予防的取組方法・予防原則に関するカナダの展望
討議資料 2001年9月

(訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会
情報源:A Canadian Perspective on the Precautionary Approach/Principle
Discussion Document September 2001
http://www.ec.gc.ca/econom/discussion_e.htm
更新日:2003年7月27日


 この討議資料に述べられている諸原則は、カナダ政府、叉は政府部局及び機関の公式見解ではない。これらは討議目的用の文書である。


 序 文

 政府は、新たな被害のリスクに目を向け、科学的確実性が十分でない問題を管理することをしばしば求められてきた。さらに、リスクを管理する情況が変化している中で、このような要求が増大してきている。実際にカナダには、健康と安全、環境保護と天然資源の保全のための科学に基づく計画の中で、予防的取組方法/予防原則を実施してきた長い歴史がある。

 予防的取組方法/予防原則は、科学的リスク管理において特徴ある手法である。それは、深刻な、あるいは取り返しのつかない被害の恐れに直面している時に、科学的な確実性が十分でないということを、決定を遅らせる理由にしてはならないとしている。
 しかし、決定するにあたってその条件についての指針と保証が必要である。重大な科学的不確実性が存在する状況下において深刻な、あるいは取り返しのつかない被害のリスクに関する政策を決定しなければならないような場合には、指針と保証を明確に伝え、運用することが特に重要である。

 この討議資料 『予防的取組方法/原則に関するカナダの展望』 は、予防的取組方法/原則を適用する時に、一貫性、信頼性、及び予測性のある政策と規制を決定すことを支援するための、幅広い指針原則を概説するものである。これらの原則は現在のカナダの慣行を反映している。
 これらの原則を明確にすることにより、このような状況においてカナダはどのように政策決定を行なうのかを明瞭にし、国際的な議論においても明確で一貫した態度をもって、より積極的に参画する基礎を固めることができる。
 最も指針を必要としている分野でありと明快さと科学を基礎とする分野である公衆の健康と安全、環境、そして天然資源の管理に焦点を合わせる。

 この討議資料は、下記省庁の共同作業により作成された。
  • Agriculture and Agri- Food Canada
  • Canadian Environmental Assessment Agency
  • Canadian Food Inspection Agency
  • Department of Fisheries and Oceans
  • Department of Foreign Affairs and International Trade
  • Environment Canada
  • Finance Canada
  • Health Canada
  • Industry Canada
  • Justice Canada
  • Natural Resources Canada
  • Privy Council Office
  • Transport Canada
  • Treasury Board Secretariat

 この作業は、カナダ政府の ”科学技術の枠組み勧告:政府内における科学及び技術勧告の有効利用のための原則と指針 Framework for Science and Technology Advice: Principles and Guidelines for the Effective Use of Science and Technology Advice in Government”、及び、”統合リスク管理の枠組み Integrated Risk Management Framework”に則して、実施された。
 リスク管理に関するより完全な理解を得るためには、これらの文書を参照することをお勧めする。

 この討議資料の目的は下記の通りである。
  • 予防的取組方法/原則、及び枠組みの草稿を関係諸団体に知らせ、周知をはかること
  • カナダによる予防的取組方法/原則の適用のベースとして枠組みに反映されている概念、原則、及び指針に対し、関係者が示す反応を評価すること
  • 指針原則を検証すること、特にそれらが下記に対して適切なものとして了解されたかどうかの意見を入手すること
     ・プロセスの首尾一貫性と整合性が増大するか
     ・柔軟性と予測性の適切なバランスが備わっているか
     ・様々な分野で採用され得るか
     ・より一般的に、リスク管理の補完的ツールとして価値があるか


 目 次

序文
エグゼクティブ・サマリー
1.0 はじめに
1.1 リスク管理の情況変化
1.2 科学的不確実性と深刻、叉は不可逆的被害のリスクを扱う手法の重要性の増大
1.3 予防的取組方法/原則に関する政府の枠組みの必要性
2.0 全体的考察
2.1 適用における科学的ベース
2.2 透明性、説明責任、及び公衆参加
2.3 コスト効果
2.4 法的論点
2.5 国際的配慮
3.0 指針原則 適用における一般原則
3.1 予防的取組方法/原則の正当性
3.2 選択するリスク防護レベル
3.3 健全な科学的情報とその評価
3.4 立証責任
3.5 再評価とさらなる協議
3.6 予防的措置における透明性、説明責任、及び公衆参加の原則
3.7 暫定性
3.8 釣り合い
3.9 非差別性と一貫性
3.10 コスト効果
3.11 最少の貿易障壁
4.0 おわりに
5.0 質疑集
6.0 ウェブサイト
7.0 注記


 エグゼクティブ・サマリー

 科学と技術は最近数十年間で急速に発展し、複雑な科学知識と発見はかつてない爆発的な展開を見せている。それに関連する問題も複雑になってきており、時には甚大な被害のリスクにも関係しているので、政策決定が求められるが、それらは社会、通商、そして経済に深い影響を与え可能性がある。

 被害の可能性が存在する複雑な問題に関して政策を決定することは新しいことではないが、このような情況の下で、公衆の懸念が高まり、また、政府が、深刻で取り返しのつかない被害の可能性や科学的な不確実性に効果的に対応する能力についての議論が起きている。
 同時に、公衆は政府が科学的発見及び新技術の利益を社会全体のために最大限に活用しているかどうかを見ている。彼らは政府が社会が許容できるリスク・レベルに基づく強固な規制の枠組みを通じて、このことを実現することを期待している。

 政府は従来から、新たな被害のリスクに目を向け、科学的確実性が十分でない問題を管理することをしばしば求められてきた。しかし、リスクを管理する情況が変化している中で、予防的取組方法の重要性を強調する傾向が増大している。
 カナダ政府は、 ”1992年の環境と開発に関するリオ宣言” の原則 15 の声明を支持するものである。

 ”環境を保護するために、予防的取組方法は国家により、その能力に応じて広く適用されなくてはならない。深刻な、あるいは取り返しのつかない被害の恐れがある場合には、科学的な確実性が十分ではないということをもって、環境の悪化を守るためのコスト効果のある措置を遅らせる理由にしてはならない。”

 この言葉とそこに述べられている手法は環境保護の分野で実施しているカナダの施策と一致するものであり、その手法は、カナダ環境保護法 (Canadian Environmental Protection Act) など、カナダの環境関連法への反映が増大している。
 実際にカナダには、健康と安全、天然資源保全のための科学に基づく計画の中で、予防的取組方法/原則を実施してきた長い歴史がある。

 予防的取組方法では、深刻な、あるいは取り返しのつかない被害の恐れがある場合には、科学的な確実性が十分ではないということをもって、決定を遅らせる理由にしてはならないとしている。しかし、決定するにあたってその条件についての指針と保証が要求される。特に、重大な科学的不確実性が存在する状況下において、深刻な、あるいは取り返しのつかない被害のリスクに関する政策を決定しなければならないような場合には、指針と保証が求められる。
 予防的取組方法/予防原則 [1] は、リスク管理 [2] における特有な手法であり、それは、まず、選択と決定の段階における展開に影響を与え、最終的には、価値と優先順位に基づく判断によって決定される。

