コスト分析の最終的な評価は社会全体のレベルで、望ましくは政府によって実施されることが前提となる。従って、それは、産業界、納税者、叉はその他の誰が負担しようと関係なく全てのコストを含む。コストは、とりわけ処分可能な収入と健康との関係を通じて、常に結果をともなう。予防の枠組みの適切な適用においてはこれらの結果に目を向けるべきである。


選択肢の規準 (EC 2000)

 選択肢の選択は:
  • 望ましい保護レベルに釣り合いがとれていること

  • 適用においては、非差別的であること

  • 同様な情況で既に採用された措置と一貫性があること、叉は同様なアプローチが用いられること

  • 措置をとる叉は措置をとらない場合の潜在的便益とコストの検証に基づいていること (適切で実行可能なら、経済的コスト−便益分析を含む)

  • 新しい科学データが得られたら検証の対象とすること

  • より包括的なリスク評価に必要な科学的証拠を作成する責任を明確にできること
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選択肢の選択

 選択肢の選択は多くの規準を含むことができるが、その重み付けにあたっては、文化的な相違とともにリスク要素や疾病の相違を反映できる柔軟性が必要である。この件に関する EC コミュニケーションは予防原則の適用のためのいくつかの規準を定義している (上記 抜粋を参照のこと)。

選択肢の実施

 予防の枠組みのリスク管理サイクルのこの段階では、政策立案決定者は、広範囲な政策選択肢、及び恐らくはそれらの中の一つあるいは二つの勧告を提示されることであろう。これらの選択肢を受ける側と責任ある団体叉は実施団体は、選択肢が異なるであろう。しかし、どのような選択肢が選択されたとしても、広範囲な関係者の積極的な参加がその実施の成功に欠かすことができない。これらの関係者には、枠組みのそれ以前の段階の参加者を含むべきであるが、それに限定されるものではない。

 選択肢を実施するタイミングは、暴露の偏在、実証叉は知覚される健康影響の深刻さを含むこのプロセスの間に収集される情報、及びに容易に適用できる選択肢が得られるかどうかに依存する。対応選択肢の便益が好ましいものではなく、金銭的叉はその他で面倒なことになる場合には、もっと詳細で広範囲な関係者の参加が実施にあたって必要になる。

選択肢の評価

 既知の問題について既存のガイドライン、規制、叉は法に基づいて開発された選択肢は一般的にそれらに準拠しているかどうかについて評価される。準拠していない点が見つかるとそれはプロセスに対する新たな情報として、リスク管理サイクルを再度回すことができる。不確実なリスクに対して開発された評価がより難しい。しかし、成功をおさめつつある低レベル暴露技術の開発のような手法により、そのような選択肢にも光明が見えている。

 予防の枠組みの中では、うまくいったリスク管理の調査からの情報を追加する必要性がある。不確実なリスクが真実のリスクかどうか決定する新しい情報は、予防の枠組みのプロセスの中での展望を再定義し、新しいより適切な選択肢を生みだすことに寄与する可能性がある。

 最終的にはリスク管理プロセスの成功は、公衆の健康が改善された、あるいは、少なくともその選択肢を実施した結果がかえって悪くなるということがない、ということを示すことであろう。

 選択肢の評価は予防の枠組みの中のリスク管理プロセスの終端ではない。そのプロセスは繰り返され、情報の変化及び社会の価値の変化に対応できるよう意図されている。

P.14
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(訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会)


化学物質問題市民研究会
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