IPEN プレスリリース2022年8月23日
20か国がプラスチック汚染に関する
強い世界条約を求める


情報源:IPEN Press Release 23 August 2022
Twenty Nations Call for a Strong Global Agreement
on Plastic Pollution

https://ipen.org/news/twenty-nations-call-
strong-global-agreement-plastic-pollution


訳:安間 武(化学物質問題市民研究会
更新 2022年8月29日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/plastic/IPEN/220823_IPEN_
Twenty_Nations_Call_for_a_Strong_Global_Agreement_on_Plastic_Pollution.html

 歓迎すべき展開として、ノルウェーやルワンダをはじめとする 20 か国が昨日、プラスチック汚染を終わらせ、効果的で意味のある世界的なプラスチック条約の策定を支援するために連合を立ち上げたと発表した。彼らのプレスリリース訳注1)によると、プラスチック汚染を終わらせるための高い野心をもつ連合(The High Ambition Coalition to End Plastic Pollution)は、”2024年までに画期的な条約を策定することを目的とし、交渉に情報を提供するために、声明を発表し、重要な要素と課題に関する会期間作業を行う予定である。”国連環境総会(UNEA)(訳注:国連環境計画(UNEP)の意思決定機関) は、プラスチックのライフサイクル全体に対処する包括的なアプローチに基づくプラスチック条約の策定を義務付けており、他の条項の中でも特に、”プラスチックの持続可能な生産と消費を促進するための合意を求めている。”

 IPEN は、予防原則に基づいて、プラスチックと化学物質の有害な影響を排除し、市民、労働者、脆弱な集団、及び先住民の健康、並びに環境を保護する、プラスチック汚染を終わらせるための強力で意味のある世界的な合意を求めてきた。プラスチックの有害な影響を終わらせるには、プラスチック生産の削減と最小化に重点を置き、プラスチックの生産、使用、輸送、廃棄のあらゆる側面に対処する必要がある。

 ”ノルウェーとルワンダ、及びそれらの連合パートナーは、プラスチックに含まれる化学物質による健康と環境への脅威をプラスチック条約交渉のテーブルに直接持ち込むために重要な取り組みを確立している”と、IPEN の政策及び技術顧問である ビトー・ボンサンテ は述べた。高い野心をもつ連合(High Ambition Coalition)が 2040 年までにプラスチック汚染を終わらせることを目指しているのは頼もしい。プラスチックには、がんを引き起こす可能性のある化学物質や、不妊症や生殖などの健康状態に関連する化学物質など、10,000 を超える様々な化学物質が使用されている。人間の健康と環境をプラスチックの有害な影響から守るためには、プラスチック汚染を減らす努力とプラスチック中の有害化学物質を排除するための断固たる行動を結びつけることが重要である。”

 最近の科学的証拠によると、プラスチックと化学物質の生産による世界的な脅威は、化学汚染の「地球規模の境界」を超えている。つまり、生産と排出が地球の生態系全体の安定性を脅かしている。産業界は、2050 年までにプラスチック生産を 400% 増加させることを目指しているが、化学添加剤市場も同じ時期に同様に拡大するであろう。見積もりによると、増加の 25〜50% は、石油化学製品用の石油の需要によるものである。

 プラスチック生産を増加させるという産業界の計画は、必然的により多くのプラスチックがアフリカに、そしてより多くの有害化学物質が環境中に投棄されることを意味する”とIPEN のプラスチック作業部会の共同議長で、ケニアの環境正義・開発センター(CEJAD)の事務局長であるグリフィンズ・オチエング(Griffins Ochieng) は述べた。”我々は主要なプラスチック生産者ではないのに、有害な化学物質を含む廃プラスチックは我々の同意なしにアフリカの海岸にたどり着き、我々の地域社会を汚染している。世界的な協定は、有害なプラスチック廃棄物の輸出を止め、製品が生み出す環境上の不正義に対して生産者に責任を負わせることを目指す必要がある。

 ”アラスカと北極圏全体が、プラスチック由来の化学物質の「流しの底」になっており、またプラスチック汚染の最終的な投棄場になっているので、我々は健康上の脅威に直面している。北極海の水域には現在、地球上のどの海よりも多くのプラスチックが含まれている”と IPEN の共同議長であり、有害物質に対するアラスカ地域行動(Alaska Community Action on Toxics)のエグゼクティブ ディレクターであるパム・ミラーは述べている。”我々の住民、特に北極先住民は、これらの有害な攻撃から健康と環境を保護するプラスチック条約を緊急に必要としている。”