 1992年以降、カナダ及び国外で予防的取組方法が引用される頻度が増大し、重要な論争や意見の相違を生み、誤用や濫用の可能性も指摘されてきた。世界中の各国がこのような難問に取り組んできた。
 予防的取組方法がきちんとした科学的根拠のない感覚的な(perceived )リスクに適用されるかもしれない懸念も出てきた。不必要に技術革新を抑制する、あるいは社会の特定分野に不公平なコストを賦課する、あるいは、例えば、新たな医療関連製品や技術の発展を阻害することにより既存リスクの削減を妨げる、などの懸念である。

 予防的取組方法の情況下でのリスクに関する政策決定は、科学が持つ本来の動特性によって複雑なものになっている。例え、科学情報が結論に達しないものであっても、リスクは対応され、生活水準は維持したいとする社会の期待に応えて、政策決定はやはりなされなくてはならない。

 カナダの予防的取組方法の適用は特定な情況に対し、柔軟性と敏感性をもって行なわれてきた。しかし、個々の適用は、特定の法規や国際的な義務 (例えば、漁業資源管理) によって求められる結論を成し遂げるために、ルール・ベースの取り組み手法が採用されている。
 予防的取組方法の適用は、しばしば、特定の情況や要素に導かれるが、全ての情況に適用する広範な諸原則が存在する。
 ここに提案する ”指針原則” は、現在のカナダの施策と一貫性を持つものである。それらは環境における科学ベースのリスク政策決定にあたって予防的取組方法を適用する場合、全体的な一貫性を主張するものであるが、政策決定者に対し、司法当局と一致しないやり方で行動することを求めるものではない。

適用における一般原則

 適用における一般原則は、予防的取組方法の状況下で政策決定の姿を明確にすることを示唆している。予防的取組方法では、深刻な、あるいは取り返しのつかない被害の恐れがある場合には、科学的な確実性が十分ではないということをもって、措置を遅らせる理由にしてはならないとしている。この討議資料の中で述べる指針原則は、特に、重大な科学的不確実性が存在するが、深刻な、あるいは取り返しのつかない被害の恐れがある情況へ適用することができる。
 また、予防的取組方法のより幅広いリスク管理への適用に対する指針としても役に立つ。
  1. 予防的取組方法は、リスク管理(risk management)における適法で特徴ある政策決定ツールである。
  2. 政策決定が、社会が選択するリスク防護のレベルによって導かれることは適法である。
  3. 健全な科学情報とその評価が、予防的取組方法の適用にあたって、特に下記に関して、基本とならなければならない。
    @ 行動するか、しないかの決定 (すなわち、予防的措置を実施するか、しないか)
    A かつて政策決定がなされた措置の採用
  4. 要求される科学的証拠は選択された防護レベルに対して適切に確立されるべきである。さらに、情報のベースを提供する責任 (立証責任) が割り当てられるかもしれない。科学情報ベースとその作成責任は知識の発展と共に移行するかもしれないということが認識されている。
  5. 決定のベースを再評価するための、及び、今後の協議のために透明なプロセスを提供するめの、仕組みが存在すべきである。
  6. より大きな透明性、明瞭な説明責任、そして公衆の参加を求めることが適切である。

予防的措置の原則

 予防的措置 (Precautionary Measures) の原則は、かつて採用された政策決定に適用する特定の特性を提案する。
  1. 予防的措置は、科学、技術、及び社会が選択する防護レベルに基づき、再検討されるべきである。
  2. 予防的措置は、着目するリスクの潜在的強度、及び社会が選択する防護レベルに釣り合うべきである。
  3. 予防的措置は、非差別的であり、類似の状況下で以前にとられた措置と一貫性があるべきである。
  4. 予防的措置は、下記目標を持って、コスト効果的であるべきである。
    @ 最少のコストで社会全体の実質利益
    A 措置の選択における効率性
  5. 一つ以上の選択肢が合理的に上記特性に合致する時には、最も通商障壁が小さい措置を適用すべきである。

 この討議資料では、まず、リスク管理情況の変化を見直し、予防的取組方法に適した全体的な考察を検討している。その後、予防的取組方法の解釈と適用のための指針原則を概説している。最後に、一般大衆、及び関係者との対話を刺激し、予防的取組方法に関するカナダの現状の施策について理解と、ある種の合意を得るために、質疑集を設けている。


1.0 はじめに

1.1 リスク管理の情況変化

 技術、地球規模化、そして知識ベース経済は、私的及び公的分野の双方に多大な変化をもたらしている。市民と企業の懸念はこれらの変化とともに高まっている。
 個人と企業の活動に本質的に内在するリスクは、そのような変化についてまわり、より大きな不確実性を生み出す。リスクを伴う出来事の情況が鮮明になるとともに、これらの変化は、リスクを管理し、現状を変革する機会をとらえるための、より効果的な戦略の必要性を浮き彫りにしている。

 政府は従来から、そのような状況下での政策決定に責任があるが、現下の情況では、特に環境、または、物理的、社会的、そして経済的な市民の幸福を守るということの委託に応えて、健全な政策決定を行なう責任がある。
 期待される当然の勤勉さ、公衆及びメディアがもっとよく知ること、地球規模化と競争激化が急速に進む中でのカナダの投資環境、そして透明性と公開性の要求、などを含む、いくつかの要素がこのことに関係している。
 科学的情報と勧告がしばしば政策決定に用いられるが、しかし、政策決定はまた、不確実性、または不同意、あるいはその双方をしばしば伴うものである。

 政府は、科学と技術を支援することと、そのリスクを監視し、評価することとのバランスをとり続けている。例えば、政府の世論調査によれば、カナダ国民は、バイオテクノロジーは国の将来と発展のために重要であると信じているが、彼らはまた、政府がその安全性について常に監視していることを期待している。

 最後に、政府は科学と政策立案を如何に統合するかということを重要な課題としている。科学における不確実性が重大なレベルに達した時には、論争と異なる意見が湧き出ることが期待される。

1.2 科学的不確実性と深刻、叉は不可逆的被害のリスクを扱う手法の重要性の増大

 政府は、完全な科学的確実性の下で政策決定を行なうことはほとんどないし、ゼロ・リスクを保証することもできない。実際、政府は従来から、新たなリスクや潜在的な機会に注目しながら、重大な科学的不確実性が存在する問題を管理しなくてはならない。しかし、科学的に不確実であっても、政策決定をしなくてはならない。このことにより、予防的取組方法を理解することの重要性が増大する。

 カナダ政府は、 ”1992年の環境と開発に関するリオ宣言” の原則 15 の声明を支持するものである。

 ”環境を保護するために、予防的取組方法は国家により、その能力に応じて広く適用されなくてはならない。深刻な、あるいは取り返しのつかない被害の恐れがある場合には、科学的な確実性が十分ではないということをもって、環境の劣化を守るためのコスト効果のある措置を遅らせる理由にしてはならない。”

 この言葉とそこに述べられている手法は環境保護の分野で実施しているカナダの施策と一致するものであり、その手法は、カナダ環境保護法 (訳注:Canadian Environmental Protection Act, 1999 (CEPA 1999) など、カナダの環境関連法への反映が増大している。
 実際にカナダには、健康と安全、環境保護と天然資源の維持のための科学に基づく計画の中で、予防的取組方法/原則を実施してきた長い歴史がある。




