The Conversation 2023年2月23日
人々は家庭ごみを少なくすることは難しいと感じている。
ごみの少ない生活に変えるためには何が必要か?

著者:Rob Raven 他
情報源:The Conversation, February 23, 2023
Households find low-waste living a challenge.
Here's what needs to change

Authors: Rob Raven, David O. Reynolds, Jo Lindsay and Ruth Lane
https://theconversation.com/households-find-low-waste-living-
challenging-heres-what-needs-to-change-197022


訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2023年3月1日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/plastic/news/230223_
The_Conversation_Households_find_low-waste_living_a_challenge.html

 オーストラリアの家庭では、毎年約 1,200 万トンの廃棄物が発生している。これら家庭ごみの量は製造業や建設業からの廃棄物の量とほぼ同等になる。

 しかし、そうでなければらない必要はない。 支援があれば、家庭は消費パターンを変え、無駄の少ないライフスタイルを築くことができる。 私たちの新しい調査は、オーストラリア人が廃棄物の少ない生活にどのように取り組んでいるかを探っている。

 私たちは住民に、彼らの従来の廃棄物管理のやり方行についてインタビューした。 次に、彼らに 6 週間の家庭実験を計画して実施するように依頼した。 彼らのアイデアは、家の畑いじりや修理から、プラスチックを使わない料理や量販店での買い物にまで及んだ。 そして、彼ら全員を政策立案者と一緒に集め、彼らの経験を発表してもらった。

 結果は、世帯主らは変化を試すことに熱心であったが、無駄の少ない生活は容易ではないことを示している。

リサイクルに責任を持つ

 何年もの間、オーストラリアは廃棄物をリサイクルのために海外に送ってきた。しかし 中国が 2018 年にこれらの輸入を禁止した結果、オーストラリア政府はより良い廃棄物管理政策を急ぐ必要があった。

 真の循環型経済では、何も無駄にしない。 資源は、処理系を循環する際に評価され、継続的に再利用される。

 しかし、移行段階では、埋立地に送られる廃棄物の量を減らす方法として、リサイクルに焦点が当てられてた。

 軟質プラスチックは特に問題があった。 近年、家庭は主に包装用の軟質プラスチックをスーパーマーケットにもっていくことが奨励されている。 しかし、リサイクル企業の REDcycle 社の軟質プラスチック回収計画は過負荷であった。オーストラリアの 2大スーパーマケットーである Coles と Woolworths は、この計画が何ヶ月にもわたってリサイクルの約束を果たすことができなかったことが明らかになった後、2022年11月9日に収集を一時停止した。

 それは、2019 年にビクトリア州でリサイクル会社の SKM が倒産したことに続くものである。未処理のごみの備蓄が倉庫でいっぱいになり、その他のリサイクル用廃棄物は埋め立て地に直接送られた。

 オーストラリアのいくつかの州では使い捨てプラスチックの使用を禁止しており、最近ではビクトリア州が使用を禁止しているが、その成功は代替品が使いやすいかどうかにかかっている。

 家庭は、2018-19 年にオーストラリアのプラスチック廃棄物 (47%) と食品/有機廃棄物 (42%) を大量に生み出した。 これらの統計を改善するには、ライフスタイルと消費慣行に関する社会規範の変化と、規制と新しい収集インフラストラクチャによって支援される小売慣行の変化が必要である。

 以前の研究では、各家庭は個人のミクロ レベルとコミュニティのマクロ レベルとの間のレベルで機能していることが示されている。 しかし、持続可能性への移行において家庭が果たすことができる役割に対する認識が不足している。

変化を試す

 低廃棄物生活への移行には、家庭での消費と行政の廃棄物管理のやり方を変える必要がある。

 ビクトリア州での新型コロナウイルスによるロックダウンは、多くの人々に消費の仕方を変える機会と動機の両方を提供した。 しかし、生活が「ニューノーマル(訳注:コロナ後の新しい常態)」に戻るにつれて、多くの人々は無駄の少ない生活を維持するのは容易ではないと感じている。

