プレスリリース 2003年10月20日
米市民団体 BE SAFE キャンペーンを立ち上げ


41年前、レイチェル・カーソンは 『沈黙の春』 を出版した
彼女の警告は再び響き渡る アラスカからバーモントへ ジョージアからネバダへ
環境化学物質から子どもの健康を守るために
アメリカの市民社会は力を合わせている

情報源: Environmental Health Alliance
The BE SAFE Campaign launch on October 20, 2003

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2003年12月10日


[ワシントン DC] 数百の全米及各州の市民団体は、 ”後悔するより、今、安全を! better safe than sorry” の予防的アプローチを通じて子どもの健康と自然環境を守るための全国運動、BE SAFE キャンペーンを本日、立ち上げた。

 BE SAFE は、”学習障害協会”、”環境健康正義センター”、”シエラ・クラブ”、”子どもの環境健康連合”、”労働安全衛生協会”、”医師と乳がん患者団体”など、全国の有力な多様な団体によって組織されている。このキャンペーンが十数州のメディアと共に、レイチェル・カーソンを記念すべきこの日に打ち上げられたことは、まさにふさわしいことである。

 BE SAFE 連合は、人々の健康と環境を損なう原因となる化学物質、製品、及び技術に対する安全な代替を要求する政策を実現するために、数百の団体によって、地域、州、全国の各レベルで繰り広げられている運動に精力を傾けている。
 子どもの健康を守ることが BE SAFE 運動の重点項目である。子どもは大人に比べて化学物質への暴露に影響を受けやすい。統計によれば、明らかに子どもの食物と環境中の化学物質が子どもの病気を増やしており、化学物質とがんや脳の発達障害との関連性を示す研究が増大している。
 がんは子どもの病気に関連する死因の第1位であり、学習障害や多動症が全国的に増大している。
 子どもは、有毒化学物質や、家庭や学校で使用される農薬、塩化ビニール(PVC)などの化学物質製のおもちゃやその他の製品、化学工場や原子力発電所からの排出、スーパーファンド地帯のような汚染地域、など、多くの汚染源から暴露を受ける。
 BE SAFE 連合は、政府と産業界に対し、早い時期の警告の兆候に留意し、予防的アプローチによって子どもの有毒な暴露を防ぐよう要求している。

 医療における ”第一に傷つけないこと” というアプローチと同様に、予防的アプローチは、我々の環境における危険に関する問いを、”どのくらいの害なら許容できるか?” から、”どのようにしてその害を防ぐことができるか?”という問いに変えていかなければならない。
 消費者製品から鉛を取り除く、農薬を禁止する、遊び場の資材からヒ素を取り除くなど、害を防ぐ政策は増えている。この国は健康と環境を守る方向に進んできているが、まだまだなすべきことが多くある。
 アメリカは、化学物質の安全性の立証責任を産業界に移し、例外はあるが、立証できない場合には使用することができないことする、化学物質の登録、評価、認可に関す欧州連合の REACH 政策に同調することで、再び、健康と安全に関して世界をリードすることができる。

 本日、この広範に連帯した BE SAFE 連合は、すでに 280の組織と数百人の賛同を得た ”BE SAFE 綱領” を発表した。さらに来年には、 BE SAFE は数十万の賛同を集めて、2005年に新たに選出される大統領に対し新政権発足後100日の間に提示するつもりである。

Contacts:
Lois Gibbs, CHEJ, 703-627-9483 (cell)
Kerri Glover, Sierra Club, 202-675-7903
Kathy Larson, Learning Disability Assoc., 412-341-1515



レイチェル・カーソンについて

 レイチェル・カーソン、作家、科学者、生態学者であり、川のある田舎町、スプリングダール(ペンシルベニア州)で無邪気に育った。彼女の母親は、彼女が最初に作家として後には海洋生物の研究者として述べた、自然と生物の世界に対する終生の愛、を彼女に遺した。
 カーソンはペンシルベニア女子大学(現チャタム大学)を1929年に卒業した後、ウッズホール海洋生物学研究所で学び、1932年にジョン・ホップキンズ大学から動物学の修士学位を得た。

