2009年5月6日
欧州放射線リスク委員会(ECRR)
レスボス宣言

情報源:ECRR - ICER
European Committee on Radiation Risk
Comite Europeenne sur le Risque de l'Irradiation
The Lesvos Declaration
6th May 2009
http://www.euradcom.org/2009/lesvosdeclaration.htm

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2011年4月5日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nuclear/articles/ECRR_Lesvos_Declaration_2009.html


 このページは、ギリシャのレスボス島モリボスで開催された欧州放射線リスク委員会(ECRR)の国際会議で同意された宣言文書の写しである。署名者名を付したこの文書自身は、このページ下部からリンクされた別のページにある。安全上の理由から署名された本文のコピーはここでは用いられなかった。署名は順不同である。


欧州放射線リスク委員会(ECRR) 2009年5月6日 レスボス宣言


A. 国際放射線防護委員会(ICRP)は、電離放射線曝露のあるリスク係数を発表しており、

B. このICRP放射線リスク係数は、連邦政府及び州政府の機関により、労働者と一般公衆への曝露、廃棄物処分、核兵器、汚染された土壌及び物質の管理、天然由来及び技術的に強化された放射性物質(NORM and TENORM)、原子力発電所及び核燃料サイクルの全段階、補償及び社会復帰計画、等のための放射線防護法及び基準を広めるために全世界で使用されており、

C. チェルノブイリ事故は、核分裂生成物への曝露によりもたらされる深刻な健康障害を発見する最も重要な、そして絶対的に必要な機会を提供しているが、特に胎児や幼児期の放射線への曝露に適用される時に、現在の ICRP リスクモデルでは不適切であることを示しており、

D. ICRP リスクモデルは、事故後の曝露にも、体内に取り込まれた放射性物質がもたらす内部被爆にも、効果的に適用することができないことに異議はなく

E. ICRP リスクモデルは、DNA構造の発見及び、ある放射性核種はDNAに対する化学的親和性を持つという発見の前に開発されたので、 ICRP によって用いられた吸収線量の概念はこれらの放射性核種への曝露影響を明らかにすることができず、

F. ICRP リスクモデルは、放射線リスク及びその結果として起きる広範な障害に関して、特にゲノム不安定性やバイスタンダー効果のような非標的効果又は二次的効果の新たな発見についての考慮をしておらず、

G. 死因がはっきりしない場合、放射線曝露の非発がん性影響(non-cancer effects)が、曝露の結果としてのがんのレベルを正確に決定することを難しくするかも知れず、

H. ICRP は、その報告書を単に勧告であるみなしており、

I. 人類と生物圏を保護するために、放射能に関する現在の状況に対応する適切な規制を行なうことについて、即座で緊急で継続する要求があり、

 我々下記の署名者は、それぞれの能力の範囲で、

  1. ICRP リスク係数は時代遅れであり、これらの係数を使用すると、放射線リスクは著しく過少評価されたものになるということを主張する。

  2. 我々は誤差がもっと大きくなることを示唆するある種の曝露に関連する研究を知っており、放射線の健康影響を予測するために、ICRP リスクモデルを採用すると誤差が最低でも10倍になると主張する。

  3. 放射線曝露により、特に心臓血管、免疫、中枢神経、及び生殖系への損傷など、非発がん性障害の発症は著しいものがあるが、まだ定量化されていないということを主張する。

  4. 責任ある当局、及び、放射線曝露を引き起こしたことに責任ある全ての人々は、放射線防護基準及びリスク管理を決定するときに、最早、既存の ICRP モデルに頼らないよう強く促す。

  5. 責任ある当局、及び、放射線曝露を引き起こしたことに責任ある全ての人々は、一般的に予防的アプローチを採用し、機能し十分に予防的なリスクモデルが他にない場合には、不当に遅らせることなく、現状の観察に基づくリスクをより正確に反映した暫定的 ECRR 2003 リスクモデルを適用するよう強く促す。

  6. 特に日本の原爆被害生存者、チェルノブイル及びその他の影響を受けた地域及び曝露集団における体内に取り込まれた放射性核種の独立した監視から得られたデータの再検証を含んで、特に曝露集団の多くの歴史的な疫学的研究を見直すことにより、体内に取り込まれた放射性核種の健康影響を直ちに研究することを要求する。

  7. 個人が曝露した放射線のレベルを知るということ、及びその曝露による潜在的な結果について知らされるということは、人権の問題であるということを考慮すべきである。

  8. 医学的調査及びその他の一般的応用での放射線使用の拡大を懸念している。

  9. 患者に放射線曝露をもたらさない医療技術の研究に多くの公的資金をつけるよう強く促す。

 ここに述べられた声明は下記署名者の意見を反映したものであり、どのような関連する機関の立場を反映することを意味するものではない。

Professor Yuri Bandazhevski (Belarus)
Professor Carmel Mothershill (Canada)
Dr Christos Matsoukas (Greece)
Professor Chris Busby (UK)
Professor Rosa Goncharova (Belarus)
Professor Alexey Yablokov (Russia)
Professor Mikhail Malko (Belarus)
Professor Shoji Sawada (Japan)
Professor Daniil Gluzman (Ukraine)
Professor Angelina Nyagu (Ukraine)
Dr Hagen Scherb (Germany)
Professor Alexey Nesterenko (Belarus)
Professor Inge Schmitz-Feuerhake (Germany)
Dr Sebastian Pflugbeil (Germany)
Professor Michel Fernex (France)
Dr Alfred Koerblein (Germany)
Dr Marvin Resnikoff (United States)

Molyvos, Lesvos, Greece において

The Lesvos Declaration as a PDF (リンク切れ)
Press statement
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