 メルボルンに在住する 19人の参加者を対象に、一連の革新的な家庭実験を実施した。



ワークショップの参加者らは、どうすれば政府の政策はごみの少ない生活をもっと便利にすることができるのかというは問題提起に対応して多くの提案をした。ホワイトボードにはカラフルな付箋が貼られており、無駄の少ない生活をより便利にするためのアイデアが書かれている。写真:著者提供
 ふたりの学生を持つ母親は、6週間ごみを全く出さないことにし、もうひとりの母親はプラスチックを用いない調理に知恵を絞った。 ひとり人暮らしのある女性は家庭菜園を始め、他の人は量り売り店(bulk stores)を試すことに専念した. 別の独身女性は、服と自転車の修理方法を学びたいと考えていた。一方、夫と同居している短時間勤務の販売員は、友人のために 3 週間の無駄を省く行動計画を作成したいと考えた。

私たちが学んだこと

 参加者らは、家庭の生活様式を変えることは非常に難しいと感じたと述べた。

 私たちは、実験には余分の精神力、時間、お金、そして動機が必要であると参加者らから言われた。 また、世帯主らは、望ましいやり方への変更を達成し維持するために、より多くの情報と支援を必要としていた。

 一部の人々にとって、この経験は、スーパーマーケットの簡単な選択肢から選ぶのではなく、余分な距離を歩いて量り売り食料品店に出向くなど、何か違うことを試す動機を提供した。

 [プラスチック容器のいらない]固形シャンプーと固形コンディショナーへの移行には広範な調査が必要であり、ひとつでは難しすぎた。”そのたったひとつの切り替えがとても強烈であり…それは高価でもあった。”

 スーパーマーケットは、周囲にある不要なプラスチックのために欲求不満の主な原因である。”容器はその様に大きな問題である。 全くばかげている。 それはやめるべきである。… ある種の容器包装のない購入できる商品はほとんどない。”

 低廃棄物の生活では、社会的関係が重要であった。 ある女性は、家族から廃棄物ゼロへの取り組みをこれ以上進めるつもりはないと言われたが、別の女性は夫と子どもたちがずっと彼女を支えてくれた。

 家の中で子どもたちと一緒に食品廃棄物を減らすという課題も浮かび上がった。 ”子どもたちが無駄にしている多くの食品を減らすことは困難だがやりがいはある。私は料理の量を減らした… 冷凍庫、食品庫、冷蔵庫の棚卸しをしようとした… 食事の計画に集中するために… 。しかし、それは本当に、本当に大変なことである… もっとうまくやりたい。”

 フェイスブックは有益な情報源であった。”なぜなら、プラスチックごみをごみ箱に捨てるのを防ごうとしている人たちが他にもいることに気づかされるからである。”

 世帯主らは、廃棄物の多い生産者に関する法律、汚染製品の禁止、リサイクル インフラストラクチャの改善、リサイクル製品の市場の創出、革新の促進、より良い情報の提供、製品ラベルの改善など、廃棄物の少ない生活を容易にするために必要な多くの政策とシステムの変更を明確にした。

 世帯主らは、世界のさまざまな地域における廃棄物が少ない代替案を知っておりおり、オーストラリアでのシステムの不備に不満を感じていた。

 ”日常の製品に関連するプラスチックの量を減らすには、政府(政策)と企業(革新)からの支援と体系的な変化が必要です”とある参加者は言った。

低廃棄物の生活は簡単にする必要がある

 最終的に、私たちの研究は、低廃棄物生活を容易にするためには大幅な変更が必要であることを示している。

 家庭内での実験は、新しい政策の設計とテストに役立つ可能性があることがわかった。 この経験は政策立案者を、実際の人々や、子育て、友情、会食、目的の達成、他人の世話など、彼らにとって重要なことに結びつけることができる。

 循環経済への移行を成功させるには、家庭内の日常生活の観点から計画する必要がある。

 謝辞: 時間、洞察、努力を惜しみなく共有してくださった研究のすべての参加者に深く感謝します。



化学物質問題市民研究会
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