米国農務省 全米有機プログラム 2015年3月24日
政策メモランダム:ナノテクノロジー 情報源:United States Department of Agriculture (USDA), National Organic Program (NOP), March, 24 2015 Policy Memorandum: Nanotechnology http://www.ams.usda.gov/AMSv1.0/getfile?dDocName=STELPRDC5110949 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2015年4月9日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/usa/USDA_NOP_150324_Nanotechnology.html このメモは有機製品(organic production)中のナノテクノロジーの状況、及び米国農務省(USDA)全米有機プログラム(NOP)規則 7 C.F.R. Part 205(訳注1)の下における取扱いを明確にするものである。 論点: 全米有機プログラム(NOP)は、有機製品中でのナノテクノロジーの使用及び取扱いについての質問を受けていた。 ナノテクノロジーは、約1〜100ナノメートルのナノスケールで実施される科学、工学、及び技術である。ナノ物質は一般的に、少なくとも1次元が1〜100ナノメートルのサイズ範囲(ナノスケール)に関連する。しかし、それらは、そのサイズを超えるかもしれず、バルクサイズの物質又は非ナノ物質とは異なる物理的又は化学的特性又は挙動によって定義されるかもしれない。ナノ物質は、例えば火山灰、海水飛沫(ocean spray)のように自然界で発生することがあり、また均質化又は摩砕のような人間活動の付随的な副産物かもしれない。それらはまた、ある化学的又は物理的プロセスにより特定の特性を持つよう意図的に製造することができる。ナノ物質は、医学、電子工学、エネルギー、農産物、及び食品加工のような異なる分野に広がる多くの商業的応用で使用される。我々は、”工業ナノ物質(engineered nanomaterials)”という用語を、粒子サイズに起因する独自の特性又は挙動を持たせるために特別に設計され製造される物質を指すために使用する。我々は、”付随的ナノ物質(incidental nanomaterials)”という用語を他の製造(例えば、均質化又は摩砕)の付随的な副産物、又は自然界に生じる物質を指すために使用する。 政策: 2010年、全米有機認証基準委員会(National Organic Standards Board: NOSB)は、工業ナノ物質は合成物であり、有機生産及び加工において禁止されるべきと勧告した。 NOSB は工業ナノ物質を、”ナノスケールでのみ得られる非常に特定の性状又は成分(例えば、形状、表面特性、化学的組成)のために、1-300 ナノメートルのナノスケール範囲に入るよう人間の活動により慎重に設計され、工業化され、製造された物質”として提案した。NOSB が提案した定義は、キャッピング剤又はその他の合成成分を含むすべてのナノ物質を範囲とするが、従来の食品プロセスの過程で生成される付随的な粒子、又は自然に生じるナノ物質は範囲としない。 全米有機プログラム(NOP)は、ナノテクノロジーが本質的に良性である、又は有害であるとはみなさない。このメモランダムは、有機生産及び取扱いでの使用を意図された物質のレビューのための法的な枠組みもまた、工業ナノ物質に適用するであろうことを明確にしている。 1990年有機食品生産法(OFPA)は、農務長官に全米許可及び禁止物質リスト(National List of Allowed and Prohibited Substances)を確立する権限を与えている。この全米リストは、有機生産での使用が禁止されている全ての物質とともに、どの合成物質が有機生産で使用してもよいのかを特定している。米農務省(USDA)の有機規則 (訳注:全米有機プログラム規則) の§205.605 は、”有機(organic)” 又は ”有機で作られている(made with organic) (特定の成分又は食品グループ)” と表示できる加工製品に使用されるかもしれない合成及び非合成物質のリストを含んでいる。 7 U.S.C. 6517 - National Listの下に、農務長官により有機規則(7 C.F.R. 205.605)において確立される全米リストは、提案された全米リスト、又は全米有機認証基準委員会(NOSB)により開発された全米リストに対する修正案に元図かなくてはならない。法令はさらに、全米リストに対するどの様な修正案も、修正がなされるまでに公衆に通知され、コメントを受けなくてはならないことを求めている。 他の物質と同様に、工業ナノ物質は次の条件を満たさなければ有機生産及び取扱いでの使用は許可されないであろう。 1) その物質は、使用のための申請がなされている。 2) その物質は、全米有機認証基準委員会(NOSB)によりレビューされ、勧告されている。 3) その物質は、通知とコメントの所定の手続きがなされている。 有機食品生産法(OFPA)は、有機生産と取り扱いでの使用が求められている物質を評価するために全米有機認証基準委員会(NOSB)が使用しなくてはならない基準を提供する。工業ナノ物質を全米リストに加えるための申請をする個人又は組織は、有機食品生産法(OFPA)基準のための情報を提供しなくてはならない(脚注2)。 他の連邦政府機関により規制される物質中のナノ物質の存在についての矛盾を避けるために全米有機プログラム(NOP)は、全米有機認証基準委員会(NOSB)により勧告された定義のような工業ナノ物質のための独自の定義を確立していない。米・食品医薬品局(USFDA)の FDAが規制する製品がナノテクノロジーの応用に関与するかどうかを検討している産業のためのガイダンス(脚注3)、及び米・環境保護庁のナノテクノロジーを使用する農薬規制に関する政策(脚注4)及び有害物質規制法の下におけるナノ物質の管理(脚注5)が適用可能なら使用されるべきである。 脚注
訳注1::米国有機生産のための参考資料 |