WWICS 2006年9月21日
リスク研究計画の欠如、不適切な資金とリーダーシップが
ナノ技術の発展を妨げる


情報源:Woodrow Wilson International Center for Scholars
Project on Emerging Nanotechnologies
Nanotechnology Now Used in Nearly 500 Everyday Products Makers Claim Nanotech Can Help You Clim Mt.Everest Stop tn Common Cold. May 15, 2007
http://www.wilsoncenter.org/index.cfm?topic_id=166192&fuseaction=topics.item&news_id=201894

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年9月23日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano//wwics/060921_lack_of_risk_research_plan.html


【ワシントン】新たな医療、持続可能なエネルギー、そして21世紀の雇用を提供するのに役立つ可能性を持つナノ技術開発の成功が、可能性ある環境、健康及び安全に関するリスクの検証に対する連邦政府の明確な戦略の欠如とこのリスク検証のための資金調達の欠如によって危うくされている。

 これはウッドロー・ウィルソン国際学術センターの新規出現ナノ技術プロジェクトの主席科学顧問アンドリュー・メイナード博士(訳注1)が、”ナノ技術の環境と安全に及ぼす影響に関する研究”と題する米下院科学委員会聴聞会で陳述した一部である。連邦政府機関は何をしているか? メイナード博士によれば、”ナノ技術は最早、科学的な好奇心ではない。それは職場に、環境中に、そして家庭に存在する。”しかし、人々がナノ技術の便益についてはっきり理解するためには、連邦政府は潜在的なリスクを特定し削減するための全体計画を示す必要がある。この計画はトップダウンのリスク研究戦略、それを行うための十分な資金、及び資源が効果的に用いられることを確実にするためのメカニズムを含むべきである。

 陳述の中で、メイナードは、”連邦政府は、安全なナノ技術のための強い科学的基礎を築くためにを2年間で最低1億ドル(約110億円)を投資する必要がある”−と提案している。メイナードの分析によれば、ナノ技術研究に年間10億ドル(約1,100億円)以上が投資されているにもかかわらず、アメリカ政府はナノ技術リスク研究のために年間にわずか1,100万ドル(約12億円)しか費やしていない。

 メイナードの陳述は主に、彼の新しい報告書 『ナノ技術:リスクに目を向けた研究戦略 (Nanotechnology: A Research Strategy for Addressing Risk)』 に基づいている。彼の報告書は、イギリス環境食糧地域省(DEFRA)を含む科学専門家や政策策定者らによって広く賞賛されている。声明の中で DEFRA はメイナードの報告書を、”ナノ技術リスク領域における研究の必要性に関する国際的な議論に対する非常に役立つ貢献”であると述べている。

 DEFRA は9月22日(金)に人工ナノ物質のための自主的な報告の仕組み(Voluntary Reporting Scheme)を立ち上げる。政府の科学的研究に沿って、このプログラムの目的は異なる人工ナノスケール物質の性質と特質をよりよく理解し、適切な管理のあり方についてもっと詳しい議論ができるようにするためにデータを収集することである。アメリカ環境保護庁も同じようなプログラムを検討中である。

ナノ技術について

 ナノ技術は、通常1〜100ナノメートルの物質を測定し、調べ、操作し、製造する能力のことである。1ナノメートルは10億分の1メートルであり、人の髪の毛は概略 100,000 ナノメートルの太さである。ナノ物質を含む製品は昨年には世界中で320億ドル(約3兆5,000億円)販売された。しかしラックス・リサーチは、2014年には2兆6,000億ドル(約290兆円)の製品がナノ技術を導入するであろうと予測している。

 急速な商業化にもかかわらず、アメリカの国民の大部分はナノ技術についてわずかしか知らないか又は全く知らない。新規出現ナノ技術プロジェクトによって今週発表された新しい世論調査は、世間のナノ技術についての意識は高まって入るが、69%のアメリカ人はこの技術についてほとんど聞いたことがないか全く聞いたことがないことを示している。世論調査の結果は下記にてアクセスできる。
9/19/2006 - Public Awareness of Nano Grows - Majority Remain Unaware


訳注1(参考資料)
CHE パートナーシップ・コール 2006年2月28日/小さなことがらか、それとも大きなリスクか:ナノ技術と環境公衆健康(当研究会訳)



化学物質問題市民研究会
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