 予防的取組方法では、深刻な、あるいは取り返しのつかない被害の恐れがある場合には、科学的な確実性が十分ではないということをもって、措置を遅らせる理由にしてはならないとしている。しかし、決定するにあたってその条件についての指針と保証が要求される。特に、重大な科学的不確実性が存在する状況下において、深刻な、あるいは取り返しのつかない被害のリスクに関する政策を決定しなければならないような場合には、指針と保証が求められる (説明的に描かれた図 2 参照)。
 予防的取組方法/予防原則 [1] は、リスク管理 [2] における特有な手法であり、それは、まず、選択と決定の段階における展開に影響を与え、最終的には、価値と優先順位に基づく判断によって決定される。

 予防的取組方法の情況下でのリスクに関する政策決定は、科学が持つ本来の動特性によって複雑なものになっている。例え、科学情報が結論に達しないものであっても、リスクに着目し、それをある範囲に留めておきたいとする社会の期待に応えるために、政策決定はやはりなされなくてはならない。




 1992年以降、カナダ及び国外で予防的取組方法が引用される頻度が増大し、重要な論争や意見の相違を生み、誤用や濫用の可能性も指摘されてきた。世界中の各国がこのような難問に取り組んできた。
 予防的取組方法が健全な科学をベースとしないリスクに適用されるかもしれない懸念も出てきた。不必要に技術革新を抑制する、あるいは社会の特定分野に不公平なコストを賦課する (例えば、使用許可が出される前に、絶対的安全性を求めること、等により) 、あるいは既存リスクを削減することを妨げる、などであり、例えば、新たな医療関連製品や技術の発展を阻害することなどが挙げられる。
 一方、消費者やその支持団体など多くの関係者達は、予防原則をより適切な政策決定に導く新しい手法であるとみなすかもしれない。

 科学的不確実性が存在し、かつ急速に科学が発展しているので、 (もっと多くのことが分かってくるまで) 決定が自然に遅れる傾向がある状況下で、時には、彼らは、予防的取組方法を政策決定プロセスに厳格さをもたらす特別な措置であると解釈するかもしれない。
 また、予防的取組方法/原則は、健康、安全、環境と天然資源保護などの社会の価値の重要性に対する政府の具体的な公約であるとみなされることもできる。

 国際レベルにおいても、利害が大きいので、論争が活発に行なわれている。政策決定は、健康と安全、環境あるいは天然資源に対する重大なリスクに関係しており、結果は経済的に非常に大きな影響として現れるかもしれない。
 人間の健康を守ることを意図した政府の決定が、貿易相手国に壊滅的な経済影響を及ぼすかもしれないとして、相手国から保護貿易主義であると糾弾されることがある。論争や訴えを解決するいくつかの仕組みは存在するが、やがて通商上の報復戦略に通じる国家間論争にいたることになる。
 一方、これらの国々の市民は、一般的に国の経済的立場や投資環境を大事にするが、彼らは叉、社会の価値と優先順位が尊重され維持されることにも関心を抱いている。

 政策決定者は、重要な科学的不確実性に特徴付けられる、潜在的に深刻な、あるいは取り返しのつかない被害に取り組まなくてはならない必要性にしばしば直面するが、彼らは、そこで採用するプロセスと、結果としての決定に信頼性が保たれるようにしなければならない。
 すなわち、政策決定はリスクに精力を傾けるとともに、全ての公益、社会、及び経済と調和しなくてはならないということは明らかである。

1.3 予防的取組方法/原則に関する政府の枠組みの必要性

 カナダの予防原則の適用はそれぞれの情況において、柔軟性と反応性をもって行なわれてきた。しかし、個々の適用は、特定の法規や国際的な義務 (例えば、漁業規制) によって求められる結論を成し遂げるために、ルール・ベースの取り組み手法を採用する。
 予防的取組方法の適用は、しばしば、特定の情況や要素に促がされるが、全ての情況に適用する広範な原則が必要である。
 ここに提案する ”指針原則は” 現在のカナダの施策と一貫性を持つものである。それらは環境における科学ベースのリスク政策決定にあたって予防的取組方法を適用する場合、全体的な一貫性を主張するものであるが、政策決定者に対し、司法当局と一致しないやり方を求めるものではない。

 さらに、予防的取組方法適用のための原則に基づく枠組みは、連邦政府の ”統合リスク管理に関する枠組み”[3] を補完し、各部局の個別の運用を支援するものである。

 この討議資料は、協議用として、予防的取組方法のための連邦政府の枠組みの重要な要素となる指針原則を提案するものである。枠組みにおける4つの目的は下記のようなものである。

  • カナダ政府の予防的取組方法が適切で論理的でコスト効果があることを確実にするために、これらの手法の予測性、信頼性、及び一貫性を改善すること
  • 危機と不必要な議論を最少にし的確に機会をとらえつつ、健全な連邦政府の政策決定を支援すること
  • カナダ及び国外の公的、及び私的な関係者に対し、連邦政府の予防的取組方法の政策決定は厳格で健全で信頼性があるという、自信を高めさせること
  • 国際標準及び予防的取組方法の適用に積極的に影響を与えることできるようカナダの能力を高めること

 枠組みは、連邦政府の政策と実施についての指針原則を述べるものであり、リスク評価者や政策決定者のためのチェック・リストを用意するものではない。それは、政策決定プロセス及び政策決定そのものの適切性、合理性、及びコスト効果性を測定することに役に立つであろう。
 最終的には、枠組みは、政策決定者と影響を受ける団体が政策決定プロセスが指針原則に合致しているかどうか、そして、その決定がカナダの社会的、経済的価値、及び優先順位と調和しているかどうかを評価する際に用いるレンズのようなものである。


2.0 全体的考察

 以下の各節は予防原則に関連する全体的な考察について議論するものである。それらには、適用、透明性、説明責任、及び公衆参加のための科学的ベース、コスト効果性、法的問題、及び国際的な考慮が含まれる。
 これらの考察の分析は、その必要性や規準に一貫性があり予防的取組方法を適用するための指針原則に反映されなくてはならない。

2.1 適用における科学的ベース

 科学的プロセスは、ほとんど常に、不確実性と論争を伴う。従って、リスク管理のための政策決定プロセスでは、健全で厳格な判断が要求される。高度な不確実性、何が適切な科学的ベースかを確立できる要素、及び健全で厳格な判断という特徴的な局面を有するために、予防的取組方法は従来のリスク管理の中では独特な手法である。
 判断においては、何が ”十分に” 健全あるいは信頼できる科学的ベースか、どのような ”フォローアップ” 行為が妥当であるとみなされるのか、そして、 ”誰が” 信頼できる科学的ベースを作るのか、ということに精力を傾ける。

 リスク管理における伝統的な情況では、 ”健全な科学的証拠” とは一般的に、科学的理論を支える決定的で人を動かさずにはおかない証拠か、あるいは、合理的な疑いの範囲を超えたリスクの深刻さを示す重大な経験情報であると解釈される。

 予防的取組方法という情況においては、何が ”十分に ”健全あるいは信頼できる科学的ベースかということは常に難しく、議論となることである。重要なことは、深刻な、あるいは取り返しのつかない被害のリスクが存在するという健全で信頼できる事例を挙げることである。
 ”十分に健全な科学的情報” とは、経験的か理論的か、あるいは、伝統的な知識からの科学的データの基礎であり、その不確実性を含む理論の正当性の合理的な証拠を示すことができるもの、及び、そのようなリスクの可能性を示すものであると解釈される。

