内分泌学会 2024年1月11日
プラスチック中の化学物質に関連する米国の医療費は
2018年に 2,500億ドル(約36兆円)に達した

プラスチック中の有害化学物質は、
がん、糖尿病、その他の内分泌疾患の原因となる
情報源: Endocrine Society, January 11, 2024
U.S. health costs related to chemicals in plastics reached $250 billion in 2018
Harmful chemicals in plastics contribute to cancer, diabetes, other endocrine diseases

https://www.endocrine.org/news-and-advocacy/news-room/2024/
us-health-costs-related-to-chemicals-in-plastics-reached-250-billion-in-2018


訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2024年1月18日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/plastic/news/240111_US_health_costs_
related_to_chemicals_in_plastics_reached_250_billion_in_2018.html

 内分泌学会ジャーナル(Journal of the Endocrine Society)に掲載された新しい研究によると、プラスチックに含まれる EDCs内分泌かく乱化学物質類(EDCs)は公衆衛生に深刻な脅威をもたらし、2018年の医療費増加により米国に推定2,500億ドル(約36兆円)の負担が生じたという。

 プラスチックには、製品から浸出して人間や環境を汚染する有害な内分泌かく乱化学物質類が多く含まれている。 これらの化学物質は体のホルモン系を乱し、がん、糖尿病、生殖障害、発育中の胎児や小児の神経障害、そして死を引き起こす可能性がある。

 世界プラスチック条約の一環として議論されている潜在的な選択肢には、公衆衛生と環境を保護するために EDCsへの暴露を減らす介入が含まれており、EDCsの健康コストに関するデータは、この取り組みを前進させるのに役立つ可能性がある。

 ”我々の調査では、プラスチックが米国の病気とそれに関連する社会的コストに大きく寄与しており、2018年だけで約2,500億ドル(約36兆円)に達していることが判明した。 これらのコストは国内総生産の 1.22% に相当する。 プラスチックが原因の病気は、早産から肥満、心臓病、がんに至るまで、生涯を通じて進行する”と、その研究の著者であるニューヨーク大学グロスマン医科大学院およびニューヨーク大学ワグナー公共大学院のレオナルド・トラサンデ医学博士、公共政策修士は述べている。 トラサンデは、プラスチック汚染とその健康への影響に取り組む政府間会議で協会を代表して出席している。

 ”我々の研究は、世界プラスチック条約の一環としてプラスチック材料に使用される化学物質に対処する必要性を痛感させた”とトラザンデは述べた。 ”世界プラスチック条約やその他の政策イニシアチブを通じた措置により、達成された化学物質への暴露の実際の削減に比例して、これらのコストが削減されるであろう。”

 研究者らは、EDCs に関する既存の研究を分析し、どのくらいの数の病気や障害がプラスチック中の化学物質類に起因するかを特定した。 彼らが研究した化学物質類には、プラスチックに一般的に含まれるポリ臭素化ジフェニルエーテル類 (PBDE)、フタル酸エステル類、ビスフェノール類、ポリおよびパーフルオロアルキル物質類 (PFAS) が含まれていた。

 研究者らは、米国におけるこれらの化学物質の疾病負荷と費用の推定に関する以前に公表されたデータを 2018年まで更新した。データを統合し、2018年のプラスチック暴露による疾病負荷は2,500億ドル(約36兆円)と推定した。

 ”この研究は、プラスチック汚染を防ぐことで、病気、障害、早期死亡の発生、そしてそれに伴う人的苦痛と医療費を低減できることを示している”と、共著者でメイン州ポートランドに拠点を置く Defend Our Health のエグゼクティブディレクター、マイケル・ベリボーは述べた。 ”政策立案者や市場の指導者らは、石油化学プラスチック類や EDCs の使用を無害化して削減しなければならない。我々は世界プラスチック条約の交渉担当者に対し、プラスチック生産に上限を設けて削減し、プラスチック添加剤としての EDCs を排除する条約を完成させるよう強く求める。”

 医療費 2,500億ドル(約36兆円)のほとんどは、がんなどの病気に関連するポリ臭化ジフェニルエーテル類(PBDE)への暴露に関連するものであった。 医療費のうち 670億ドル(約9兆7,000億円)は早産、精子数の減少、小児肥満に関連するフタル酸エステル類への暴露によるもので、220億ドル(約3兆2,000億円)は腎不全や妊娠糖尿病に関連する PFASへの暴露によるものであった。

 この研究の他の著者は、Defend Our Health のローパ・クリティヴァサン、ニューヨーク大学グロスマン医科大学のケビン・パーク及びペンシルバニア州フィラデルフィアのフィラデルフィア小児病院のウラジスラフ・オブセコフである。

 この研究は、国立衛生研究所の国立環境衛生科学研究所とパスポート財団から資金提供を受けた。

 研究論文の原稿 “Chemicals Used in Plastic Materials: An Estimate of the Attributable Disease Burden and Costs in the US”(プラスチック材料に使用される化学物質:米国における疾病負荷とコストの推定)はオンラインで公開された。

内分泌学会(Endocrine Society)について

 内分泌学者らは、糖尿病や肥満から不妊症、骨の健康、ホルモン関連のがんに至るまで、現代の最も差し迫った健康問題の解決の中核を担っている。 内分泌学会は、ホルモン研究に専念する科学者らと、ホルモン関連疾患を持つ人々の治療に従事する医師らで構成される世界最古かつ最大の組織である。

 この協会には、122 か国の科学者、医師、教育者、看護師、学生を含む 18,000 人以上の会員がいる。 学会と内分泌学の分野についてさらに詳しく知りたい場合は、当会のサイト www.endocrine.org をご覧ください。 X (旧 Twitter) の @TheEndoSociety および @EndoMedia をフォローしてください。



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