 IPEN プラスチック条約プラットフォーム訳注2)は、次の目的を含む、高い野心をもつ連合(High Ambition Coalition)によって表明された主要な成果物のいくつかを反映している。
  1. 禁止や制限などにより、問題のあるプラスチックを廃絶する。
  2. プラスチックの世界的な持続可能性の基準と標準を策定する。
  3. プラスチックのライフサイクル全体にわたる持続可能性のための世界的な基準値と目標値を設定しする。
  4. 材料や化学組成を含め、プラスチックの価値連鎖(バリュー チェーン)の透明性を確保する。
  5. 時とともにに関与、目標、及び管理を強化するためのメカニズムを確立する。
  6. プラスチックのライフサイクルの各段階で監視と報告を実施する。
  7. 効果的な技術及び財政支援、科学的及び社会経済的評価を促進する。
 さらなる詳細については、プラスチック条約に向けた IPEN の取り組み(Toward a Plastics Treaty)を参照ください。

 高い野心をもつ連合(the High Ambition Coalition)については彼らのウェブサイトを参照ください。


訳注1:高い野心をもつ連合プレスリリース
日本語訳/安間武

ノルウェーやルワンダ等 20 か国のプレスリリース(2022年8月22日)
各国は2040年までにプラスチック汚染を終わらせることを目指す

Press Release: Countries aim to end plastic pollution by 2040 (The High Ambition Coalition to End Plastic Pollution 22. August 2022)

 本日、ルワンダ及びノルウェーの両政府は、カナダ、ペルー、ドイツ、セネガル、ジョージア、韓国、英国、スイス、ポルトガル、チリ、デンマーク、フィンランド、スウェーデン、コスタリカ、アイスランド、エクアドル、フランス、ドミニカ共和国とともに、プラスチック汚染を終わらせるための高い野心をもつ連合(The High Ambition Coalition to End Plastic Pollution)を立ち上げた。

 高い野心をもつ連合は、2022年 3月に採決された歴史的な国連環境会議決議 5/14 を受けて(訳注3)、プラスチック汚染を終わらせるための国際的な法的拘束力のある文書の交渉を開始するために初めて協議が開始された。

 プラスチック汚染を終わらせるための高い野心をもつ連合は、2024年までに画期的な条約を策定するために、声明を発表し、不可欠な要素と課題について交渉に情報を提供するための中間作業を行う。

 ノルウェーの気候環境大臣で連合の共同議長であるエスペン・バース・エイデ( Espen Barth-Eide)は、次のように述べている。”我々は、2040 年までに共通の世界的規則を確立し、プラスチック汚染の蛇口を閉め、プラスチック汚染を終わらせる、真に効果的な世界条約に向けて取り組むために、野心的な国々の連合を率先して結成した。

 プラスチック汚染は世界中で前例のないレベルに達しており、今後数十年で大幅に増加すると予測されている。 OECD の世界プラスチック展望 2060年に向けた政策シナリオ(訳注:Global Plastic Outlook Policy Scenarios to 2060)によると、緊急に世界的な行動を起こさなければ、河川や湖沼のプラスチックの量は 2019 年の 1 億 900 万トンから 2060 年には 3億4,800 万トンに増加し、海に流出するプラスチックは 2019年の 3,000万トンから 2060年には 1億 4,500 万トンに増加する[1]

 プラスチックの消費量は、今後数十年で急増し、2019年の 4億 6,000 万トンから 2060 年には 1 2億 3,100 万トンに達すると予測されている。消費を促進する最も重要な分野は、包装、車両、建設であり、これらが全用途の 2/3 を占めることになる[2]

 ルワンダ共和国の環境大臣であり、連合の共同議長であるジャンヌ・ダルク・ムジャワマリヤ博士は次のように述べている。”ルワンダは 2004年にプラスチック汚染を終わらせるための旅を始めた。残念ながら、プラスチック廃棄物は国の下流にまだ見られる。これは、プラスチック汚染を終わらせるという共通の目標に向けた世界的な取り組みの必要性を証明している。これは、将来の世代に課す受け入れがたい負担だからである。プラスチック汚染は、人間の健康、生物多様性、気候システムに影響を与える地球規模の危機を構成している。”

 プラスチック汚染を終わらせるための高い野心をもつ連合のメンバーは、国連総会中に数週間、ニューヨークで会合し、連合の作業における次のステップについて話し合う。

 政府間交渉委員会の最初の会合は、ウルグアイのプンタ・デル・エステで 11月 28日に開始される予定である。

原注:
[1] OECD (2022): Global Plastic Outlook Policy Scenarios to 2060
[2] OECD (2022): Global Plastic Outlook Policy Scenarios to 20600

原注:[1]及び[2]を含むプレスリリース全文(ここをクリック


訳注2:IPEN プラスチック条約 プラットフォーム
訳注3:第5回国連環境総会再開セッション(UNEA5.2)
訳注:関連情報

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