 重大な科学的不確実性がある場合、研究や科学的監視などのフォローアップ行為が通常、予防的取組方法適用の重要な要素となる。ある場合には、国際協定では科学的監視とフォローアップが要求される。そのような努力は、あるリスクでは科学的不確実性を減少させるのに役に立ち、改善されたフォローアップの決定をすることができる。しかし、あるリスク管理の領域では、科学的不確実性は解決するのに時間がかかり、あるいは、現実的な目的のためにはなんら解決にならないかもしれない。

 さらに、科学的思考と意見の完全な多様性を確保するために、政策決定の科学的ベースは各種の科学的情報源及び多くの分野の専門家から引き出されるべきである。
 しかし、政策決定者は特別の重みを科学者間の審査をうけた科学(peer-reviewed science)と、彼らの判断の合理性に置くべきである[4] 。科学の機能は、広く認められ信頼できる人々を含む諮問委員会(プロセス)によって、さらに補完することができる。

 誰が ”十分に健全な科学的ベース” (また、誰に ”立証責任” を負わせるかも含めて) に責任を持つべきかということは、しばしば異なる疑問を提起する。誰が科学的データを作成し、政策決定のベースを用意する責任を持つ者として任命されるべきか? 政策決定者は、誰が法的責任や権限を有するか、誰が科学的データを用意するために最適か、そして、誰がタイムリーに信頼性のある情報を提供する能力を持つか、というような規準を評価すべきである。
 重大な被害を及ぼす可能性があることに対し行動を起している団体が、一般的に責任ある団体と認定されるが、これもケースバイケースで決定することが最善であろう。政府や産業界の異なるレベルでの共同作業など、革新的な戦略も叉、導入されるかもしれない。
 科学的知識は発展するので、この責任は、政府、産業界、あるいは他者 (例えば、市場の製品の有害な影響を調査・報告している医師) の間で移行するかもしれない。最終的には責任ある団体は、裁判によってのみ決定されるかもしれない。

 気候変動はもう一つのよい事例である。大気中の温室効果ガスが増大しており、その増大は人間の活動が原因であり、地球の気候を変動させているようだ−ということは、科学的事実として幅広く国際的に合意されてる。しかし、気候変動の ”時機” と ”地域的特性” に関して科学的不確実性がある。また、温室効果ガスを減少させ、気候変動を許容範囲内に収めるために要する ”経済的コスト” について、大きな不確実性がある。
 科学的情報については結論に達しないので、生活の規準に対する社会の期待に合致し、かつ、リスクに焦点を合わせながら政策決定を行なわなくてはならない。
 急速に発展する科学と技術から生じる製品とプロセスのあらゆる可能性についての理解は、国際条約とともにカナダの法律と規制を実現する上で重要である。
 科学ベースの適用についてはその検討が始まったばかりであり、今後、政策決定に影響を与えるようになるであろう。

2.2 透明性、説明責任、及び公衆参加

 科学的不確実性によって特徴付けられる重大な叉は取り返しのつかない被害を公衆が受け入れがたい場合には、住民との関わりについて異なる手法が要求される。特にこのような状況下では論争と混乱を最少にし、公衆の信頼性を維持するために、政策決定においては、高度な透明性、より明確な説明責任、及び、より多くの公衆参加が必要である。

 現実的には、 ”公衆のリスクに対する許容度” 、あるいは、 ”社会が選択する防護のレベル” に関する理解が、より大きな透明性、より明確な責任説明、及び、より多くの公衆参加に対し役に立つ。
 予防的取組方法の政策決定は、しばしば論争を伴い、最終的には、価値観のバランス、経済的利害、そして緊急度に支配される。政策決定者は、公衆は一般的に健康や安全に関するリスク、国際社会におけるカナダの評判や通商上の立場の失墜、あるいは、影響が新しい、目に見えない、叉は遅れて現れるような未知のものに対する許容度は低いということを理解している。
 一方、公衆は、科学の不確実性や限界の特性について、もっと支配する、あるいはもっと理解するという意識がある場合には、より大きな許容度を持つであろう。そして、そのような許容度も時間が経過し、新しい情報が入り、社会の価値観と期待に変化があれば、それにともなって変わってくるであろう。
 そのような情況において、きちんと機能し、社会的に許容される解決策を求めることは非常に複雑で、難しくなる。

 予防的取組方法とその適用の科学的ベースの理解と信頼性を高めるために、不確実性に囲まれるリスクに関し、明確で、公開性があり、透明な情報源が関係者に示されなければならない。さらに、情報を双方向で共有するリスク・コミュニケーションの発展と、専門家と素人双方の政策決定における展望が、透明性と効果的な政策決定にとって重要となる。
 情報における透明性がなくなると、最終的には健全な政策決定の信頼性を損なうこととなり、間違った情報を訂正する機会を失うことになる。

 透明性が情報と展望の双方向交換を意味する場合には、公衆の参加は、より相互作用的で、知識と経験の多様な形態を持つ多数関係者との連動の方向に発展する。
 公衆の参加により、矛盾を解決する、叉は、特定のルールに基づいて問題解決する基盤を作り出すことができる。
 重要なことは、それが曖昧さや不確実性を認識させ、最終的には専門家及び素人双方の知識が関連しているという相互理解を促進させることができるということである。さらに、それは科学者間審査及び公衆からの不確実性とリスクに関する解釈を得る機会に弾みをつけることができる。

 予防的取組方法の政策決定は、公共の利益を達成するために、社会のある一部にコストを負担させることになるかもしれない。公衆と関係者が政策決定に参画することにより結論に合意を得られることもあるが、しかし、ある場合には、特定のリスクに対し、予防的取組方法を適用するかどうか、あるいはどのように適用するかの意見の相違を増幅することもある。
 プロセスを通じての透明性と公開性は、最終的には公衆参画戦略を成功に導くことに大きく貢献する。

 より明確な説明責任に関しては、公衆は政策決定プロセス及び、開かれた透明な監視と定期的に伝達される達成効果を通じて得られる現状の結果の双方に自信を持つことができる。

2.3 コスト効果

 コストについて検討する時に、経済的要素と広範な含蓄をもった2つの問題がある。
(1) コスト−便益性と、実施するかどうかの決定
(2) すでに実施に移された決定の潜在的な予防的措置としての効率性

 第一に、実施するかしないかを決定する時に、コスト−便益性評価は、政策決定の真の及び潜在的な影響を特定し、重み付けをする。しかし、科学的不確実性と複雑な相互関係 (例えば、限られた情報) により、広範なコスト−便益性分析はできないかもしれない。さらに、深刻なまたは取り返しのつかない被害が起きるかもしれない情況が、直接得られる科学的証拠は限定されているのに、早急な対処を要求される状態で、しばしば不意に発生する。
 最初は、政策決定者は、特に健康と安全に関わる場合には、広範なコスト−便益性分析を実施することよりも、早急に対処することに精力を注ぎがちである。しかし実際的なレベルでは、政策決定は潜在的なコストと便益を、できる限り明確に速やかに特定するとともに、どのようなリスクなら、例え不完全であっても健全で合理的な科学的証拠に基づいて、公衆はそれを受け入れる用意があるかを、見極めるべきである。

