欧州環境庁(EEA)2013年1月 レイト・レッスンズ II
9. 農薬 DBCP と男性の不妊 (概要編)
Eula Bingham and Celeste Monforton
情報源:European Environment Agency
EEA Report No 1/2013 Part A Summary
9 The pesticide DBCP and male infertility
Eula Bingham and Celeste Monforton
http://www.eea.europa.eu/publications/late-lessons-2/late-lessons-chapters/late-lessons-ii-chapter-9

紹介:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico
掲載日:2013年2月23日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/precautionary/LL_II/09_Pesticide DBCP_summary.html


 ジブロモクロロプロパン(DBCP)(訳注1)は、パイナップル、バナナ、その他の熱帯果実にダメージを与える線形動物(虫)使用される駆除剤である。それは1955年に米国の農業に導入され、1964年に燻蒸剤として承認された。1961年までに、ラボでの実験がげっ歯類の睾丸を小さくし、精子の数と質を著しく低下させることを示した。それにもかかわらず、この成分は広く市場に出され、商業的に成功した。

 1977年、DBCP製造工場の作業者らが子どもの父親になることができなくなるのではないかと懸念し始めた。米国の政府機関による緊急調査により、多くの場合、作業者らの精子数の減少、あるいは精子がないことが判明した。米国の工場では管理が改善されたが、ラテンアメリカ、フィリピン、いくつかのアフリカ諸国、その他で市場に出され、散布され続けた。

 伝えられるところによれば、1990年代までにこれらの諸国の数万人の農場労働者がDBCPの使用により有害な生殖影響の害を被った。今日に至るまで、補償を求める訴訟(訳注2)、飲料水の汚染、及びこの問題に関するスウェーデンの記録映画の放映に対する産業側の妨害の試みが続いている。

 本章は、DBCPの有害性と、それらを防ぐためにとられた、あるいはとられなかった行動について、入手可能な知識について目を向けている。DBCPのの物語は、合成化学物質を製造した又は使用した作業者に及ぼした生殖障害についての最初の明確な事例であるので、重要である。これは生殖系及び発達系の障害の発生増加についての、及びこれらの障害にある役割を果たしているように見える内分泌かく乱化学物質についての増大する懸念を支える多くの事例のひとつである。

 製造作業者、使用者、消費者、及び環境を生殖系を損なうかもしれない化学物質から保護するためには、政府の行動はもちろん、科学界各分野の、より密接な連携が必要である。 DBCP の教訓は、科学的証拠に対する予防的アプローチに基づいて危害からの時宜を得た保護を確実にするのに役立つかもしれない。


訳注1:1,2-ジブロモ-3-クロロプロパン(DBCP)

訳注2:ニカラグアのバナナ農場労働者


化学物質問題市民研究会
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