SAFENANO 2012年8月24日
カーボンナノチューブの
淡水無脊椎動物への毒性


情報源:SAFENANO 24/08/2012
Toxicity of carbon nanotubes to freshwater aquatic invertebrates
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http://www.safenano.org/KnowledgeBase/CurrentAwareness/ArticleView/tabid/168/ArticleId/248/
Toxicity-of-carbon-nanotubes-to-freshwater-aquatic-invertebrates.aspx


オリジナル論文:Environmental Toxicology and Chemistry
アブストラクト

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2012年9月4日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/safenano/120824_toxicity_CNTs_aquatic.html


 カーボンナノチューブ(CNTs)は非常に強度のある材料であり、高性能テニスラケットなどに使用されている複合材料(訳注)を強化するために使用されている。CNTsは、医療から電子機器、建材まで、あらゆるものに潜在的な用途がある。しかしCNTsにリスクがないわけではない。

 ミズーリ大学とアメリカ地質調査所による共同研究は、CNTsが水生動物に毒性があり得ることを発見した。研究者等は、CNTsが大量生産される場合には、それらの環境中への放出を防止するよう注意を払うよう促した。

 ”カーボンナノチューブの大きな期待は、警戒と準備とのバランスが取れなくてはならない”と、ミズーリ大学の化学工学部門の教授であり議長であるバオリン・デンは述べた。”我々は、それらの環境及びヒト健康に及ぼす影響についてよく分かっていない。EPAや他の規制機関はCNTsの安全性に関する情報を提供するために、我々のような研究をもっと多くする必要がある”。

 CNTs は径が顕微鏡的に小さい炭素原子の円筒であり、その長さは径の数億倍もあるが、それらは純粋の炭素ではない。製造過程で使用jされるニッケル、クロム、その他の金属は不純物として残留する可能性がある。デンらは、これらの金属と CNTs 自身がある種の水生生物の成長率を低減したり殺すことすらあることを発見した。実験では4種類の生物が使用された。ムラサキガイ(Villosa iris)、ユスリカの幼虫(Chironomus dilutus)、オオヨギミミズ(Lumbriculus variegatus)、ヨコエビ(Hyalella azteca)である。

 ”CNTs による環境汚染の最大の可能性は、複合材料の製造過程に起因する”とミズーリ大学の機械航空工学部門の准教授ハオ・リは述べた。”適切な廃棄物管理と取扱い手順がリスクを最小にすることができる。また、長期的なリスクを管理するために、我々はこれらの複合材料が壊れたときに何が起きるのかを理解する必要がある”。

 この研究チームの成果はジャーナル『Environmental Toxicology and Chemistry』に発表された(Abstract)。
Reference: Mwangi et al. 2012, “Toxicity of carbon nanotubes to freshwater aquatic invertebrates,” Environmental Toxicology & Chemistry, vol. 31, no. 8, pp. 1823-1830.
Source: University of Missouri-Columbia


訳注ウイキペディア
複合材料(ふくごうざいりょう、英: Composite material)は、2つ以上の異なる材料を一体的に組み合わせた材料のこと。強化のための強化材料とそれを支持するための母材(マトリクス)から構成されたものを指す


オリジナル論文アブストラクト
Environmental Toxicology and Chemistry
Toxicity of carbon nanotubes to freshwater aquatic invertebrates
Joseph N. Mwangi1, Ning Wang2, Christopher G. Ingersoll2, Doug K. Hardesty2, Eric L. Brunson2, Hao Li3, Baolin Deng1,*Article first published online: 22 JUN 2012
DOI: 10.1002/etc.1888
1Department of Civil and Environmental Engineering, University of Missouri, Columbia, Missouri, USA
2U.S. Geological Survey, Columbia Environmental Research Center, Columbia, Missouri
3Department of Mechanical and Aerospace Engineering, University of Missouri, Columbia, Missouri, USA


 カーボンナノチューブ(CNTs)は本質的には疎水性であり、したがって水環境中に放出されると水中の堆積物中に蓄積する傾向がある。カーボン系ナノ物質の堆積物中に生息する無脊椎動物への毒性を検証するという我々の全体的な取り組みの一部として、CNTsによる全面的な堆積物毒性テストを実施する前に、様々なタイプのCNTsを14日間、水だけで、ムラサキガイ(Villosa iris)、ユスリカの幼虫(Chironomus dilutus)、オオヨギミミズ(Lumbriculus variegatus)、ヨコエビ(Hyalella azteca)に曝露させて結果を評価した。CNTs を水に加えて実施したこれらの毒性テストの結果は、 1.00 g/L(乾燥重量)の商用 CNTs が無脊椎動物の生存率又は成長を著しく低減することを示した。毒性は、CNTsのタイプや供給源、CNTsが酸洗浄されていたかどうか、及びテスト生物の種により影響を受けた。光学及び電子顕微鏡を用いてテスト生物を観察した。CNTs が細胞膜を通して浸透することを示す証拠は観察されなかったが、テスト生物の外表面はもちろんのこと、腸の中にも CNTs が存在することが示された。本研究では、ニッケルのような CNTs から溶解した金属及び、金属フリーのCNTsの両方が毒性に寄与することを示した。
Environ. Toxicol. Chem. 2012; 31: 1823 - 1830. (c) 2012 SETAC



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