 第二に、予防的措置の効率を評価するためには、どの選択肢が最少の全体コストで (短期的及び長期的双方のコストを検討して)、最も効率的にリスク許容度を実現するかを決定する、様々な政策ツールを比較することが必要である。
 このプロセスでは、深刻で取り返しのつかない被害を及ぼすリスクに着目した2つ、あるいはそれ以上の等しく効果的な措置案が提案されることを想定している。結局、このプロセスでは、選択された防護レベルまでリスクを減少しつつ、より低い全体コストを実現する措置を選択することになる。  さらに、科学は発展するので、政策決定とそれに関連する措置のコスト−便益性が、開始時点と中間時点で、あるいは可能な限り長期間にわたり、評価され、考慮されることが本質的に適切である。
 ある問題の場合には、例えば生物多様性に関する政策決定の場合、正味の便益は長期間にわたって知ることができないであろう。しかし、現在のコストは評価されて最少化され、一方、リスクは削減されて、可能な限り便益は(技術革新により)最大化されているということが常に強調されるべきである。

 深刻で取り返しのつかない被害を及ぼす恐れはたくさんあるので、政策決定者は資源を如何に効率的、効果的に配分するかを考慮すべきである。また、社会がその政策決定から受ける正味の便益を確実にし (例えば、集団の一部としての子どもたちの健康状態を強化する)、また、革新や技術的変化を妨げる障害が不必要に導入されないことを確実にする、幅広いコストと便益を考慮すべきである。

2.4 法的論点

 予防的取組方法の適用に関する主要な難問の多くは、国内及び国際的に生じる法的な論点に関連することである。
 国際的な展望からは、法的論点は予防的取組方法/原則の国際法における位置付け、及び、国際法順守を促進するための救済に関連するものである。
 国内的展望からは、法的論点は予防的取組方法を法律にとり入れたことにより、深刻な脅威に直面した時に自動的に明確な法的義務が生じるかどうか、またその成文化が如何に国民の義務に影響を与えるかということである。

 カナダでは、国際法の慣習規則は、反対立法により制限されない限り、自動的に国の法の一部となるが、条約義務は立法化または行政府の決定を通じて履行される。条約義務の特性により履行の方法が決定されるが、国際的な法的義務を広範な様々な方法で履行することが可能である。
 これらは、以前から存在する法律で定められた、あるいは政治的命令の下での、行政的履行から、規制の立法化あるいは法律制定による履行まで広い範囲がある。
 最終的には、カナダは新しい義務を有効にするために、それが要求される場合にのみ、法律制定と規制に頼る必要がある。

 国際慣習法の規則は、参加国家の満場一致の合意をもって始動する。規則が慣習法になるためには、一貫した国家の履行実績を示す証拠や国際慣習法の下で履行するすることに法的拘束力があることを示す証拠など、多くの要素が示されなくてはならない。

 予防的取組方法/原則は非常に多くの国際条約の中に見ることができ、それに関するカナダの義務は、それらの条約の中での表現に支配される。一貫した国家の履行実績の明確な証拠が存在せず、opinio juris なので、カナダはまだ予防的取組方法が国際慣習法の規則であるとはみなしていない。

 国内法は、国家の履行実績の要素として、国際慣習法に何らかの貢献をすることができる。従って、カナダは、自国の履行実績により、予防原則が国際慣習法の規則になるかならないかに関し、影響を与えることができる。もし、予防原則がそのような状態になれば、反対法が存在しない限り、それはカナダの国内法の一部に自動的になる。
 これがどの程度、実体法として、あるいは解釈法として、現在のカナダの国内法に影響を与えるかは不明であり、さらに今後の検討が必要である。

 興味深いことには、農薬使用に関する最近のカナダ最高裁の判決では判事の大部分が、自治体の条例の解釈を支持する目的で、予防原則を引用していることである[6]
 大部分は予防原則が国際慣習法の規則かどうかについて明言はしていないが、 ”予防原則が国際慣習法の原則であるという好意的な議論を許容する、十分な国家の履行実績はあるかもしれない” と述べている[7]
 この判決の影響を十分に評価するには時期尚早であるが、多数によるこの問題に関するこの簡単な議論は、予防原則がすでに国際慣習法の一部であると主張する人々にとっては、頼もしく見えるであろう。

 もし、カナダが、他国が予防的取組方法を実施し、その責任を応諾するよう促進したいと望むなら、そしてこの原則の濫用を防ぎたいのなら、各種の国際紛争調停機関や応諾手順を利用することができる。
 多くの多国間環境協定やほとんどの国際貿易協定は、カナダが他国の応諾を促進することを許容する特定の償還請求権を含んでいる。

 カナダでは、2つの連邦政府法規、2つの州法規、及びいくつかの法案が予防原則を引用している。この件に関し、いくつかの注目すべき所見がある。

 第一に、法規中の予防原則 (precautionary principle ) の成文化は、必ずしも予防的取組方法を実施するべき政府に対する積極的な義務を生ずるものではない。これは、この原則が特定の法規の中でどのように成文化されたかによる。もし予防的取組方法が全ての他の考慮に優先するのなら、法規の中で明確にそのように記述される必要がある。

 第二に、法規中の予防的取組方法 (precautionary approach ) の成文化の効果は、立証責任を、重大な環境被害の恐れがあるのでその提案に反対する者から、その提案を提議する者へ移行し、提議者はその提案する行為が実際に申し立てられた被害を及ぼさないことを証明しなくてはならない。

 第三に、予防原則 (precautionary principle ) が法規中で成文化されているところでは、政府の義務に対する影響はその法規の特定の条項と、特に、その法規の下ですでに履行義務が存在しているかどうかによる。履行義務が存在する場合に、もし予防的取組方法が実際に適用されていないなら、予防原則は政策決定者に対し、より高い履行規範を課すかもしれない。
 予防的取組方法を適用することの、適用あるいは不適用に基づく決定を含めて、どのような国内の法的決定にも、もしカナダがその決定を履行しない場合には、カナダに国際的な責任が生じるということを留意すべきである。

 第四に、予防的措置 (precaution) に関する政府全体にわたるどのようなガイドラインも、すでに実施されている各種法制度を考慮に入れて、柔軟に適用されなくてはならない。そのようなガイドラインは、政府の科学べースのリスク決定に予防的取組方法を適用するにあたって、全体の一貫性を支えるものである。しかし、それらは政策決定者に司法当局と一致しない行動をとるよう指示するものではない。

 最後に、予防の概念を表わす ”原則 (principle)”、叉は ”取組方法 (approach)” という用語の使用区別は、国内法では何ら重要性を持たないが、これらの用語の一方、叉は他方を使用する選択は、国際慣習法の規則としての予防の位置付けに、いくらかの影響を与えるであろう[8]

2.5 国際的配慮

 予防的取組方法に関する論争は、様々な国際的な討議の場で行なわれている。同時に、関係者のそれらの論争とその結果に対する興味は、時には異なる意見を持つ関係者、あるいは他方に対立する考え方との溝を広げることになる。
 数多くの国際的な環境と資源管理の協定が、国際的な論点発展の例証となっている。

