EWG プレス・リリース 2003年11月20日
カリフォルニア州の予防原則/反有毒物質の動きに
米化学産業界が秘密計画


情報源:Environmental Working Group
News Release Nov. 20, 2003
CHEMICAL INDUSTRY’S SECRET PLAN
TO ATTACK CALIFORNIA'S ANTI-TOXICS TREND


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2003年11月22日
更新日:2005年11月 4日


[オークランド、カリフォルニア、11月20日]−化学産業界は、世間の目をごまかす表向きの団体を使い、活動家へのスパイを行う策略で、カリフォルニア州における化学物質の安全性テストの拡大の動きを攻撃するキャンペーンの実施をひそかに計画していたことが、エンバイロンメンタル・ワーキング・グループ(EWG)が入手したアメリカ化学協会 American Chemistry Council (ACC)の内部メモで分かった。

 この内部メモ(Nichols - Dezenhall Precautionary Principle Campaign Proposal)は、厳しい環境法に反対するロビー活動のために、いくつかの企業と広告会社がすでに用いている人を誤らせる卑劣な策略を提案している。それは、アメリカ化学産業界の圧力団体である ACC がカリフォルニア州の ”予防原則” を取り入れた法律と規制の採用に反撃するために、危機管理会社を雇い、広告会社の攻撃犬として働かせることを提案しているものである。

 新たな化学物質はそれらが安全であると証明されるまでは市場に出すことが許されないという政策をもたらす ”予防原則” は、ヨーロッパでは確固とした足場を築いており、カリフォルニア州でも近年、この原則をいくつかの汚染物質、つい最近では難燃剤、に適用する措置を立法化している。
 公衆の 3分の2 がそのような保護は適切であるとすでに信じているのに、ブッシュ政権は、ここアメリカでそれらを実現することに反対している。

 このメモは、カリフォルニア州の ”予防原則” の採用は、アメリカ化学産業界全体への脅威であると警告している。なぜなら 「カリフォルニアの政治風土は、他の地域よりも ”予防原則” によって政策や思想が影響を受けやすく、また、カリフォルニアは他州の先頭に立つ先導州(首に鈴をつけた雄の先導羊)であり、もし、少しでもカリフォルニア州で成功すれば、アメリカ中の他の州に容易に広がる恐れがある」 からである。

 メモは ACC メンバーがワシントンを拠点とし、元 FBI や元 CIA を雇っているニコルス・デゼンホール社に年間 120,000ドル(約1,400万円)を支払い、 「活動家たちの計画、意図、協力関係に関する選択的機密情報を収集させること。アメリカ、特にカリフォルニアにおける ”予防原則” 運動の活動家たちに焦点を合わせること」を提案している。

 このメモで、ニコルス・デゼンホール社はまた、 「情報収集センターとして活動し、公共やメディアのフォーラムで予防原則を批判する独立の ”予防原則監視組織”を創設することを提案している。この組織は免税対象団体として設立する」 と述べている。

 EWG はこのメモを ACC から受領した化学産業界ではないある秘密情報源から入手した。ACC はこのキャンペーンを化学産業界以外にも働きかけていた。MS Word で書かれたこのメモは、Word に埋め込まれた文書情報から、サクラメントの ACC ロビースト、ティム・W・シェスティックによって 7月に書かれたことが確認された。

 11月19日、EWG の西海岸地区担当副代表ビル・ウォーカーは、ACC 会長グレッグ・レベデフと州政府総務担当副会長ロジャー・バーンスタインに対し手紙を送り、 協会がこの計画を実行するために、その会社を雇ったかどうか問い質した。手紙の中で、ニコルス・デゼンホール社の報告されている企みは、協会に反対する側のゴミ箱をあさる行為であるとしている。(この手紙は http://www.ewg.org で入手可能である。)

 「世間の目をごまかす表向きの団体を設立することは、第三者団体を使い、公然と人を欺く情報を流す常套手段であり、これは、 ACC がその加盟企業の製品の安全性に関し議論をすれば信頼と信用を失うばかりなので、当然のことである。しかし、 ”選択的な機密情報の収集” などはその方面で評判のニコルス・デゼンホール社がやりそうな、倫理に欠ける汚い企みである」 と 手紙の中でウォーカーは述べている。

 「すでにゴミ箱があさられたかも知れない一人として私は、 ACC がカリフォルニア州における公衆保護の常識を阻止するために、この計画を実施していた期間を少なくとも知りたいものだ。 ACC は数百万ドル(数億円)を費やして、自分たちは公衆に何も隠し立てなどしないきちんとした企業市民であるという広告と会社 PR を行っている」 とウォーカーは述べた。

 EWGは非営利の公衆健康と環境を監視する組織であり、地域の環境市民たちを奮い立たせるために情報を必要とする人々にその提供を行っている。
Environmental Working Group :
http://www.ewg.org


(訳注)下記をご覧ください。
予防原則がつぶされた事例: 環境正義に関するカリフォルニア環境保護局 諮問委員会の勧告最終報告(2003年9月30日)の紹介(当研究会訳)(05/11/4)


化学物質問題市民研究会
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