guardian.co.uk 2011年8月3日
セラフィールド MOX 核燃料工場 閉鎖
情報源:guardian.co.uk, August 3, 2011
Sellafield Mox nuclear fuel plant to close
By Fiona Harvey, environment correspondent
http://www.guardian.co.uk/environment/2011/aug/03/sellafield-mox-plant-close

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2011年8月5日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nuclear/articles/110803_Guardian_Sellafield_Mox.html


 セラフィールドのMOX核燃料工場(訳注1)は水曜日(8月3日)閉鎖が告げられ、約600の雇用が失われる。

 この閉鎖は3月の日本の福島原発事故の結果であり、日本では原子力施設の多くが停止しており、世界中で原子力発電についての再検討が始まった。しかし英国政府は、この動きは英国の原発計画に影響を与えるものではないと述べた。

 同工場の労働者らは、水曜日の朝、セラフィールドの他の施設での再雇用について、かなりの機会があると告げられた。
 同工場が完全に閉鎖されるには今後数ヶ月を要するであろう。

 西カンブリアンにあるこの混合酸化物燃料工場は、1990年代の初めに開設以来、納税者に14億ポンド(約1,800億円)の負担をかけていた。
 政府所有の原子力廃止措置機関(NDA)(訳注2)によって操業されていた同工場は、原子力発電所で使用する混合酸化物燃料(MOX)を製造するために設立されたが、その主要な顧客は、福島の原発複合体を含む日本の原子力産業である。
 同工場は1996年イ建設され2001年に運転が開始された。

 NDA は、ソープ(Thorp)再処理工場の事故(訳注3)のどのような影響であることも否定したが、ソープもまた、プルトニウムとウランがなるMOX燃料の製造に関わっている。
 NDA の最高経営責任者(CEO)であるトニー・ファウンテインは、水曜日の朝、労働者に次のように告げた。”この閉鎖の理由は、津波の後に起きた日本の悲劇的な事故及びそそれによる原発市場に対する影響に直接関係している。その結果、この施設のための顧客を我々は最早持っていない”。

 彼は、同工場が”長年の期待はずれの能力”に悩まされ、それを納税者が支払ってきたことを認めた。彼は、近年、同工場を救う試みのカギは、日本の電力会社が核燃料を再使用するという約束であり、”中核拠点”としてのイギリスを支援することであった。しかし、日本の原子力産業の危機により、この道筋は最早、成功が見込めない。

 ファウンテインは次のように述べている。”最初の燃料を引き取る予定であった中部電力の浜岡原発は、広範な補強工事のために現在停止中である。中部電力に続き、東京電力(TEPCO)は、(セラフィールド)工場の生産高の50%を引き取ることになっていたが、福島原発の所有者として彼等は、現在明らかに、最も過酷な課題に直面している”。

 同原発の将来についての憶測がこの数ヶ月間広まっているが、日本の原子力産業は福島後、元に戻るようには見えないことが明白になった。
 NDAは次のように述べている。”イギリスの納税者がセラフィールドのMOX工場の将来の財政的負担を帯びることがないことを確実にするために、唯一の合理的な取るべき行動は、できる限り早い機会に同工場を閉鎖することであるという結論に達した”。

 NDA は、日本のプルトニウムを安全に保管することを継続し、”日本の電力会社の(使用済み核燃料の)再利用という政策を支援するための責任あるアプローチに関し、日本の顧客とさらに討議を行なっていく”と述べた。

 英政府は、セラフィールドのMOX工場の閉鎖は英国内で計画されているいくつかの新たな原発の建設に”何も影響を与えない”と主張した。そのような再処理に関わるコストは莫大であり、経済的ではないので、そのような新設原発がMOX燃料を使用することはない。

 しかし、最近開催された協議で政府は、MOX燃料を使用するひとつの新らたな原発が建設される可能性があるという提案を明らかにしたが、産業側専門家は、そのような原発を建設したいと望む会社があるという可能性はほとんどないと述べている。

 もうひとつの疑問は、この閉鎖が同様にソープ再処理工場をNDAが閉鎖することを早めるのかどうかということである。NDAは、ソープを閉鎖することを考えていることはないと否定し、二つのケースは”無関係”でソープはビジネスあり、他の核廃棄物からプルトニウムを製造するソープは強固であると述べた。

 しかし、ソープ工場は、セラフィールドのMOX工場と同じ前提、すなわち、原発で使用される再処理燃の市場があるという前提で建設された。しかし、その市場は極めて小さく、日本が唯一の顧客であることが証明され、日本の原子力産業の停滞により市場がなくなった。

 新たな原発全てを集結するという政府の希望はフランスのEDF(訳注43)やドイツのRWE(訳注5)が原発をこの国に建設したいと望むことであるが、それらの原発はMOXやプルトニムを使用しないであろう。

 MOXを燃料として使用するもうひとつの原発がイギリスに建設される可能性があるとの政府の示唆は、原子力産業専門家により極めて懐疑的に迎えられた。彼等は、MOX工場のどのような復帰も、イギリスの納税者に数十億ポンドのコストを強いるが、その製品の市場は小さいかゼロであり、新たな無用の長物であると述べた。

 しかし産業専門家は、政府がMOXは依然として成功が見込めると主張し続けることに関心があると言及した。もし閣僚がMOXには成功の見込みがないことを認めたら、政府は保管されている数億ポンド(数百億円)相当のプルトニウムは、政府の貸借対照表上で負債として認めざるを得なくなる。

 その選挙区コープランドがセラフィールドを含む労働党議員ジャミー・リードは、同地に新たなMOX工場を建設する潜在的な計画の詳細を明らかにするよう政府に要求した。
 彼は次のように述べた。”今こそ、新たなMOX工場の建設をできるだけ速やかに前進させることが重要な時である。MOX原料の市場は存在するし、成長している。我々のプルトニウム配置戦略はそのような施設に依存するし、産業側もそれを求めている”。
 彼は、”嬉々とした強欲ども”は工場閉鎖の決定に飛びつき、新たなMOX工場という重要な国家の必要性に反対を唱えている”と述べた。

 グリーンピースや地球の友などの環境団体は、この動きは原子力発電には経済的な合理性がないことを示したと述べた。地球の友の政策及びキャンペーンのディレクター、クレイグ・ベネットは次のように述べた。”納税者は、不思議な国のアリスである原子力産業の経済のための勘定を支えている。このお金は、イギリスの莫大な再生可能なエネルギーの開発、新たなグリーンな雇用とビジネスの機会の創出に費やされるべきであった。この発表は、同工場で働く数百人の人々にとってとてつもない打撃であろう。我々は彼等の専門性が、原子力産業が残した放射性廃棄物の既存の遺産から我々全てを守るのに役立つよう転進することができることを希望する”。


訳注1:セラフィールド
訳注2:原子力廃止措置機関(NDA)
訳注3:ソープ
訳注4:フランスEDF
訳注5:ドイツRWE 訳注:MOX燃料
訳注:新聞報道


化学物質問題市民研究会
トップページに戻る