 彼女は、人々のために生物の世界の不思議さと美しさを伝えるために、『あなたの子どもの感動のために Help Your Child to Wonder," (1956)』 や 『常に変化している私たちの海岸 Our Ever-Changing Shore" (1957) 』 などを含む、記事を書いたが、また、生活における生態学に関する本などもを書くつもりであった。
 カーソンの著作の全てに埋め込まれているものは、人間は、自然を、時には取り返しのつかないほどに、変えてしまうことが第一の特徴である自然界の一部に過ぎないというものの見方である。
 第二次世界大戦後、合成化学殺虫剤の濫用により当惑させられ、カーソンは殺虫剤の誤った使い方による長期的な影響について人々に警告するために、目を向けるべき対象を変えざるを得なかった。
 『沈黙の春 Silent Spring (1962) 』で彼女は、農業科学者と政府のやり方に挑戦し、人間として自然界を観るやり方に変えるよう求めた。


BE SAFE 綱領

情報源: Environmental Health Alliance (環境健康連合)
BE SAFE Platform

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2003年12月10日


 我々は、21世紀には、食物、水、そして空気がきれいで、子どもたちは健康でたくましく育つ世界となることを思い描いている。誰もが、保護され安全である社会と職場を必要とし、自然環境を享受したいと願っている。我々はこのような世界を実現することができる。このことを成し遂げる道具は、予防、安全、責任、そして民主主義である。

 我々の目標は、汚染と環境破壊を、それが起こる前に防ぐことである。予防的アプローチは環境と健康に対する予防医学であるから、我々はをこれを支持する。下記のことは道理に適っている。
  • 汚染を防ぎ、納税者ではなく汚染者に支払わせ、彼らが引き起こした危害に対する責任を負わせること
  • 病気や苦痛をなくすために、子どもたちを化学物質や放射性物質への暴露から守ること
  • 安全で、再生可能で、毒性のない技術の促進をはかること
  • 我々全てが、きれいな空気、水泳と魚釣りのできる水、そして国の森林の世話を楽しむことのできる自然環境を提供すること


我々は、慎重さと予防に基づく、 ”後悔より安全を!” のアプローチを選ぶ。
我々は、青写真として示される下記の四つの原則を理に適ったアプローチとして賛同する。

綱領原則

■早期警告に留意する

 政府と産業界は、危害が起きている又は起きそうな時には、たとえ、その危害の正確な特性と危険の度合いの全貌がまだ証明されていなくても、危害を防ぐ義務がある。

■安全第一とする

 政府と産業界は、新たな化学物質又は技術が使用される前に、危険が証明されるまでは安全であると仮定するのではなく、それらに起因するかもしれない潜在的な危険性について十分に調査する責任がある。我々は、今、安全であることの確認が必要である。さもないと、後悔することになる。作業者や公衆に対する影響の研究は独立した第三者によって実施される必要がある。

■民主的に行う

 予防的措置は、健康と環境を守ることに最も重点を置き、よりクリーンな技術の開発と産業の有効な保護及び強化を支援するものである。政府と産業界の政策は、金銭的利益を求める人々に対してではなく、健康が脅かされるかもしれない人々に、又は我々のかけがえのない天然資源に、最大の重きを置きつつ、市民からの有意な情報と相互理解(黄金律:してほしいことをせよ)に基づくべきである。妥協のない科学こそが公共政策を支える。

■最も安全な解決策を選ぶ

 政府、産業界、及び、個人による決定は、代替案の評価と最も安全なものの選択及び技術的に実現可能な解決策を含まなくてはならい。我々は、健康な環境と経済を生み出し、我々の天然資源を守るための技術と解決に関する革新と促進を支持する。



化学物質問題市民研究会
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