 健康と安全に関する懸念はまた、現在の国際的な論争を駆り立てている。遺伝子組換え(GM)食品と食品安全性に関する議論により、食品の安全と健康関連法規に予防的取組方法の適用を要求する声が非常に高まった。
 食品の安全性については、過去3年間、毎年、年末に開催されたG8において各国首脳によって議論され、適切な国際組織を通じてこの問題の処理プロセスが確立した。
 Food and Agriculture Organization (FAO) /World Health Organization (WHO), Codex Alimentarius Commission (CODEX), Organization for Economic Co-operation and Development (OECD), World Trade Organization (WTO) / Sanitary and Phytosanitary (SPS)

 貿易、環境、及びその他の国際的討議の場において、予防的取組方法の議論と展開における共通事項は、政府が公共の利害の中で、及び国内、海外双方の客体の商業的及び経済的利害の中で、政府が規制することのできる規範を考慮する必要性である。

 国家または国家の中のグループによる予防的取組方法の適用は重要な商業的側面を持つ。例えば、日本のアメリカからの果物の輸入、及び、EUのアメリカからのホルモン処理牛肉の輸入に関する世界貿易機構(WTO)審議会が、予防的取組方法の濫用が重大な貿易上の結果をもたらすということを各国に知らしめた。
 その他の例として、ベンチマーク手法が投資の誘致及び継続に関する相対的競争力を国に警告する強力なツールとして出てきた。このことも今後カナダが考慮を続けるべき重要事項である。

 このような情況において、カナダは黙っていることはできない。
 国内的には、政策決定に予防的取組方法を適用するための明確で一貫した枠組みが、連邦政府が関係者の幅広い利害を考慮するやり方でその責任を果たすことを助けるであろう。
 国際的には、そのような枠組みが、カナダの担当官が予防的取組方法に関する議論に明確で首尾一貫した態度で積極的に参画できるベースを与えるであろう。
 この主題は、各種の交渉あるいは非交渉の席で議論され論争され続けるであろう。
 カナダは、国際規則がカナダの利益を尊重する方法で具体化されることを確保すべきである。このことにより、カナダはカナダと同じ意見を持つ他の国と一緒に働くことができるよう求められることとなる。

 政策決定者は予防的取組方法の結果について、国際慣習法の規則の状態を見守りながら、注意深く監視しなくてはならない。もしカナダが、予防的取組方法が発展して国際慣習法の規則になるべきであると決めたなら、合理的な正確さをもってカナダがその責任を決定することができるようにするために十分な規準を包含する規則を具体化することが重要である。

 従って、国際的展望から、我々がカナダにおける予防的取組方法に関する堅固な見解を展開すること、我々が国際的に積極的に参画するために、この作業の結果を利用すること、そして、我々が既存の国際協定書の中に含まれる特定の処方を、どの程度まで一般的に、健康、安全、環境、そして資源管理などの分野で適用できるかを、調査し、テストすることが肝要である。

 数多くの既存の協定 (衛生植物検疫措置の適用に関する協定(Sanitary and Phytosanitary)を含む 訳注:日本語訳サイト) がより一般的に適用されうる原則のモデルを提供するかもしれない。
 いくつかの例を下記に示す。
  • 国家が自身の適切な、あるいは許容できる防護レベル(ALP)、及び、許容リスクを設定する権利を認めること
  • 予防的措置(precautionary measures)の引き金となる危害のしきい値を明確に設定すること
  • 日常的な状態と緊急状態とを明確に区別すること
  • 貿易制限を最少とする措置をとる義務を生じさせること
  • 立証責任を確立し、指定すること
  • 予防的措置(precautionary measures)をとる国に、科学的不確実性を減らすための情報をさらに収集し続ける義務を課すこと

3.0 指針原則 適用における一般原則

 前述にある通り、予防的取組方法はリスク管理の中で特徴付けられ、選択肢と政策決定段階の展開に重要な影響を与える。それは最終的には価値と優先順位に基づく判断に委ねられる。
 カナダは予防的取組方法を、健康と安全、及び、環境と資源保護に関する科学ベース計画において、国内的に及び国際的に実施する。
 これはカナダ国民の最大の利益をもたらす政策決定への推進力となる。

 科学ベースのリスク政策決定への予防的取組方法の適用は、しばしば、特定の情況や要素に依存する。しかし、規制実施と政策の見直しにより、全ての情況に適用できるであろう11の広範な”指針原則 (guiding principles)”があることがわかった。
 これらの原則は、適用ににおいて全体的な一貫性を保ち、誤用や濫用を是正するのに役立つ。それらは、リスク管理の中で特徴付けられるプロセスに焦点を合わせており、政策決定者が司法当局と矛盾した方法で行動するよう要求するものではない。

適用における一般原則

 適用における一般原則は、予防的取組方法の状況下で政策決定を行なう上での特徴的なあり方を提案している。予防的取組方法は、重大で取り返しのつかない被害のリスクがある場合、十分な科学的確実性がないことを政策決定を遅らせる理由に用いてはならないとしている。
 この討議資料の中で述べられている指針原則は、特に重大な科学的不確実性がある中で、重大で取り返しのつかないリスクが存在するような情況に対し、適用することができる。それらは叉、リスク管理への予防的取組方法の幅ひろい適用に関する指針ともなる。

3.1 予防的取組方法/原則の正当性

予防的取組方法はリスク管理における正当で特徴的な政策決定ツールである。

3.2 選択するリスク防護レベル

それは社会が選択したリスクに対する防護レベルによって導かれるべき政策決定として正当である。
  • 選択される防護レベルは事前に決められているべきである。リスクには新しいもの、あるいは出現し始めているものもあり、科学的知識の発展が社会の許容度と選択される防護レベルに影響を与えるかもしれないということを認識すべきである。
  • 社会の価値は、選択されるリスクに対する防護レベルを決定する上で重要な要素であり、どのような場合にも、健全な科学的証拠が予防原則を適用する上で基本的に必要不可欠である。
  • 人間の健康、安全、環境、または資源保護に関する重大で取り返しのつかないリスクが存在しない情況では、予防的取組方法は関係ないと考えるべきである。
3.3 健全な科学的情報とその評価

健全な科学的情報とその評価は予防原則の適用、特に下記、がベースとなるべきである。

(@) 行動を起すか起さないかの決定 (すなわち、予防的措置を実施するかしないか)
(A) 一度、決定がなされている措置
  • 根拠が確実で合理的な科学的情報ベースは予防的取組方法の適用を補強する。
  • 予防的取組方法が適用される前に、リスクに関連する科学的データは、被害が発生する可能性及びその被害の程度を表わす結論に導く健全性、信頼性、透明性、および包括性がある仕組みを通じて、評価されなくてはならない。
  • 緊急な場合には、健全な科学的証拠が得られたかどうかを評価するために異なった手法が必要かもしれない。リスクの危急性により、その選択肢を実施することで、リスク及びその肯定的/否定的影響を注目しつつ、措置の有効性を評価するために綿密な監視が必要であるということを理解した上で、入手可能な科学的情報を考慮して、最良の ”多分、成功するであろう選択肢” の選択を求められるであろう。
  • 全ての入手可能な科学的情報の評価が完全に行なわれなければならない。科学的証拠の数が重要なのではなくて、その質が高いことが重要である。報告書は、現状で分かっていることを概観し、評価の信頼性に関する科学的所見を記述し、残された不確実性と、さらなる科学的研究及び監視が必要な領域に焦点をあわせるべきである。
  • 科学者間検証(Peer review)は、予防的取組方法の実際的な適用における強固なテストの典型である。科学者間検証のプロセスにより、科学的証拠の健全性と科学的集団内での信頼性を提示することができる。
  • 科学的勧告は、多様な科学的思考及び意見を取り込むために、様々な情報源及び関連する各分野の専門家から引き出されなければならない。科学的勧告者は科学者間で検証された科学に重みを置き、判断の根拠とすべき健全で合理的な証拠を目指すべきである。
  • 科学的証拠に関する判断に基づき、可能な限り広い範囲で決定がなされなくてはならないが、社会の価値、リスクを受け入れる社会の同意、そして経済的考慮にも重みが置かれるべきである。
3.4 立証責任

