IISD 2023年5月24日
UNEP 報告書 プラスチック汚染を
削減するために必要な市場の変化を特定


情報源:IISD 24 May 2023
UNEP Report Identifies Market Shifts Needed to Reduce Plastic Pollution
https://sdg.iisd.org/news/unep-report-identifies-
market-shifts-needed-to-reduce-plastic-pollution/


訳:安間 武(化学物質問題市民研究会
更新 2022年7月24日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/plastic/news/230524_IISD_UNEP_Report_
Identifies_Market_Shifts_Needed_to_Reduce_Plastic_Pollution.html

【概要】
  • この報告書は、再利用、リサイクル、方向転換と多様化(reorient and diversify)という 3 つの必要な市場の変化を強調し、不必要で問題のあるプラスチックの使用を排除する必要性を強調している。
  • 詰め替えボトル、バルクディスペンサー、デポジット制度などの再利用オプションを促進すれば、2040年までにプラスチック汚染を30%削減できる可能性があると主張している。
  • 循環型プラスチック経済への移行は、低所得国の貧困層や非公式セクターが主な受益者となり、従来通り(business-as-usual)のシナリオよりも70万人多くの雇用を生み出すことになる。
 国連環境計画(UNEP)の新しい報告書では、国や企業が具体的な実践、市場の変化、政府の考え方や企業の行動に情報を提供できる政策を採用すれば、プラスチック汚染は 2040年までに 80%削減できる可能性があると主張している。 この報告書は、必要な変化の重要性、規模、特質について理解を深め、2040年までにプラスチック汚染をなくすための政府のロードマップと企業の行動計画を提示することを目指している。

 「蛇口を閉める:世界はどのようにしてプラスチック汚染を終わらせ、循環経済を生み出すことができるか」と題されたこの報告書は、3つの必要な市場の変化、すなわち再利用、リサイクル、方向転換と多様化を強調し、不必要で問題のあるプラスチックの使用を排除すること、また排除、再利用、リサイクル、代替ができないレガシープラスチックに対処する必要性を強調している。

 報告書によると、2040年までに循環型プラスチック経済への移行は、通常業務(BAU)シナリオよりも70万人多くの雇用をもたらし、低所得国の貧困層や非公式セクターが主な受益者となるという。 さらに、投資、運営管理コスト、リサイクルを考慮すると 1 兆 2,700 億米ドルの節約となり、健康、気候、大気汚染、海洋生態系の劣化、訴訟関連コストなどの回避された外部要因からさらに 3兆 2,500 億米ドルが節約されることになります。 報告書によれば、必要な投資の多くは、新しいプラスチック生産施設への計画投資を循環型インフラに移行することで動員でき、一方、拡大生産者責任(EPR)制度はシステムの循環性を確保するためのコストをカバーできるという。

 報告書は、未使用(バージン)プラスチック生産に対する課税などの政策が、炭素クレジットをモデルとしたプラスチック・クレジット・システムの利用と同様に(訳注:プラスチックオフセットとは、消費者や企業がプラスチック・クレジットを購入するか、プラスチック廃棄物をリサイクルする団体や環境団体に資金を直接提供することにより、プラスチック消費量をオフセット(相殺)できる仕組みである。カーボンオフセットのプラスチック版と捉えると分かりやすい。IDEAS FOR GOOD)、この市場変革を促進する可能性があると主張している。 しかし、特に非公式の廃棄物収集部門では、環境および社会的権利も保護されなければならないと同報告書は指摘している。 さらにガーナは、プラスチック分野の業界リーダーが環境中にすでに存在するプラスチックを除去するためのリソースを割り当てることができるレガシー基金の設立を提案した。

 提案されている市場転換に関しては、詰め替えボトル、バルクディスペンサー、デポジット返還制度などの再利用オプションを促進することで、2040年までにプラスチック汚染を30%削減できる可能性があるが、政府は再利用可能品に関するより強力なビジネスケースの構築を支援する必要がある。 報告書によると、化石燃料への補助金を廃止し、リサイクル可能性を高めるための設計ガイドラインを施行するなど、リサイクルがより安定して収益性を高めれば、2040年までにプラスチック汚染をさらに20%削減できるという。 方向転換と多様化に関して、報告書は、プラスチックの包装紙、小袋、持ち帰り商品などの製品を代替素材で作られた製品に置き換えることで、プラスチック汚染をさらに17%削減できる可能性があると説明しています。

 しかし、上記の措置を講じたとしても、使い捨て製品や寿命の短い製品から出る1億トンのプラスチックは、既存のプラスチック汚染の遺産とともに依然として安全に処理する必要がある。 報告書は、リサイクル不可能なプラスチック廃棄物の処理に関する設計基準と安全基準を設定して実施し、製造業者にマイクロプラスチックを排出する製品に責任を負わせることが、これらの問題の解決に役立つ可能性があると示唆している。

報告書では次のことを推奨している。
  • 禁止される可能性のあるプラスチック製品に関する合意された基準と国際的な知識の最低基準。
  • 国際政策の一環として、リサイクル材料が未加工(バージン)材料と同等の競争条件で競争できるようにし、解決策のための規模拡大によるスケール・メリットのある経済を生み出し、監視システムと資金調達メカニズムを確立するための国際的な財政枠組み。
  • 製品を経済的にリサイクル可能にするためのルールを設計し、リサイクルされた内容を組み込む目標とリサイクル工場への財政的インセンティブを組み合わせる。
 この報告書は、5月29日から6月2日までフランスのパリで開催されるプラスチック汚染に関する第2回政府間交渉委員会(INC-2)に先立って発表された。 [出版物: Turning off the Tap: How the World Can End Plastic Pollution and Create a Circular Economy(蛇口を止める: 世界はどのようにしてプラスチック汚染を終わらせ、循環経済を生み出すことができるか)] [Executive Summary(要旨)] [UNEP Press Release(UNEP プレスリリース)] [UN Press Release(国連プレスリリース)]


訳注:プラスチック・リサイクルについての見解

 トーンは少しづつ異なるが、一般的には次の 3つの見解があると考えられるが(当研究会「プラスチック問題 /プラスチック・リサイクル」)、IISD の解説によれば、UNEP 報告書はある条件の下にラスチック・リサイクルを”推進”している。
  1. リサイクルするプラスチックに含まれる有害物質がリサイクルされたプラスチックに移行するので、プラスチック・リサイクルは禁止すべきという見解(IPEN や当研究会を含む一部の環境 NGOs の見解)。
  2. プラスチックの生産と汚染を減らすために、プラスチック・リサイクルを推進しろという見解。
  3. 産業側は、ラスチック・リサイクルは経済的ベースで実行可能ではないことを知っていながら、プラスチック禁止を回避するために、リサイクル促進を隠れ蓑にしているという見解。

化学物質問題市民研究会
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