予防原則がサンフランシスコ市に
(訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会
情報源:IGC Eco Net / The Precautionary Principle Comes to San Francisco
by Mark Hertsgaard , 10/07/03
http://www.igc.org/home/econet/index.html
掲載日:2003年10月11日


 予防原則は、 ”後悔するより安全を (better safe than sorry )” と言われている。もし、ある技術が生態系や人間の健康を脅かす恐れがあると考えられるしかるべき理由があるならば、確かな科学的証拠が出るまで行動を控えるのではなく、もっと有害性の少ない代替案を採用し、危険なその技術は避けるようにするのが最良である。

 サンフランシスコ市では予防原則が法律となったが、それは全くすばらしいことである。数年前、市はバスの購入にあたり、従来通りディーゼル燃料のバスとするか、クリーンな圧縮天然ガスのバスに切り替えるかの選択をせまられた。ディーゼル汚染は子どものぜん息と関連があるが、結局、市はディーゼル・バスを購入した。新しい法律の下ではこのようなことは起こらないであろう。
 地球温暖化を例にとろう。科学的な意見として、もし温室効果ガスがこのまま削減されなければ、大変な結果になるであろうと予測されている。したがって、予防原則によれば、更なる研究結果を待つのではなく、今、再生可能なエネルギーに切り替えなくてはならないのである。

 これらのことはすでにEU諸国では法律となっている。サンフランシスコ市がこの先例に従ったことで、環境擁護派を興奮させたが、ビジネス界は否定的であった。 ePublic Relations のウェブサイトは、 「予防原則はバイオテクノロジーから化学工業にいたるまで、ビジネスの”革新と進歩の息の根を止める”」 と警告している。
 予防原則はまた、有害性の疑いがあるだけで、ある技術を止めるのに十分であると断言している。しかし実際には、革新は違った方向に向けられている。
 サンフランシスコの法律は、政策立案者は、入手可能な最良の科学に基づき、技術的代替案を評価するよう要求している。

 予防原則が求めること、そして産業界が予防原則を恐れる理由−それは立証責任の移行である。現在は、政府は決定的な有害性が証明された後でなければ、ある技術を制限しない。例えば、1960年代に疫学者たちはアスベストと肺がんの関連について指摘し始めたが、結局政府がアスベストを禁止するのに十分な証拠であると感じるまでに30年かかり、その間に34,000人が死亡した。
 予防原則の下では、産業界は人間や生態系を実験材料にするのではなく、まずその製品が安全であるということを証明しなくてはならない。

 サンフランシスコの予防原則は控えめに始まった。それは市政府の行動にのみ適用され、ビジネス界や市民には適用されない。その主な影響は市の調達方針に出る。市の資産をクリーンにするために毒性の少ない化学物質製品の購入、公園での農薬使用の制限、などである。
 重要なことは事例を示すことである。予防原則の目指すところは被害が及ぶ前に環境的被害を止めることである。今のところは急進的な考えに見える予防原則もアメリカの政策決定において支配的になれば、それは革命的なことである。


(訳注)
サンフランシスコ環境コード 第1章 予防原則方針声明 (当研究会訳)
San Francisco Environment Code / CHAPTER 1 PRECAUTIONARY PRINCIPLE POLICY STATEMENT
サンフランシスコ市ウェブサイト
City & County of San Francisco

(訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会)


化学物質問題市民研究会
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