(政策決定に)要求される科学的証拠は選択された防護レベルに関連して確立されるべきである。さらに、情報ベースを用意する責任 (立証責任) が指定されるかもしれない。科学的情報ベースとそれを作成する責任は知識の発展とともに移行するかもしれない。

  • さらなる研究と科学的監視を含む科学的活動のフォローアップは、予防的取組方法適用の重要な要素である。そのようなフォローアップは科学的不確実性を減らし、将来の政策決定の改善に資することができる。
  • ”十分に健全な情報ベース” とは、健全で合理的な科学的情報であり、それには、評価を通じて、重大な否定的結果をともなう許容できないリスクを示す不確実性を含む。すなわち、科学的情報は、リスクと重大な被害との間の因果関係を明確に示す必要はないが、そのようなリスクが存在するということは示す。
  • 一般的に、科学的情報ベースを用意する責任 (立証責任) は、潜在的あるいは重大な被害に関連する行為を行なおうとする者にある。
     具体的なシナリオがある場合には、この情報ベースを用意するのに最適な者の評価があるべきである。この評価は、誰が責任あるいは権限を持っているか、また、誰が適時な信頼性ある情報を準備する能力があるかというような規準にに依存する。立証責任者の指定はケースバイケースで決定されるのが最善であり、協力関係の締結などの革新的な戦略を導入するかもしれない。科学的情報ベースとそれを作成する責任は知識の発展とともに移行するかもしれない。
  • 否定的な証明をすること (すなわち、あることは危害の原因ではないと断定的に証明すること、あるいは、絶対的な確信をもって悪いことは決して起きないと証明すること、あるいは、あることは危険性がないということを証明すること) は不可能であるが、危険性を示す証拠は得られない ”合理的なテスト” が行なわれたということを示すことは可能であるということを認識すべきである。

3.5 再評価とさらなる協議

決定のベースを再評価する、及び、更なる協議のための透明なプロセスを提供する、仕組みが存在すべきである。
  • 政策決定により重大な影響を受ける関係者は再評価のプロセスに何らかの情報入力をするべきである。再評価と協議の仕組みが持つ影響 (利益と不利益) の評価が、どのような場合にも (言い換えれば、ある場合には、それらは実際的でも生産的でもないかもしれないが) 実施されるべきである。さらに、現存する再評価と協議の仕組み、あるいは規制された権限を仮定すれば (例えば、漁業資源保護)、追加的な仕組みは適切ではないかもしれないということが認識されるべきである。
  • 再評価は、新たな科学的情報の出現、あるいは、社会のリスク許容度の変化などがきっかけとなるかもしれない。予防原則を用いて行われた決定の効果的な検証には、通常のフィードバックと有効性の測定結果の報告に基ずく決定の有効性監視が必要である。
  • 政策決定の階層構造と、政策決定プロセスに参加する義務と責任は、説明責任が理解され尊重されるようにするために、明確に決められるべきである。このことは、国内的あるいは国際的な再評価や協議の追加要求に対応しやすい。
  • 再評価と協議の要求のタイプと頻度は、予防的取組方法が継続的に管理ツール (言い換えれば、保護の仕組み) として使用されているかどうか、あるいは、政策決定が特定のリスクについてなされた情況に関係するかもしれない。

3.6 予防的措置における透明性、説明責任、及び公衆参加の原則

より高い透明度、より明確な説明責任、及び、より多くの公衆参加が望ましい。

  • 政策決定の根拠は当然示されねばならないが、それらの透明性が説明責任を強化する。
  • 公開性と透明性が予防的措置を支える上で本質的に重要である。実際、継続したリスク・コミュニケーションがプロセスのどの段階でも必要である。文書報告と意志伝達を怠ると健全な政策決定の信頼性を損なうことになる。
  • 公衆参加は、政策決定プロセスだけでなく、科学的再評価及び勧告のプロセスにおいても組み込まれるべきである。同時に、公衆参加の機会は特定の情況と要求される決定の時機に依存するということを認識すべきである。
  • 重大な不確実性 (被害の程度や見込み、あるいは、複雑な科学を駆使しての予想される被害への対処法などに関して) が存在する情況においては、その不確実性やリスクに関する解釈について把握するために、公衆参加が必要である。
  • 公衆参加の機会と透明度は、特定の情況と政策決定の即時性に依存すること、及び、緊急の政策決定はしばしば危急のリスクが存在しない問題に対するものとは異なる手法を要求するということを認識すべきである。しかし、これらの決定も影響がはっきりしてきたら変えていくべきである。

予防的措置のための原則

予防的措置 (Principles for Precautionary Measures)のための原則では、すでに採用された措置を実施するような政策決定を提案する。

3.7 暫定性

予防的措置は、科学、技術、及び社会が選択する防護レベルの発展に基づき、再審議されるべきである。

  • 予防的措置は一般的に暫定性を前提に実施されるべきである。すなわち、それらは新たな科学的情報や他の関連する検討結果等に照らして、必要に応じて見直しが行なわれるべきである。
  • 科学的知識発展の限界に対する当然の考慮とは、政策決定者は科学的不確実性が永年にわたって (いわば永久に) 続き、新たな科学的知識が発展したら、あるいは発展した時に、それらを見直さなければならないということを認識すべきであるということ意味する。多くの例から、随時の検討(any time considerations)は生産的ではない。
  • 国内、あるいは国際的義務は、予防的措置のあるものは暫定的なものであり再評価されなければならないということをはっきりと求めているかもしれない。そのような場合には、現状のに対する監視と報告義務が求められる。
  • 科学が発展すると不確実性が減少し、政策決定を改善するのに役立つので、継続的な科学的活動 (すなわち、さらなる研究や監視) が行なわれるべきである。

3.8 釣り合い

予防的措置は潜在的なリスクの程度と社会が選択する防護レベルに釣り合うべきである。

  • リスクに対する社会の許容レベルと潜在的リスク軽減措置を特定する暗黙の義務がある。この情報は、措置がリスクの程度に釣り合っているかどうか、及び、措置が選択された防護レベル (この防護レベルは変化するということを認めつつ) を達成したかどうかを決定するためのベースとなるべきである。
  • 判断が科学的証拠に可能な限り十分に基づいている場合には、政策決定者はまた、社会の価値、公衆のリスク許容意志、及び経済的、国際的考慮など他の要素も考慮すべきである。これにより、措置の釣り合いの程度をより明確に評価し、最終的には、予防的取組方法の適用おける信頼性を維持するのに役に立つ。
  • 一般的に、リスクの程度に関する釣り合いは、可能な限り幅広い思慮、及び、特定の比較よりむしろ否定的影響の程度に基づいて、設定されるべきである。

3,9 非差別性と一貫性

予防的措置は非差別的であり、同様な状況下でとられた措置と一貫性を保つべきである。

  • 一貫した手法が、リスクの許容レベルを判断するために用いられるべきである。最終的には選択された防護レベルは、社会の価値を勘案した一貫した方法でリスクを想定し、潜在的 (あるいは分かっている) コストと利益に重み付けして、公益に供されるべきである。
  • 同等の情況においては本質的に異なった扱いはなされるべきではなく、内部的な一貫性を保つために、前回と同じ手法がとられるべきである。予防的措置の選択が協定や法律によって予め決められている場合を除いて、実施されるべき措置の選択は柔軟性をもって、ケースバイケースで決定されるべきである。
  • 予防的取組方法は、脅威あるいは科学的不確実性の存在と無関係な、 (しかし、他の要素によって決定される) 政策決定を正当化するために用いられてはならない。さらに、国内での適用はカナダの国際的な義務及び、連邦政府の規制政策と一貫していなくてはならない。

3.10 コスト効果

予防的措置は、下記目標をもって、コスト効果があるべきである。
(@)最小のコストで社会全体の利益をもたらすこと
(A)選択した措置の効率
  • 社会的、経済的、及び他の関連要素を含む予防的政策決定 (行為を実施するかしないか) をすることの現実的及び潜在的影響が評価されるべきである。さらに、リスク間のトレードオフ、あるいは異なるリスクの比較評価が一般的に適切である。 (これは緊急の行動が要求されるような場合には不可能であろう。) このことは社会が政策決定から最終的な利益を享受すること、及び、予防的取組方法が技術の発展に対する不必要な、あるいは意図しない障壁として用いられないことを確実にする。
  • 予防的措置の効率を評価するためには、一般的に、様々な政策をどの選択肢が最も効率的に最少のコストでそのリスクに対応しているかを比較する。このプロセスの結論は、リスクを許容レベルまで削減するが、コストが最小または否定的影響をもたらす採用措置に反映されるべきである。
  • 予防的取組方法は、その定義によれば、進化するプロセスなので、予防的措置は、コスト効果の検討結果が変わるような新たな科学データを導入できるようにするため、現状を監視しなくてはならない。

3.11 最少の貿易障壁

一つの選択肢以外にも上述の特性に合理的に合致するものがあれば、貿易障壁の最も少ない措置が適用されるべきである。

  • リスクに対し同等レベルの対応を持つ異なったタイプの措置の中から一つを選ぶ場合には、 ”貿易障壁の最も小さい” 措置を選ぶ努力をなすべきである。
  • 最少の貿易障壁をもたらす措置を選択する場合には、特別の注意を払うべきである。これは法規制行為はほとんど必ず経済的影響を与え、予防的決定はほとんど必ず選択的影響を与えるからである。
  • 最少貿易障壁の考慮は、国内及び国際的な貿易と通商に対してなされるべきである。これは他国が予防的措置の特性と影響に挑戦するような規則やメカニズムが存在する場合には、国際貿易に関して特に、重要である。


4.0 おわりに

 この討議資料は、予防的取組方法を一貫して適用するために、カナダ連邦政府の枠組みを確立する上で、重要なステップである。
 カナダ国内及び国外での協議は、重要な問題点を定義し、それに注目することに役立て、予防原則適用の政策決定に指針を与えるべき広範な原則を築くことを意図している。


5.0 質疑集

 下記の質疑は、総合的ではないが、意見交換を始める上で役に立つであろう。読者は、これらを国内及び国際的情況を念頭に入れて検討するとよい。
 基本的には国内の規制に関連したことがらが挙げられているが、多くの論点が本質的に国際的な特性を持っており、あるいは、それらが国際的通商に密接に関連してるので、現状の多くの議論は、大きな国際的な広がりをもって行なわれている。

  1. この討議資料は、予防的取組方法と指針原則の記述に関し、明確か? 手引書として正当か? もし、そうでないら、 ”正当な” 原則を表現する上で、どのような変更を加えるべきと考えるか?
  2. 予防的取組方法の適用に関するこの原則は、あなたの特定な懸念、興味、及び活動分野に対し、どのように位置付けることができるか? いかに、あるいは、いつ、この指針はあなたの関心領域に影響を与えるか?
  3. この原則は、予防的取組方法を実施する場合に、誤用や濫用を防ぐことができるか?
  4. この指針は、政策決定プロセスへのあなたの容認あるいは信頼にどのような影響を与えたか−肯定的、中立的、否定的? なぜか (明快性、理解しやすさ、など)?
  5. この討議資料は、カナダ国民の様々な必要性に対し、適切に対処しているか? もし、そうでなければ、正しい対処はどのようにすればできるか?


6.0 ウェブサイト
 この文書に加えて、二つの他の文書が入手可能である。
 第一は、提案された指針原則の簡単な解説書である ”A Canadian Perspective on the Precautionary Approach/Principle - Proposed Guiding Principles”, September 2001
 第二は、予防的取組方法に関する背景説明記事である。
 どちらも、下記に示す省庁、機関で、あるいはそのウェブサイトで入手可能である。もし、フィードバックがほしいなら、これらのウェブサイトがアドバイスするであろ。

Agriculture and Agri-Food Canada
Canadian Food Inspection Agency
Department of Fisheries and Oceans
Department of Foreign Affairs and International Trade
Environment Canada
Health Canada (you are here)
Industry Canada
Natural Resources Canada


7.0 注記
  1. 予防的取組方法 (precautionary approach) と予防原則 (precautionary principle) の使い分けについて、この文書の中では互換性をもって使用されている
  2. 海洋法では、政府に対し、海洋資源の保全、管理、及び活用について、予防的取組方法を適用するよう求めている
  3. カナダ政府の ”統合リスク管理の枠組み(Integrated Risk Management Framework)” は、下記にて入手可能である。
     http://www.tbs-sct.gc.ca/pubs_pol/dcgpubs/riskmanagement/rmf-cgr_e.asp
  4. ”科学技術勧告の枠組み:政府政策決定における効果的な科学技術勧告の原則と指針 (The Framework for Science and Technology Advice: Principles and Guidelines for the Effective Use of Science and Technology Advice in Government Decision Making)は下記PDFファイルが入手可能である。
     http://strategis.ic.gc.ca/pics/te/stadvice_e.pdf
  5. 特に指定がない限り、”パブリック (public)”は、国内、国外の、一般大衆、産業界、消費者団体、及び、環境その他特定分野の団体を意味する
  6. 114957 Canada Ltee (Spraytech, Societe d’arrosage) v. Hudson (Town), 2001 SCC 40.
    別々に、同時に行なわれた判決で、少数派判事たちは、当該審理に国際的情報源を参照することは適切でないとして、予防についての議論は行なわなかった(para. 48)
  7. 上記para. 32
  8. これについては、最近の最高裁での農薬についての判決で、多数派の判事たちは、国際法における ”予防原則 (precautionary principle)” を引用した


化学物質問題市民研究会
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